マーク・リプトーのピリオダイゼーション

筋力トレーニングを始めて間もない間は、筋力をスムーズに伸ばすことができます。

48〜72時間くらいの間隔でトレーニングをするのを勧められることが多く、良いトレーニングができていれば、ジムに行くたびに挙上重量や回数を伸ばしていける人は珍しくありません。一般的によく知られる「超回復理論」を理解しておくと、うまく当てはまって便利に使えることが多いです。


しかし、トレーニングをしばらく続けると、徐々に筋力が伸び悩むようになります。始めて間もない頃のように、ジムに行くたびに右肩上がりで記録が伸びて行くというのは難しくなっていきます。これは、初心者のゾーンを抜けようとしているサインと捉えることもできます。

筋力の伸び方と遺伝的限界

絶対的な筋力という意味では個人差が大きくありますが、誰しも永遠に強くなり続けられるワケではありません。各自、遺伝的な筋力の限界があり、そこに近付くほど筋力は伸びにくくなります。

図1 筋力の伸び方と遺伝的限界 AthleteBody.jp

図1のグラフはマーク・リプトーの著書に掲載されている物を簡潔に再現した物です。初心者から上級者へとトレーニングを続けるごとに生まれ持った限界に近付き、筋力の伸びが緩やかになって行くことを表しています。それに合わせて、さらに筋力を伸ばすには複雑なプログラム作りが必要になるということです。

レベル分けの考え方

本人の遺伝的な限界にどれだけ近付いているかがポイントですが、例えば「ベンチプレスが何kg挙げられれば中級者」というような目安の数字は当てはまらず、「漸進性過負荷の法則に沿ってトレーニング負荷を上げる(筋力を上げる)のに必要な時間」を基準に考えます。

初心者

筋力トレーニング開始から数ヶ月間、週3回のトレーニング日ごとに重量を上げていくことで筋力を上げることができる。トレーニング間隔は48時間を基本とし、筋肉痛や疲労度合いによっては72時間の休息を取ることもある。超回復理論が便利に使える時期。

中級者

48時間〜72時間のサイクルで筋力を伸ばせなくなって来た段階。週3回でトレーニングをしつつ、1週間単位で筋力を伸ばすプログラムが効果的。

上級者

1週間単位のサイクルで筋力を伸ばせなくなってきた段階。週3回でトレーニングをしつつ、数ヶ月単位で筋力を伸ばすプログラムが必要になる。

つまり、初心者のゾーンを抜けてさらに前進するには、48〜72時間という区切りよりも長いスパンでトレーニングを考える必要が出てきます。これには、「フィットネス・疲労理論」を理解しておくと助けになります。

マーク・リプトーが、著書の中で中級者と上級者向けとしているピリオダイゼーションのプログラムを1つずつご紹介します。

中級者のピリオダイゼーション(The Texas Method)

テキサスメソッドと呼ばれ、中級者向けとしては代表的なプログラムのひとつです。

週3回のトレーニング日ごとに、ボリューム(セット数)と強度(重量)を調節。1週間単位で筋力アップを図ります。ピリオダイゼーションとしてはかなりシンプルな構成ですが、リプトーは「初心者の域を出たトレーニーには非常に効果的で、数ヶ月にわたって筋力の伸びを期待できる」と語っています。

下の画像では、月・水・金のスケジュールを使っていますが、月曜日と金曜日で扱う重量が毎週少しずつ上がっていく状態を目指します。

図2 テキサスメソッド AthleteBody.jp

月曜日:高ボリューム・中強度

5回×5セットがギリギリこなせる重量設定。トレーニング全体で身体に掛かるストレスはこの日が最大になる。ボリューム・重量の設定は種目を問わず応用可能。

水曜日:中ボリューム・低強度

月曜日の80%程度を目安に重量を落として5回×5セット。この日は月曜日のトレーニングからの回復を妨げない程度に負担を抑えつつ、神経系の伝達効率を落とさない程度に筋肉に刺激を与えることがポイント。
身体を動かすことで筋肉への血流が良くなり回復を促す効果も期待できる。

金曜日:低ボリューム・高強度

5回×1セットの記録更新にのぞむ。月曜日のトレーニングの疲労から回復し、筋力アップを確認するためのトレーニング日。次週の月曜日に疲労を残さないようボリュームは抑えつつ、1週間で最大の重量を扱う。

上級者のピリオダイゼーション(The Pyramid Model)

1週間単位のプログラムで筋力が伸びなくなってきたら、いよいよ上級者ゾーン。2ヵ月を1サイクルとして、さらに前期4週間・後期4週間に分けてプログラムを組み立て、8週目の金曜日に最大筋力アップを狙います。
リプトーいわく「使用重量以外はそのままの構成でこのプログラムを繰り返し、何ヶ月にもわたって筋力を上げていくことも期待できる」ということ。

図3 ピラミッドモデルのイメージ AthleteBody.jp

前期4週間:ローディング期

上級者 超回復 ピリオダイゼーション 前期
5回×5セットを4週間にわたって重量を変えながら行う。重量を下げるのは週に1回だけとなり、中級者のプログラムと比べると1週間のボリュームはかなり大きくなる。
この前期4週間全体で中級者の月曜日と同じ役割を果たすと考えることもできる。
トレーニングで身体に掛かるストレスも大きく、4週目には予定通りのメニューをこなすのが難しくなる可能性もあるが、4週目終了時に余力のある場合には、このサイクルをもう1週間延長し、5回×5セットの新記録を狙うことも可能。

後期4週間:ピーキング期

上級者 超回復 ピリオダイゼーション 後期

全体でのボリュームを落として身体に掛かるストレスを小さくすることで、前期4週間で蓄積した疲労が徐々に回復し、パフォーマンスが上がっていく。
この後期4週間が中級者プログラムの水曜日・金曜日にあたると考えることもできる。
8週目の金曜日には、これまでの100%(1RM)の重量で3回挙上に成功、筋力アップを狙う。この後期4週間でも疲労の蓄積が大きければ、期間を1週間長く取り回復を促すことも可能。

ピリオダイゼーションの留意点

今回のピリオダイゼーションのプログラムはマーク・リプトーの著書で多数紹介されている中から最もスタンダードとされている物を抜粋して紹介しています。
もともと200ページある本の内容をこの1ページに凝縮していますので、かなり簡略化されていることはご了承ください。

重量・回数設定は臨機応変に

回数設定は5回×5セットを標準として紹介していますが、これは絶対のルールではなく状況に応じて変更可能です。ローディングに10回×3セットや、ピーキングに5回×1セットといった設定も考えられます。

十分な食事量が前提

このピリオダイゼーションは、十分な栄養が摂れていることが前提になっています。減量中など、食事制限をしていると身体の回復力が落ちるので、プログラム通りに進められない可能性は考えられます。

減量中には筋力を落とさないことを優先し、シンプルな高負荷・低ボリュームのプログラムの方が良い結果につながる可能性もあります。ピリオダーゼーションを取り入れる前に、ご自身の伸び悩みを打開するのに必要なのが食事の変更なのか、トレーニングのプログラムなのか考えてみるのは良いかもしれません。

無料 eBook!

Screen_shot_2016-12-10_at_15.25.10_169

筋力・筋肉量を伸ばすにはナニが必要か?
いま科学的に分かっていることを36ページにギュっと凝縮
過去9000名がダウンロード、好評公開中!

Powered by ConvertKit

コメント

  1. ご質問が有り、コメント残させて頂きました。

    自分は現在、トレーニング中級者程度なのですが
    頻度として、週2回が何とか言った感じです。
    その場合上記のプログラムは、どの様に考えれば良いのでしょうか?
    お手すきの時で結構ですので、返答頂けますと助かります。

    1. わっふるさん、初めまして。名前好きです(笑)

      週2回のトレーニングならこっちの記事が参考になるんじゃないかと思います。負荷の設定を細かく変えるような話はありませんが、頻度を落とす(3回→2回)ことで回復を促すという考え方ですね。

      こんなマニアックな内容までチェックしてもらってありがとうございます。参考になれば^^

  2. ばっきぃびーん (@buckybean)

    似た内容の記事を書きたかったんですが、これ以上の物は書けないので素直に諦めますw パート1も含め、色々網羅されてて素晴らしい!

    わっちも現在週単位のRPTから離れ、デッド、ベンチ、スクワットでアレンジした5/3/1に移行してちょうど2サイクル終えました。デッドのトリプルズで385lbsをプルして数ヶ月停滞して居た所、5/3/1を2サイクル終わってトリプルズで405lbsをプルしました。わっちが使っていたRPTに比べ、ボリュームは少ないのに・・・。(参考までにカロリーは+20/-20) 当分はこの月単位プログラミングで頑張ります。

    1. ばっきーさん、こんちゃ^^

      >パート1も含め、色々網羅されてて素晴らしい!
      どうまとめようか結構時間掛けて悩んだんですよー。そう言ってもらえるとホント嬉しいです。

      >似た内容の記事を書きたかった…
      >デッド、ベンチ、スクワットでアレンジした5/3/1に移行して…

      面倒じゃ無かったら詳細聞きたいです。実践内容を記事にしてくれたりしませんかー?
      ばっきーさんのブログコメントで、「プラトー脱出のちょいデローディング作戦」の話見ました。これも書こうかと思ったんですけど、すでにボリュームが多かったんで削ったんですよねェ。
      というワケで更新楽しみにしてますw

      1. ばっきぃびーん (@buckybean)

        了解です。3サイクル終了した時点でBastard 5/3/1に挑戦した体験を記事にしようと思います。実際にはgzcl氏の懸垂プログラムも導入してるのでそこら辺も含めたいとおもっちょります。

  3. この記事に「幻想」というハンドルネームの方からコメントを頂いていましたが、最近新しいサーバーに切り替えた際に保存されず消えてしまいました。

    「ピリオダイゼーションのプログラムを実際に行った結果などが見れると良い」という内容でした。
    ワリと長いやりとりになりましたが、要点をまとめると、ある程度経験を積んでからの筋力アップには、ピリオダーゼーションはひとつの方法で、万人に効く答えとは限らないということです。
    ボクは、ベンチプレスで中級者向けの内容を試しましたが、食事量が足りていなくて、伸び悩んだ時期がありました。もう少ししっかり食べれば他のトレーニング内容でも伸びた可能性は感じます。
    他には、外国人体験談ページに載せているブラッドという人が、同じ中級者の設定でBIG3を週3回おこなっていました。トレーニング記録の変化も載せています。

  4. アンディさん、八百さん 初めまして!

    いつも参考にさせて頂いております。少し疑問に思ったので質問致します。

    中級者のピリオダイゼーションの項目で
    月曜日 高ボリューム、中強度 5回5セットがギリギリこなせる重量設定。

    とありますが、1セット目で5回ギリギリの重量設定だと、2セット目3セット目と回数が落ち
    5セット目は1回上がるか上がらないかになってしまいます。
    5セット目に5回ギリギリ上がる重量設定だと、1セット目は10回は上げれます。

    これは5セット目5回ギリギリに焦点を当てて、初めのセットは5回で止めて余裕を持たせて良いと言う事でしょうか?
    それとも1セット目から5回ギリギリに重量設定して、セット毎の回数の落ち込みは気にしないと言う事でしょうか?

    ちなみにセット間のインターバルは60~90秒で行っております。

    1. 初めまして、コメントありがとうございます。

      >5セット目5回ギリギリに焦点を当てて、初めのセットは5回で止めて余裕を持たせて良いと言う事でしょうか?
      こういうコトですね。
      セットごとに重量を変えず、5回5セットできれば、次のトレーニングで重量を上げます。トレーニング効果の違い以上に、筋力の変化をチェックしやすいのがメリットです。
      ウチのサイトでは、8回3セットなんかの設定を勧めることもありますが、その場合も考え方は同じです。
      唯一例外になるのがRPTですね。この場合は、1セットごとに独立して考えるので、重量・回数ともに設定がバラバラになります。

  5. アンディ 八百さん
    コーチングを受けた山口です。

    ここで紹介されている中級者のピリオダイゼーション(テキサスメソッド)は、1種類のメニューを続ける場合ですよね。

    ABスプリットと、このピリオダイゼーションテクニックのテキサスメソッドを組み合わせるにはどうしたらよいのでしょうか?

    A 5×5、B 5×5、A 5×2、B 5×2、A 5×1、B 5×1 のようにすればよいのでしょうか?

    1. 山口さん、ご無沙汰しています!お返事がおそくなってすみませんm(_ _)m

      テキサスメソッドは、重量と回数設定のテンプレート的なもので、いろんな組み替え方が考えられますが、各トレーニング日が次のように区別されるのがポイントです。
      1. 高ボリュームで大きなストレスを掛ける
      2. 中ボリュームかつ低強度で回復を促す
      3. 低いボリュームかつ高強度で記録更新を目指す。
      高ボリュームの日のセット数や種目数をさらに増やしたり、低ボリュームの日の回数設定をさらに下げたりという調整をする人もいるようです。結果的に高ボリュームの日のトレーニングがものすごく長くなるようなケースも出てきます。
      このページのA/Bスプリットでは補助種目が入りますが、ボリュームがおよそ均一なので、そのまま当てはめるのは少しやりにくくなると思います。1日ごとのボリュームが大きく変わらない方がやりやすければ、eBookで紹介したリニアピリオダイゼーションなんかが使えるかもしれません。

  6. 筋トレ初心者です。
    筋力と遺伝的限界グラフの「時間」の単位って「月」ってことでいいんですよね?
    無知ですいません。

    1. 前田さん、コメントありがとうございます。

      図1のグラフにて、時間の単位は「月」で合っています。
      ただ、ここでは正確な時間経過よりも、「初心者から上級者になるにしたがって複雑なトレーニングプログラムが必要になる。」という大まかなイメージを捉えていただければ大丈夫です。

      筋トレを楽しんでください^^

  7. いつも参考になる記事をありがとうございます。
    筋トレ初めて数年経っても扱っている重量は全然ダメですが、ここのところ半年程全く記録が伸びず、たまたまこの記事に出会い「上級者のピリオダイゼーション」を試してみたいと思いました。
    これは例えば、ビック3の何か1種目に絞って行うということでいいでしょうか。だとして、上級者向けであるのに同じ部位を週3回のトレーニングでも大丈夫ということでしょうか。
    もし、この見解で良いとすれば、それ以外の部位はこのピリオダイゼーションと並行してどのようにトレーニングをするのがいいのでしょうか。
    もしかして、記事内容に対して質問がずれているかもしれませんが宜しくお願い致します。

    1. かりんとさん、こんにちは。コメントありがとうございます。

      これは重量設定を変えていくテンプレートのようなもので、トレーニング種目の数や選び方は、いろいろと考えられます。英語が大丈夫なら、原著に組み合わせ例がいろいろと紹介されています。

      かりんとさんの状況次第ですが、この型にこだわる必要もないかもしれません。この記事や、このeBookもあわせて読んでもらうと選択肢が広がるかもしれません。

      1. コメントありがとうございます。

        おすすめしていただいた記事を読んだら、この記事もこの記事もと気になる内容が次から次へと出てきてお礼が遅くなりました。

        コメントに丁寧に返答するのは本当に大変だと思います。そのおかげですが、記事内容だけでなくコメント欄も読むとかなり参考になります。

        数か月後に良い結果を報告できたらいいなと思っています。
        本当にありがとうございます。

        1. ありがとうございます。

          >コメント欄も読むとかなり参考になります。
          こうやってお返事いただけることは少ないので、コメント欄を開けていて良かったと思えます。

          >数か月後に良い結果を報告できたらいいな
          応援しています。ガンバってください^^

Leave a Reply

*

サイト管理人

Andy Morgan - AthleteBody.jp Facebook Profile Picture 2015

アンディ・モーガン

イギリス出身のダイエットコーチ兼パーソナルトレーナーです。日本に住んで11年。日本が大好きになりました。 欧米のダイエット情報と数百人の英語圏のクライアント指導で得た経験を日本に広めるためノウハウを公開しています。
AthleteBody.jp Kengo Yao 2015

八百 健吾

サイト内で紹介する外国人トレーナーなどの記事の日本語訳を担当しています。 アンディと本橋とチームで内容充実のサイト作りをしていきます。ご期待ください^^
Naoto Motohashi AthleteBody.jp 200×200

本橋 直人

科学的根拠に基づく指導をモットーとしてカナダで活動中のパーソナルトレーナー&指圧セラピストです。皆様のフィットネスライフに役立つ情報を厳選して発信していきます!

最近のクライアント写真

  • A photo on Flickr
  • A photo on Flickr
  • A photo on Flickr
  • A photo on Flickr
  • A photo on Flickr
  • A photo on Flickr
  • A photo on Flickr
  • A photo on Flickr
  • A photo on Flickr
  • A photo on Flickr


クライアント写真一覧を見る

掲載情報についてのご注意

当サイト掲載の情報は、多くのトレーニーに役立てられるよう細心の注意を払っていますが、各個人の状況によって情報の有用性は変わります。ご自身の責任でご活用ください。
また、当サイト掲載の情報は医学的アドバイスではありません。健康面での不安のある方は、医師、理学療法士、管理栄養士など、それぞれの専門家にご相談ください。