このサイトでは、高重量を扱えるバーベルの基本種目を中心にしたトレーニングを勧めています。筋力を上げて筋肉を増やすために必要な要素を押さえやすく、もっとも着実に結果につなげられる方法だと考えています。
ただ、日本にはバーベルを使えるジムが少なかったり、だれでも自宅にパワーラックが置けるわけではなかったり、少しハードルが高いのも事実です。
筋力トレーニングにはいろいろな方法があり、どのトレーニング方法でも要点を押さえれば身体を鍛えることはできるので、「ヤル気はあるけど環境がない」という人に向けて、シリーズでバーベル以外のトレーニング方法を使ったプログラムを紹介していきます。第1回目は自分の体重だけで行う自重トレーニング種目です。
自重トレーニングプログラム解説
プログラムであること
バーベルやダンベルなどのトレーニング用品を必要としない自重トレーニング種目は、ネット上でいくらでも情報を得ることができます。ただ、目に付いた種目を片っ端からやっても身体が変わるものではありません。
「自重種目」という制約の中で、できるだけ効率的にバランスよく全身を鍛えられるプログラムを考えました。
自重トレーニングプログラムの対象者
初心者・経験者を問わず、まったくトレーニング用品を使えないという人。
自重トレーニングの長所と短所
良い所
- トレーニング用品にお金やスペースを費やさなくてすむ。
- いつでも、どこでもトレーニングができる。
- うまく使えば関節への負担が少なく、ファンクショナルなトレーニングができる。
痛い所
- 筋力に合わせた負荷調整が難しく、着実な筋力アップがしづらい。
- 初心者はフォームが安定せず、トレーニング効果がうすれがち。
- 身体の裏側の筋肉など、全身をバランスよく鍛えるのが難しい。
- 自宅では、ジムのような「スイッチが入る」環境がなく、十分なトレーニングになりにくい。
自重トレーニングプログラム実践ガイド
プログラム概要
トレーニング頻度は中1日の休みをはさんで週3回。ワークアウトAとワークアウトBと2種類のメニューを設定し、トレーニング日ごとに交互に行います。
ウォームアップ
ワークアウトA
ワークアウトB
クールダウン
実践スケジュール例
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負荷設定のヒント
漸進性過負荷の原則
この自重トレーニングプログラムで良い結果が出るかは、筋力が上がるのに合わせて段階的に負荷を上げていくことができるかに掛かっています。
これを漸進性過負荷の原則と言います。自分にとって楽にできる運動を続けていても身体は変わっていかないということです。
回数・可動域・補助の程度を調節して負荷を上げていきますが、一度に複数の要素を変えず、一度に変更するのはどれかひとつだけにして調整するようにしましょう。
回数で負荷調整(ホールド種目は秒数)
当たり前と言えば当たり前ですが、同じ運動なら回数を多くこなす方がキツくなります。ある種目で8回3セットができれば、次は9回3セット、さらに10回3セットと回数を増やしていくことで過負荷を達成できます。
ここでは可動域を変えないことが重要です。基本的にどんな種目も可動域がせまくなると楽になります。例えば、腕立て伏せで胸が地面に着くギリギリ手前まで身体を落として8回3セットできたとして、次に9回こなすために身体の落とし込みが浅くなると、必ずしも負荷が上がっているとは言えません。
可動域やフォームで負荷調整
腕立て伏せのように、種目によっては可動域やフォームを変えることで負荷を上げられます。以下に各種目のフォーム解説をしていますが、可動域を変えるときは、回数を変えないようにしましょう。
補助レベルで負荷調整
種目によっては目標回数をこなすのに補助を使うことも可能です。筋力が上がるのに合わせて補助に頼る度合いを減らしていくことで過負荷を達成できます。
この場合もできるだけ回数と可動域は一定に保つようにしましょう。
各種目フォーム解説
ナチュラルグルートハムレイズ
- 動画のようにカカトを固定し、ヒザ立ちの姿勢から身体をゆっくりと前に倒していく。
- できるだけ動きをコントロールして、上半身が床に着く前に手で身体を受け止める。
- 戻るときには、手で必要なだけ身体を押し上げて補助する。
- 負荷がキツ過ぎる場合は、股関節を曲げると楽になる。
- それでも辛い場合は、手をつく位置にクッションなどを置いて可動域を限定する方法もあり。
- 筋力が上がってくると、股関節を伸ばし、手の補助を使わずに身体を上げ下げする。
グルートブリッジ
- 仰向けに寝転がり、足をイスなどの上に乗せる。(足を床に下ろすと負荷が下がる。)
- 太ももが体幹と一直線になるところまで股関節を伸ばす。
- 股関節を伸ばしたとき背中を反らせない。腹筋・背筋を使って体幹は直線に保つ。
- 可動域の上の位置で臀筋とハムストリングスを収縮させて2秒ホールド。
- 負荷を上げるには動画のように片足ずつ行う。
チンアップ
- いわゆる懸垂。ブラ下がれる場所が必須。
- 逆手(手のひらが自分の方を向く)で握るチンアップは上腕二頭筋の関与が増える。
- 逆手グリップのチンアップの場合には、手幅は肩幅以上に広げないようにする。
- 順手グリップのプルアップの場合には、手幅は肩幅よりも狭めないようにする。
- 動作中できるだけ体幹をまっすぐ保つことで腹筋も鍛えられる。
- 十分な筋力がない内は、上の動画のレジスタンスバンドを使うバリエーションと、下の動画のジャンプして身体をゆっくり下ろすバリエーションを使って、目標回数行う。
逆立ち or 逆立ち腕立て
- 動画のような可動域全体を使った逆立ち腕立ては筋力の高い人向け。
- 壁に足を着けてもたれかかる形で、ホールドするところから。
- 身体がブレないように意識することで体幹も鍛えられる。
ピストルスクワット
- 両足を揃えて、つま先とヒザがまっすぐ前を向くように立つ。
- 片足を前に出し、両手を前に突き出し、可動域の一番下までしゃがみこむ。
- 高負荷の種目で、ムリをするとヒザを痛める可能性があるので慎重に。
- 負荷調整の方法は動画を参考に。動画後半に向かうに連れて強度が上がっていく。
- それでも不安がある場合は、手でイスなどを持って補助にする方法もある。
- 両足での自重フルスクワットを楽にこなせない場合は、他の方法で筋力・可動域を伸ばす。
腕立て伏せ
- 足から頭まで身体を一直線に保つ。維持できなくなったら1レップと数えずストップ。
- 足を広げると楽になり、手をイスなど高い所に乗せるとさらに強度が下がる。
- 足を閉じたり、足を高い所に乗せると強度が高くなる。
- 動画のようにレジスタンスバンドやウェイトベストを使って負荷を追加できる。
インバーテッドロウ
- 斜め懸垂。身体が水平に近付くほど強度が上がる。
- 身体の傾斜を大きくすると負荷を下げられる。
- 懸垂と同じく、順手グリップは肩幅より広く、逆手グリップは肩幅より狭く。
- 腕立て伏せと同様に、身体を直線に保てなくなったらストップ。
- 自宅ではテーブルの下に潜って、テーブルの縁を掴むのがやりやすいかもしれない。
RKCプランク
- 体幹種目の定番「プランク」の発展バリエーション。
- 四つん這いの姿勢から、手を組み、ヒジをつき、足を伸ばして踏ん張る。
- ヒジと足の幅を広げると楽になり、狭くするとキツくなる。
- 思い切り手を握りしめ、脇を締め、腹筋に力を入れ、骨盤が軽く後傾し、ヒザの皿を持ち上げるようにお尻・太ももを引き締める。
細かな注意点
「自重=手軽=初心者向け」ではない
自重トレーニングで良い結果が出せるかは、段階的に負荷を上げていくことができるかがカギです。そして、そのためにはブレずに正しいフォームでトレーニングできることが必須です。
トレーニング経験の少ない人はフォームを身体で覚えていないので、無意識の内にフォームが乱れて負荷が抜けてしまいがちです。当サイトで初心者の方に自重トレーニングを積極的にオススメしないのはこのためです。
フォームチェックはビデオ撮影
フォームが乱れると、正しく負荷が掛けられないだけでなく怪我のリスクも高くなります。定期的に自分のトレーニングをビデオ撮影して、このページのビデオと比べてチェックしてみましょう。ビデオカメラを持っていなくてもスマートフォンの動画機能で十分です。
はじめの負荷設定は控えめに
デモビデオを見て楽にできそうだと思っても、実際にやってみるとキツいと感じるかもしれません。ちょっと余裕を持てる負荷設定から始めましょう。実際に余裕があれば、そこをベースラインに、次のトレーニングから少しずつ回数や可動域を調整するようにしましょう。
セット間休憩は一定に
セット間休憩は60〜120秒程度が考えられますが、種目・体力に合わせて調整してください。一旦時間を決めたらできるだけ一定に保ちましょう。
厳密にはセット間休憩の時間が変わると、これも次のセットの難易度に影響するので、ストップウォッチなどで測るのがベストです。
プログラムであること
今回は自重トレーニングをテーマに種目を選びました。実際には、自重種目にこだわらないといけない理由はありません。ダンベルやバーベル種目をうまく組み合わせれば、もっと効果的なプログラムにすることは可能です。
ただ、冒頭でも書いたように目に付いたものを手当たり次第にやれば良いワケではないので、自分の身体や筋力バランスに合わせた種目選びがピンと来ない場合は、このまま使ってもらうのがいいかもしれません。
こんにちは、飯田と申します。
現在、僕はバーベルのような、器具を使用せずに自重トレーニングをしています。
ある程度今の筋トレに慣れてきたら、筋発揮張力維持スロー法で効率を上げようと考えていました。しかし、記事を拝見すると回数・可動域・補助の程度を調節して負荷を上げていくのが良いということが感じられました。
ここで質問です。やはり、今まで以上に動作をゆっくりすることは、今まで以上の負荷をかけていることにはならないのでしょうか?これからの筋トレの参考にしたいです。またそのようなことが示されている論文があれば教えていただきたいです。
お忙しい中、申し訳ありませんがよろしくお願い致します。
飯田さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
加重や可動域の使い方が同じであれば、動きをゆっくりにすることで負荷を上げることは可能です。
ただ、筋力や筋肉量を伸ばしていくのに、オススメするかというと微妙なところです。飯田さんの使えるトレーニング種目や現在の筋力レベルによっても変わってくると思います。
よかったら、このeBookもご覧になってみてください。ゆっくりした動作で行うトレーニングについての考え方や、参考文献も紹介しています。
八百さん、返信と丁寧なご説明ありがとうございます。とても参考になりました。
eBook拝見させていただきました。参考文献も拝見してみようと思います。
全然関係ないかもしれなくて大変申し訳ないのですが、もう一つ質問なしてもよろしいでしょうか?
質問は『意識をすることで筋力があがるということを言っている記事があるのですが、それについてはどのように考えていますか?』というものです。自宅で筋トレをする際についついどこを鍛えているのかわからなくことがあり、それはどうなのかということで気になっています。
そのようなことを述べている記事の内容は『2006年英国心理学会会議で上腕二頭筋に意識を集中して行ったほうが、ウェイトに意識を向けた場合よりも、上腕二頭筋の活動が大きかったことが報告された。』ということなんですが、実は力不足でネットで探してみてもなかなか見つけることができず確かな情報を得ることができていません…(情けないです…
このような意識と筋肉の関係を研究している論文などをご覧になったことはありますでしょうか?もし、あるようでしたら是非教えていただきたいです。
お時間があるときでよいので、是非お願いいたします。
飯田
飯田さん、eBookが参考になったようで何よりです。
飯田さんの見られた文献の内容を確認できていないので、書き出していただいたコメントから読み取れる範囲でのお返事になりますが、トレーニング動作中の意識の向け方で、筋活動が変わるということはあります。
意識の向け方には、大きく分けて、特定の筋肉を意識する場合と、特定の動作を意識する場合とに分かれます。これに関しては、eBook内のP.29で簡単に解説しています。
特定の筋肉に意識を向けながら動作を行うトレーニングが有効かどうかは、トレーニングの目的や経験値によって変わってきます。
トレーニングを始めて間もない方には、特定の筋肉に意識を向けるよりも、基本となる動作を覚えることに専念してもらう方が、長い目で見て効果的なことが多いと思います。
これまでに掲載している情報をリンクしておきますので、eBookに加えてひと通り読んでもらえれば全体像が見えてくるかと思います。
本橋の書いた記事
岡田先生の記事
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こんにちは(^0^)
私は週に1回のBIG3トレーニングを行っています!
現在減量中で体重45キロでSQ40 BP20 DL50を5×5までできるようになりました!
アンディさんと八百さんのおかげです(ㅅ´ ˘ `)
しかし週に1回のトレーニングですので6日間をアンダーカロリーで生活していてとても辛いです(^^;
そこでバーベルトレーニングの他に週に2回自重でのトレーニングをしようと思うのですが、自重トレーニングの日でもバーベルトレーニングと同じようにトレーニング日として扱ってオーバーカロリーを摂取しても大丈夫でしょうか?(*_*)
もちろんトレーニング日が増えてオーバーカロリーの日が増えれば休養日のカロリーも調整します!
よろしくお願いいたしますm(_ _)m
Yukiさん、こんにちは。コメントありがとうございます^^
ジム以外でのトレーニングを取り入れられるのも、その日の食事量を増やして、休息日の食事量を調整されるのも良いと思います。
おそらくですが、このページはそのまま実践するのがキツい種目が多いと思います。
ご自宅ならゴブレットスクワットなどダンベル種目を取り入れられるのも良いと思います。
どれも難しい。バーベルの方が取り組みやすいですね
そうなんですよね。種目数が増えて、フォームを覚える手間や、種目ごとの負荷の調整を考えると、「自重=手軽」とは言えなくなります。
バーベルは同じ種目・同じフォームで重量だけ変えれば良いので、使える環境さえあればずっと取り組みやすいと思います。