筋肥大を目的にトレーニングをしているけど、実際に筋肉が増えているのか実感がないという場合、目を向けてみると良いことはいくつかあります。
その中でも今回はトレーニングに焦点を当てて考えてみたいと思います。
AthleteBody.jpではパーソナルコーチングと称して、体形改善を目標とする趣味トレーニーやコンテスト選手の指導をさせていただいています。その中で、「しばらくジム通いを続けているのに筋肉が増えない」というご相談をいただくことがあります。
ひと口に筋肉が増えないと言っても人によって原因はさまざまです。今回はコーチングでよくある状況として、以下のようなものを想定してお話しします。
- トレーニング経験が半年〜2年程度
- トレーニング開始当初は効果が感じられたものの最近は行き詰まり気味
- トレーニングは高頻度で行っている
- トレーニングを部位ごとに分け、それぞれ複数種目行っている
- 効かせるテクニックを重視してトレーニングしている
ここに挙げた条件がいくつか当てはまる人には、参考にしてもらえる内容になるかもしれません。
刺激と疲労
筋肥大を目的にしたトレーニングでは、筋肉に負荷をかけて刺激を与えることが必要です。そして、筋肥大を促す刺激を大きくするのに重要なのがフォームとトレーニング量です。
適切なフォームで多くのトレーニング量をこなすと筋肥大効果は高まるはずです。
ただ、トレーニングを行うと疲労が溜まります。疲労がキツくなると、1日単位ではトレーニングに集中して力を出しにくくなったり、フォームを保ちにくくなったりします。
長いスパンで疲労が強い状態が続くと、トレーニング量をたくさんこなせなくなったり、そもそも続けられなくなったりするデメリットがあります。
そこで、プログラムを考える上ではトレーニング量と疲労のバランスが取れていることが重要になります。
このことを前提として、私はトレーニング量と筋肥大には下の図のような関係があるはずだと考えています。
トレーニング量を増やしていくと筋肥大効果は高まりますが、どこかで頭打ちになります。
例えば、トレーニング量を10セットから30セットに増やすと効果も3倍になるというものではなく、はじめの10セットの方が持つ意味が大きいはずだという考えです。
もともとトレーニング量が少なければ、トレーニング量を増やすことで刺激を高め、筋肥大効果を高めることも期待しやすくなります。
すでにトレーニングをたくさん行っている状態であれば、さらにセット数や種目数を増やしても効果は伸びず、疲労が溜まってキツいだけという結果になるリスクが高くなると思います。
このことを踏まえて、熱心にジム通いを続けているのに筋肉がつかないと悩まれる人は、トレーニングをやり過ぎている場合が少なくないように感じます。具体的なトレーニング内容を見ると、高頻度で、種目数やセット数も多いことがよくあります。
こういう人にはトレーニング頻度や種目数を抑えて、高重量を扱えるバーベル種目を中心にした内容に変更させてもらうと状況が好転することがあります。
実際にAthleteBody.jpで指導させていただいた例をご紹介します。
Mさんの例
MさんはAthleteBody.jpで増量指導させていただいたクライアントさんです。
Mさんはコーチングお申し込み前、筋肥大を目的にトレーニングをされていました。しかし、数ヶ月にわたって挙上成績はあまり伸びておらず、日常生活に支障が出るくらい疲労が大きいとのことでした。
Mさんのトレーニングは以下のような内容でした。
- トレーニング頻度は週2回
- 毎回全身を鍛える
- 1回のトレーニングで12種目、各種目3セットずつ行う
一度のトレーニングで12種目というのは、種目数としては非常に多いです。Mさんはこのトレーニングを終えるのに2〜3時間ほどかけていて、これが疲労の原因になっているのではないかと考えました。
そこで、次のようにプログラムを組み直しました。
- トレーニング頻度は週3回
- コンパウンド種目を中心に毎回全身を鍛える
- トレーニング量は1日4種目、3〜5セットずつ行う
各部位のトレーニング量を1週間あたりで考えてみると、コーチング開始前からセット数は大きく変わりません。しかし、1回のトレーニングで行う合計セット数を落とすことで、疲労が問題にならなくなることを狙っています。
しかし、1回のトレーニングで行う合計セット数を36セットから16セットに落としました。これで疲労を和らげることを狙っています。
また、種目数を減らしたのには、最後の種目の最後のセットまで集中力を保って行ってもらいたいという意図があります。
このトレーニングを3ヶ月続けてもらったところ、Mさんの身体は次のように変わりました。
開始時 | 3ヶ月後 | |
体重 | 67.5kg | 72.2kg |
胸囲 | 91.0cm | 94.5cm |
お腹まわり | 74.0cm | 74.0cm |
スクワット | 67.5kg × 5 | 82.5kg × 5 |
ベンチプレス | 52.5kg × 5 | 57.5kg × 5 |
体重が大きく増えましたが、お腹まわりのサイズは維持できています。また、挙上成績も3ヶ月のうちに順調に伸ばせています。
体脂肪をほとんど増やさずに筋肉をつけることができたと言えます。
コーチングを開始してからは、疲労が問題になることなくトレーニングを続けられました。
コンパウンド種目を中心に種目数を絞るという作戦は、増量期にも役立つことがあるという一例です。
Tさんの例
Tさんはコーチングお申し込み前、ご自身で考えたプログラムが理にかなったものか自信がなく、効果にも満足されていないようでした。
Tさんのトレーニングは以下のような内容でした。
- トレーニング頻度は週5〜6回
- 1日ごとに対象部位を設定する
- 各部位につき4〜6種目、合計15〜30セットくらい行う
1回のトレーニングでひとつの部位に15〜30セット行うというのは、一般的なトレーニングと比べて非常に多いです。
Tさんは疲労に苦しむことはなかったようですが、トレーニングの効果が思うように出ていなかったことが悩みでした。そこで、セット数は多いものの、それほど筋肉に刺激を入れられていない可能性を考えました。
トレーニング量が多いと1レップ1レップに集中して動作を行うことができず、筋肉への刺激が逃げているかもしれないということです。
そこで、次のようにプログラムを組み直しました。
- トレーニング頻度は週3回
- コンパウンド種目を中心に毎回全身を鍛える
- トレーニング量は1日4種目、3〜5セットずつ行う
全体として種目数も合計セット数も減らすことで、1レップずつ集中して動作を行い、確実に筋肉に刺激を入れられる状態を目指しました。
このトレーニングを3ヶ月続けてもらったところ、Tさんの身体と挙上成績は次のように変わりました。
開始時 | 3ヶ月後 | |
体重 | 67.8kg | 67.9kg |
胸囲 | 92.7cm | 94.0cm |
スクワット | 90kg × 5 | 102.5kg × 5 |
ベンチプレス | 75kg × 5 | 90kg × 5 |
デッドリフト | 130kg × 5 | 150kg × 5 |
この3ヶ月間で筋量は確実に伸び、BIG3各種目の挙上成績は10〜20kgくらい伸びています。この期間での伸びとしてはかなり良いペースだと思います。
Tさんは、コーチング開始からはじめの2ヶ月は食事制限をしていました。筋力・筋量を伸ばすには最高の条件ではなかったわけですが、良いトレーニングができたことがこの結果を出すカギだったと考えています。
自分に合ったトレーニング量
自分に合ったトレーニング量が重要で、どの程度の量が適切かは大きな個人差があります。
AthleteBody.jpで指導させていただくクライアントさんでも週2回で1週間合計20セット程度の控えめな内容から、週6回で1週間に90セットくらいこなしていただく場合まで大きな幅があります。
個人差を生む要因には、トレーニング経験、体質、目標設定(コンテストに出場する選手か)、トレーニングにかけられる時間の制約などがあります。
ただ、トレーニングの効果がいまいち上がらないと感じるとき、コンパウンド種目を中心に種目数を絞ってみるのは多くのトレーニーにオススメしたい作戦です。
今回ご紹介した2名のクライアントさんはよく似たプログラムを行われていました。細かな違いはあるものの、以下のような内容です。
ワークアウトA | |
スクワット | 5回 × 5セット |
ベンチプレス | 5回 × 5セット |
ロウイング | 10回 × 3セット |
レッグカール | 10回 × 3セット |
合計 | 16セット |
ワークアウトB | |
デッドリフト | 5回 × 3セット |
レッグプレス | 10回 × 3セット |
オーバーヘッドプレス | 5回 × 5セット |
懸垂 | 10回 × 3セット |
合計 | 14セット |
ワークアウトAとワークアウトBを交互に繰り返す形です。
表に示したトレーニング量が少なめに感じる人が多いかもしれません。上に書いたように実際には大きな個人差があるものなので、個人に合わせて調整が必要になります。
AthleteBody.jpのコーチングでは、まず各クライアントさんの条件に合わせてプログラムを設定します。その後はしばらく実施していただき、身体の変化や疲労の具合を聞きながら各自に合ったベストな設定を探す作業を行います。
自分に合った設定がよく分からないという人は、少し控えめなトレーニング量から始めて様子を見るのが良いかもしれません。
トレーニング量を減らすと刺激が減って効果も落ちるのではと心配になるかもしれませんが、Tさんのケースのように、1セット1セットに集中できるようになって効果は高まるかもしれません。
本当にトレーニング量が不足して伸び悩むようなら、そこから種目数やセット数を増やしていけば対応できます。少なめの設定から始めていれば、トレーニング量を増やしても継続できなくなるリスクは低く抑えられます。
「コンパウンド種目で挙上重量を伸ばす」というのは筋力トレーニングの基本とも言えるものです。適切なフォームと自分に合ったプログラムを押さえることができると、多くの人にとって最も確実に身体を変えられる方法なのだと思います。
コーチング受付中
AthleteBody.jpでは、パーソナルコーチングの申込みをお受けしています。
体形改善を目標にした一般トレーニーはもちろん、減量シーズンを終えて、増量期に入ったコンテスト選手の指導も承ります。科学的根拠に基づき、長期的な計画を立てて各個人の目標達成につなげるスタイルを特徴としています。
ご興味のある方は申込みページから詳細をご確認ください。
2017年に3か月間、本橋さんからパーソナルコーチングを受けました。
その後自宅にパワーラックを設置しトレーニングを続けています。
トレーニングをする上で一つだけ悩みがあります。
バーベルを担いでのスクワットを行うと、翌日から脚にひどい疲労感が2~3日間
続くのですがこれはやり過ぎなのでしょうか。
若干腰痛を抱えているので重量は無理をせず、体重の70%~90%くらいで
週1で10セットほど行っています。70%→90%→70%の重量設定で、
最後のセットは重量も軽いのでmuscle and connectionを意識して
そこそこ追い込んでいます。ブルガリアンスクワットでの疲労感はさらに
ひどくなります。
坂本さん、ご無沙汰しております。コメントありがとうございます。
>バーベルを担いでのスクワットを行うと、翌日から脚にひどい疲労感が2~3日間続くのですがこれはやり過ぎなのでしょうか。
コメントからお聞きできる範囲で判断するのは難しいですが、スクワットのあとひどい疲労感が出てしまうとのことであれば、セット数を減らしてみるのは良いかもしれないと思いました。
セット数を減らす場合、かなり控えめに設定してみて良いと思います。
減らしたあと、疲労が問題にならずに挙上成績が伸びていくか、しばらく様子を見るようにしてみてください。うまくいくなら、そのセット数のままトレーニングを続けていただければ大丈夫です。
少しでも参考になれば!