HIITは体脂肪をガンガン燃焼する?

投稿者 : 本橋 直人

HIITは体脂肪をガンガン燃焼する? AthleteBody.jp

体脂肪を減らすには、カロリー収支をマイナスにすることが必要です。それには、食事制限でカロリー摂取量を減らすのが効きますが、運動でカロリー消費量を増やすという方法も考えられます。一般的に、時間を掛けて長距離を走ったり泳いだりする有酸素運動がよく使われます。

最近では、有酸素運動よりも体脂肪を落とす効果が高いとして、「高強度インターバルトレーニング」という運動が注目を集めています。

有酸素運動よりも高い効果が得られるワケとして、次のようなことが語られています。

  • 体内で体脂肪を分解する物質がたくさん出る
  • 運動中に多くのエネルギーを消費できる
  • 運動後は何もしていないのにエネルギーを消費し続ける


高強度インターバルトレーニングを行うと、本当に身体の中でこんな起こるのか?そして、本当に有酸素運動よりも体脂肪を落とすことができるのか?について考えたいと思います。

高強度インターバルトレーニングってなんだ?

高強度インターバルトレーニングという言葉をはじめて耳にする方もいるかもしれません。まず、どういう運動なのかサッとご紹介します。

高強度インターバルトレーニングは、英語では「High Intensity Interval Training」と書きます。その頭文字をとってHIIT(ヒート)と省略されることがあります。以降この記事では、高強度インターバルトレーニングを「HIIT」と表記してお話を進めていきます。

HIITは、息が切れるくらいに強度の高い運動と、強度の低い運動を交互に行うトレーニング法です。全力ダッシュとゆっくりと歩くのを交互に行うと言うとイメージがつかみやすいかもしれません。思い切り強度の高い運動と、とても強度の低い運動を交互に繰り返すことがポイントで、運動の種類は問いません。例えば、自転車や水泳などが用いられることもあります。

図1 HIITと有酸素運動のイメージ AthleteBody.jp

HIITは強度が高くキツいため、有酸素運動のように長い時間続けることは難しいです。やり方によっては、数分間で疲労困憊してしまうこともあります。

HIITを行うと体脂肪を分解する物質が出る

HIITが体脂肪を落とす効果が高いのは、体内で体脂肪を分解する物質が出るからだとされています。

  • アドレナリンなどのカテコールアミンという物質
  • 成長ホルモン

研究1:体脂肪の分解を比べる

実際に、HIITのように強度の高い運動をすると身体の中でこういう物質が多く出ることが見られています。例えばこの研究では、被験者を2グループに分けて、条件の違う自転車運動を行ってもらい、アドレナリンの出方に違いが出るかを調べました。

  • HIIT:30秒間の強度の高い運動と、4分30秒間の強度の低い運動を交互に行う。それを4回繰り返す。
  • 有酸素運動:ややキツめの強度の運動を60分間行う。

図2 実験で行われた運動内容 AthleteBody.jp

運動を終えたすぐ後では、HIITの方が有酸素運動よりもアドレナリンが多く出ていたことが見られました。

図3 血液中のアドレナリンの量 AthleteBody.jp

しかし、アドレナリンがたくさん出ていたとしても、必ずしも多くの体脂肪が分解されるとは限りません。
この研究では、どれだけの体脂肪が分解されているのかを知るために、血液中の脂肪酸の量が調べられています。体脂肪が多く分解されているほど、脂肪酸が血液中にたくさん見られるはずです。

すると、アドレナリンの出る量が少なかった有酸素運動の方が、運動後の脂肪酸の量は多かったことが見られました。

図4 血液中の脂肪酸の量 AthleteBody.jp

体脂肪がたくさん分解されていたとすると有酸素運動の方が良いのか?という疑問が出てくるかもしれませんが、ここで注意が必要です。

体脂肪が減るためには、分解された脂肪酸が燃焼する必要があります。アドレナリンや成長ホルモンによって体脂肪が分解されたとしても、それが燃焼されるかどうかは普段からのカロリー収支にかかってきます。カロリー収支がマイナスでなければ分解された体脂肪は燃焼されることはなく、体重や体脂肪の減少にはつながらないのです。

そこで、HIITによる体脂肪への効果を見るには、HIITを行うことでカロリー収支がどのように変わるのかを見ていく必要があります。

HIITは運動中に多くのエネルギーを消費できるか

HIITの方が有酸素運動よりも体脂肪を減らす効果が高いのだとすれば、HIITの方が有酸素運動よりもカロリー消費量が多くなると考えられます。運動に関連するカロリー消費量は次の2つに分けて考えることができます。

  1. 運動中のカロリー消費量
  2. 運動後に代謝が上がって起きるカロリー消費量

まずは、HIITと有酸素運動とで運動中のカロリー消費量に違いが出るのかを見ていきましょう。

研究2:カロリー消費量を比べる

この研究では、2グループの被験者に、それぞれ次の条件で自転車運動を行なってもらい、運動中のカロリー消費量を比べました。

  • HIIT:60秒間のキツい運動と、60秒間の軽い強度の運動とを交互に行う。それを10回繰り返す。
  • 有酸素運動:そこそこキツイ強度で50分間の運動を行う

図5 実験で行われた運動内容 AthletBody.jp

運動中のカロリー消費量は図6のようになりました。

図6 運動中のカロリー消費量 AthleteBody.jp

HIITが352kcalだったのに対して、有酸素運動は547kcalで、有酸素運動の方がカロリー消費量が大きくなりました。

図5に示したように、この研究では、HIITが20分に対して有酸素運動は50分間行われたので、これがカロリー消費量の差につながったと考えられます。

HIITは運動後にエネルギーを余計に消費し続けるか

HIITでは、運動中のカロリー消費量が少なかったとしても、運動後に代謝が上がることで、さらにカロリーが消費され続けて、体脂肪が落ちると言われています。

研究2では、運動中だけではなく1日の総カロリー消費量が調べられています。

HIITを行なった場合と有酸素運動を行なった場合とを比べても、ふたつの運動の間に1日のカロリー消費量に違いは見られませんでした。

図7 1日全体のカロリー消費量 AthleteBody.jp

運動後にカロリー消費が増える効果について、過去の研究をまとめた論文によると、運動後のカロリー消費量の増え幅は運動中で消費された6〜15%にとどまることが見られています。例えば、運動中に300kcalが消費されたとしても、運動後のカロリー消費量の増え幅は45kcal程度にとどまるということになります。これは小さなあめ玉2〜3個分にしかなりません。この論文では、運動後のカロリー消費量の変化は体脂肪を減らすための決定的な要因にはならないとされています。

HIITは有酸素運動よりも効果的に体脂肪を落とせるのか?

ここまでは、運動を一度だけ行った時の身体の反応やカロリー消費量の違いを見てきました。ここまでご紹介した研究のデータを見る限りでは、HIITを行うことで有酸素運動よりも必ずしもカロリー消費量が増やせるとは言えないようです。

ただ、運動中や運動後のカロリー消費量は、HIITか有酸素運動かという違いだけでなく、運動の種類・強度・実施時間によっても変わりますので、研究が行われたときの条件によって結果にバラつきが出ます。

つまり、HIITの方が有酸素運動よりもカロリーを消費したり体脂肪を落としたりする効果が本当に大きいのか、ひとつの研究で答えを出すのは難しいということになります。こういう場合、同じテーマで行われた研究をたくさん集めて、どういう結果が出ているかをまとめることで全体の傾向が見えてきます。こういう研究をまとめる研究は「メタ解析」と呼ばれ、最も信頼性の高い科学的エビデンスとされます。

図8 HIITに関する科学的知見 AthleteBody.jp

△ HIITに関する科学的知見

研究3:体脂肪への効果の研究データをまとめたメタ解析

これまでにHIITと有酸素運動での体脂肪への効果を比較するというテーマで行われた研究データをまとめたメタ解析が発表されています。このメタ解析は次のような内容です。

  • 31の文献が解析された
  • 被験者の合計数は837人
  • 運動には、自転車、ランニング、水泳、ボクシングが用いられている
  • 研究が実施された期間は4週間から16週間

このメタ解析では、集められた研究データから、体脂肪への影響はどうなのかまとめられています。

図9 体脂肪率の減り幅 AthleteBody.jp

体脂肪率の減り幅は、平均してHIITで1.26%、有酸素運動で1.48%減っていたことが見られました。

図10 体脂肪量の減り幅 AthleteBody.jp

体脂肪量の減り幅は、平均してHIITでは1.38kg、有酸素運動では0.91kg減ったことが見られました。

このメタ解析に含まれた研究は4〜16週間という実施期間でした。HIITでも有酸素運動でも体脂肪率の減り幅が1%前後、体脂肪量の減り幅が1kg前後というのはサビしく感じるかもしれません。

結局のところ、確実に減量を進めていくには、目標とする減量ペースに合わせてカロリー収支をマイナスにすることが大切です。このメタ解析では、食事のルールが設けられていた研究はほとんどありませんでしたので、被験者はいつも通りの食事を摂っていたはずです。運動をしてカロリー消費量が増えても、それ以上食べていたら体脂肪は落ちません。

HIIT vs 有酸素運動

体脂肪を効率的に落とす運動として注目を浴びている高強度インターバルトレーニング。ここまでご紹介した内容から、この運動についての考え方は次のようにまとめることができます。

HIITは体脂肪を減らす特別な方法ではない

体脂肪が減るかはカロリー収支で決まります。運動によるカロリー消費量は運動量によって変わりますが、HIITに体脂肪を落とす特別な効果があるわけではありません。

減量には食事管理が必要

HIITでも有酸素運動でも、ある程度カロリー消費量を増やすことはできますが、それ以上に食べてしまえば体脂肪は落ちません。確実に体脂肪を落とすためには、なんらかの食事管理が必要になります。

筋トレと同時に行う場合は注意が必要

HIITでも有酸素運動でも、筋力トレーニングと同時進行で行う場合はいくつかの注意点があります。各々の目的に合わせて次のようにしてみてください。

  • 筋トレによる身体づくりを優先したい人
    HIITや有酸素運動を筋トレのプログラムに追加する必要はないかもしれません。筋力トレーニングに加えてHIITや有酸素運動を並行して行うと、筋トレからの回復に支障が出る心配があります。また、筋力や筋肉量の伸びといったトレーニング効果を抑えてしまう可能性もあります。目的に合わず遠回りになる可能性も出てきますので、基本的には筋力トレーニングと食事管理に専念するのが確実です。
  • 心肺機能を高める必要のあるスポーツ競技者
    HIITが心肺機能を鍛えるのに有効であることは別のメタ解析によって示されているので、活用できる場面はあるかもしれません。有酸素運動よりも時間効率が良いのが特徴です。実際にどう取り入れるのが良いかは、ご自身の競技でどういう体力要素(筋力、筋肉量、体脂肪レベル、心肺機能など)がどれだけ必要になるかで変わってきます。ご自身のスケジュールや回復力に合わせて頻度を調整していきましょう。

好みや体力レベルに合わせて運動を選ぶ

HIITは有酸素運動よりも体脂肪を落とす効果が6倍も高いと宣伝されることがあります。しかし、実際にはHIITを行うことで魔法のように体脂肪が消えてしまうということはないので、今回は注意をうながすという意味で記事としてまとめました。ただ、この記事ではHIITをやっても無駄だということを言いたいわけではありません。

HIITを楽しいと感じる人もいますし、実施する時間が短くても心肺機能を高められることが魅力的に感じる人もいます。反対に、HIITを行うことでキツすぎて続けるのは無理と感じる人もいれば、めまい、吐き気、嘔吐といったことを経験する人もいます。

最終的にはご自身の目的、好み、体力などに合わせて運動を選ぶのが良いと思います。

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カナダ・バンクーバーで活動中のパーソナルトレーナー&指圧セラピストです。科学的根拠に基づくフィットネス指導をモットーとし、筋力トレーニング・栄養指導・コンディショニング指導の三本柱を軸に、パーソナルトレーニング指導をしています。
AthleteBody.jpでは、日本語としてはなかなか入ってきづらい英語圏の最新フィットネス情報のうち、皆様のフィットネスライフに特に役立つものを厳選して発信していきます!よろしくお願い致します!
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