筋肥大ペースの遺伝的個人差

筋肥大ペースの遺伝的個人差 AthleteBody.jp

筋力トレーニングを行なったときに、どれだけ筋肉を増やすことができるかには大きな個人差があります。

以前に、「遺伝的に生まれ持った筋肉量の限界とは?」の記事で、遺伝的に非常に恵まれた人がドラッグフリーで到達できる筋肉量の限界について取り上げました。体質的に筋肉を増やしやすい人が何年にもわたってトレーニングを続けた場合に、どのくらいまで筋肉を増やせるかということです。こういう条件に当てはまるのはごく一部の限られた人で、大多数の人にとって現実的ではありません。

今回は、筋肉が増えやすい体質の人と、増えにくい体質の人では、実際にどの程度の個人差があるのかについて考えます。この記事は情報量が多く複雑な内容なので、情報量を40%程度削ったバージョンを作りました。筋肥大に関連の高い部分に絞って読みたい方はこちらをご覧ください。

=== ここからフルバージョン ===

遺伝というのはデリケートな話題です。遺伝について語ろうとすると、私たちの生き方について最も根源的な部分に目を向けることになり、感情的な議論になってしまうこともあります。

  • 人生における成功とは、どれだけが才能によるもで、どれだけが努力によるものなのか?
  • 自分の達成できる結果は、どれだけ自分でコントロールできるものなのか?
  • 自分の人生は本当に自分が決めるものなのか、自分のDNAと環境が決めてしまうものなのか?

少なくともアメリカでは、科学者でさえも遺伝が運動パフォーマンスに与える影響を研究することに積極的ではなく、政府もそういった研究に積極的に資金提供しようとしません。それだけデリケートで扱いづらいテーマだということでしょう。

科学者や政府関係者に限らず、私たちはみんなこのテーマについて、大なり小なり自分なりの信条を持っていたり、場合によっては偏見を持っていたりすると思います。そして、遺伝に限らず議論の多いテーマでは起こりがちなことですが、最も極端な見方が、最も声高に叫ばれるように思えます。

私たちの文化には「努力がすべて」という考え方が深く根付いています。すべての人は同じ位置から平等にスタートを切り、一生懸命努力をした者だけが一流になることなることができる。成功も失敗もすべて、毎日の自分自身の選択の積み重ねによって決まるという考えです。

それに対して、人の生き方は生まれ持った遺伝子と育った環境によって決まるとする遺伝子決定論というものがあります。自分では自分の意思で人生を切り開いているように感じていても、実際には遺伝子と環境に操られているだけであるという考え方です。

この二つの考え方はどちらも極端なもので、おそらく大多数の人の見方は、その間のどこかに落ち着くと思います。この記事では、自分自身ではコントロールできない要因が筋力トレーニングの成果にどれだけ影響するか、そしてその影響をどう受け止めるべきかを考えたいと思います。

まず、大人になって私たちの身体が筋力トレーニングに対してどう適応するかを決める要因は複数あり、この記事では以下をまとめて「遺伝的要因」として扱います。

  • 個別の遺伝子
  • ゲノム
  • 生まれる前の子宮内の環境
  • 幼少期の環境

生まれる前の子宮内や幼少期の環境は、筋力トレーニングに対する適応に影響を及ぼします。厳密には遺伝的要因ではありませんが、大人になってから変えることのできない要因という意味では同じで、ここでは厳密な区別は重要ではありません。

ヒトの遺伝子は99.9%共通

遺伝的要因がトレーニングへの適応に大きく影響するという考えに抵抗を感じる人は少なくありません。多少の個人差はあっても、そこまで違わないだろうということです。

ほとんどの教科書では、ヒトの遺伝子は99.9%共通という数字が使われています。ちょっとした豆知識を紹介すると、ヨーロッパ人の祖先はネアンデルタール人の遺伝子を1.5~2%受け継いでおり、一部のアボリジニや太平洋諸島の人々はデニソワ人の遺伝子を~6%程度受け継いでいます。しかし、ネアンデルタール人やデニソワ人と現生人類の遺伝子は非常に似通っており、さらにそこから10万年以上かけて交配や進化があったことを踏まえると、大きな違いにはならないと考えられます。

ヒトの遺伝子は大部分が共通なのであれば、私たちはみんなほぼ完全に同じはずだということになります。どういうことでしょうか?

遺伝子が共通であるというのは、体内で同じ種類のたんぱく質を作ることができるということです。例えば、温血動物で出産をする哺乳類は、生物としての機能が似通っていて、同じ種類のたんぱく質をたくさん作っています。実際の外見的な違いや身体的な違いは非常に大きいですが、細胞レベルでは共通することが非常に多いということです。こういった細胞レベルでの共通点は、代謝、消化、免疫機能、繁殖、呼吸など、生物として根本的な機能に関わるものです。これらの機能について、ヒトは同じ遺伝子を持っていて、他の哺乳類とも多くを共有しているということです。

ただし、実際の外見や機能については、少しの遺伝子の違いが非常に大きな違いになって表れます。例えば、ヒトはチンパンジー、ゴリラ、バブーンといった霊長類と97~99%の遺伝子を共有しています。さらに、マウスとは92%、ハエとは44%、イースト菌とは22%の遺伝子を共有しています。つまり顕微鏡で見るような細かなレベルでは、私たちはチンパンジーと比べて1%、マウスと比べて8%しか変わらないということになります。

しかし、ひとつの生命体として全体を見たときには、私たちとチンパンジーの間には1%以上の違いがあり、マウスとの間には8%以上の違いがあるということに異論のある人はいないでしょう。DNAにある小さな違いは、私たちの外見、機能、思考などに大きな違いとして表れます。これはヒト同士でも言えることで、たった0.1%の違いが大きな違いとして表れます。

図1 遺伝的個人差 AthleteBody

△ 0.1%が大きな違いを生む。Credit

さらに、ヒトの間では99.9%共通である遺伝子にも「型」という種類があり、同じ遺伝子でも型によって機能の仕方にちがいが出てきます。例えば、爆発的パフォーマンスに影響するATCN3という遺伝子があります。ある型のACTN3では爆発的パワー系パフォーマンスにプラスの影響があり、ちがう型ではマイナスの影響があります。(ただし、有酸素系パフォーマンスに好影響がある可能性があります。)これまでにこのような遺伝子が22確認されており、それぞれの遺伝子の型によって筋力やパワーにプラスやマイナスの影響があったり、影響がなくなったりします。

同じ遺伝子に型の違いが存在するだけでなく、同じ遺伝子を持つ数にも違いが存在します。例えば、唾液中のアミラーゼ(食べ物を噛むときにでんぷんを分解する酵素)に関連する遺伝子は、ほとんどの人に共通ですが、その遺伝子をどれだけ持っているかには個人差があります。

そして、この遺伝子の数が多い方が肥満になるリスクが低いという関連性が見られています。この遺伝子の数が4個以下と少なかった人は、9個以上と多かった人と比べて、肥満のリスクが8倍にもなりました。この遺伝子を多く持ち、唾液中のアミラーゼの多い人は、食べ物を噛むときにでんぷんを効率的に分解することができ、そのおかげで満腹感が得やすかったり、血糖値やインスリンの分泌が安定しやすかったりする可能性が考えられます。

また、同じ遺伝子の同じ型を同じ数だけ持っていたとしても、その遺伝子が実際にどのような働きをするかには生活スタイルやその他の後天的要因が影響してきます。

トレーニングに対する筋肥大の個人差

ひとことで言うと、筋肥大の個人差は非常に大きいです。

まず、トレーニングをしていない人同士でも筋肉量にちがいがあるのは分かりやすいと思います。この個人差の80%程度が遺伝的要因で説明可能です。もちろん、身長と体重が大きい方が除脂肪体重も大きくなります。身長と体重も遺伝的要因の影響を強く受けますが、それを考慮しても、体重に対する除脂肪体重の個人差の約50%が遺伝的要因によるものです。

その他の身体能力に関わる要素にも遺伝が強く影響します。例えば、遅筋や速筋と言われる筋線維のタイプの比率にも個人差があり、これは45%程度が先天的な遺伝によって説明可能なようです。さらに、筋線維タイプに影響する後天的な要因は、主に幼児期に起こるもので、やはり大人になってからコントロールすることができないものです。

そして、ここに筋力トレーニングが入ると、個人差はさらに大きく開いていきます。

研究1:大規模な腕のトレーニング研究

この研究では、585人の被験者を集め、利き腕ではない方の腕を鍛えるトレーニングを12週間行ってもらいました。トレーニングはカール系種目とトライセップエクステンションを6セットという内容です。トレーニング頻度は論文に明記されていませんでしたが、おそらく週1回だったと考えられます。

12週間のトレーニングのあと、被験者の上腕二頭筋は平均19%大きくなり、アームカールの1RMは平均54%伸びました。しかし、各個人の変化に目を向けると、非常に大きな幅がありました。この研究に参加したのはトレーニング習慣のない人たちでしたが、最も変化の大きかった人では上腕二頭筋が59.3%も大きくなった一方で、上腕二頭筋が小さくなった人も数人いたのです。

図2 上腕二頭筋の筋断面積の伸び幅 AthleteBody

筋力の変化を見ると、アームカールの1RMが250%も伸びた人がいた一方、まったく重量が伸びなかった人が数名いて、筋肉量の変化以上に大きな個人差が見られました。

研究2:脚のトレーニング研究

この研究では、やはりトレーニング習慣のない被験者を66人集めて、もう少しキツい脚のトレーニングを行いました。スクワット、レッグプレス、レッグエクステンションを8~12回×3セット、限界ギリギリまで挙上するトレーニングを週3回、目標回数がこなせたら重量を増やすという内容で16週間行われました。

16週間のトレーニングのあと、被験者は3つのグループに分けられました。

  • 上位グループ:筋肉の増え幅が大きかった25%(17人)
  • 中間グループ:筋肉の増え幅中間だった50%(32人)
  • 下位グループ:筋肉の増え幅が小さかった25%(17人)

下位グループの被験者の結果を平均すると、筋線維が目立って大きくも小さくもならないという結果になりました。
中間グループの被験者は、筋線維が平均28%大きくなりました。16週間のトレーニングではまずまずの結果です。
上位グループの被験者は、筋線維が平均58%大きくなりました。中間グループの被験者の約2倍にもなる結果です。

さらに、上位グループでは、上位グループの他の被験者と比較しても筋線維の成長が突出して大きな被験者がひとりいました。

図3 外側広筋の筋繊維の断面積の変化の個人差 AthleteBody

トレーニング開始時点でのこの人の筋線維の断面積が上位グループの平均値あたりだったとすると、この人の筋線維は16週間のトレーニングで75~80%も大きくなったことになります。

筋力の変化を見ると、この研究ではグループ間で大きな違いは出ませんでした。下位グループと中間グループのレッグエクステンションの1RMは約35~38%伸び、上位グループの伸びは約45%になりました。上位グループの被験者は中間グループの被験者よりも筋線維の成長幅が約2倍ほど大きく、下位グループの被験者の筋線維はほとんど大きくならなかったのにもかかわらず、挙上重量の伸び幅の違いはずっと小さなものになりました。

それよりも重要なのが、各グループでの挙上重量の伸び方のパターンです。トレーニング開始から8週間の時点で、すべてのグループで重量の伸び幅は似通っていました。しかし、下位グループでは、重量が伸びた分の80%が前半8週間に集中しており、その後の8週間では重量に大きな伸びはありませんでした。一方、中間グループと上位グループでは、前半8週間で伸びた分は全体の2/3程度で、後半8週間でも着実に重量を伸ばすことができています。

図4 レッグエクステンション1RM重量の伸び幅 AthleteBody

トレーニングを始めてすぐの段階では、神経系の適応が進むことで筋力が伸びていきます。筋肉量が増えないわけではありませんが、それ以上にいまある筋肉を使って力を出すのがうまくなっていくということです。この研究の前半8週間で、下位グループが他の2グループと同じペースで筋力を伸ばすことができたのは、筋肥大が起こっていないことがこの時点では大きな問題にならなかったからです。しかし、後半8週間では、筋肥大が起きた2グループのみが良いペースで着実に挙上重量を伸ばすことができたということです。

この研究に参加した被験者には、若い男性・女性(20~35歳)と年配の男性・女性(60~75歳)がいました。筋肉が大きく増えた上位グループは若い男性で、筋肉が増えなかった下位グループは年配の被験者だと考えたくなるところですが、実際には必ずしもそうではありませんでした。

たしかに若い男性は中間グループか上位グループに多い傾向はあり、年配の被験者の38%は下位グループに入ったものの、すべてのグループに各年齢・性別の組み合わせが少なくとも1人は存在し、各年齢・性別の組み合わせのおよそ半数は中間グループに入る形になりました。つまり、すべての若い男性が必ずしも筋肉を大きく増やして、年配や女性の被験者が筋肉を増やせないという結果ではなかったのです。

また、この研究では、トレーニング量、強度、実際のトレーニングの参加頻度などについても報告されていましたが、3グループ間に違いはありませんでした。つまり、筋肉を大きく増やした被験者は、単に他の被験者よりもトレーニングを頑張った成果が出たのだと考えることもできません。

研究3:栄養管理をしたトレーニング研究

この研究でもよく似た傾向が見られます。被験者の栄養摂取量についてのデータを取った上で、筋肉量と筋力の変化を調べた貴重な研究です。

この研究では、56人の被験者の内、12週間のトレーニングによる除脂肪体重の増え幅の大きかった上位20%と小さかった下位20%を比較しました。

図5 12週間での除脂肪体重の増え幅 AthleteBody

上位グループの除脂肪体重の増え幅は、下位グループの約4倍になりました。遅筋線維の増え幅は上位グループで16%、下位グループで6%、速筋線維は上位グループで26%、下位グループで8%という増え幅になりました。

筋力の伸び幅については、上で紹介した研究と同じようにグループ間での違いがずっと小さくなりました。レッグプレスとレッグエクステンションの挙上重量は上位グループの方が少しだけ伸び幅が大きくなりましたが、やや大きく違いが出たレッグエクステンションでも上位グループ72%に対して下位グループ59%で有意差には至りませんでした。

筋力トレーニング以外に表れる個人差

研究4:心肺機能の個人差

トレーニングに対する反応の違いがあるのは、筋力トレーニングに限った話ではありません。複数の研究施設を使った大規模な研究で、心肺機能の適応にも非常に大きな個人差があることが見られています。

この研究では、運動習慣のない481人の被験者に、心肺機能を鍛えるトレーニングを20週間行ってもらいました。トレーニングの前後を比較して、最大酸素摂取量の伸び幅は平均でおよそ300~450ml/分になりました。しかし、被験者の中には、最大酸素摂取量が少し落ちた人もいれば、1000ml/分以上と平均の2倍以上の伸びを示した人もいたのです。

図6 20週間での最大酸素摂取量の伸び幅 AthleteBody

遺伝的要因はダイエットにも影響する

肥満は遺伝的要因が大きく影響します。ここでも遺伝子の他に、妊娠中の胎内環境、幼児期の生活などが関係しています。これまでの研究で、体重や体脂肪の増え方には、3〜10倍程度の個人差があり、双子は似通った増え方をする傾向が見られています。

例えば、この研究では、被験者に1日あたりのカロリー収支が計算上1000kcalプラスになる食事を84日摂ってもらいました。一部の被験者は、基礎代謝とカロリー摂取量から想定される分(13.3kg)きっちり体重が増え、お腹まわりの体脂肪も大きく増えました。しかし、同じ実験に参加した被験者の中には、体重の増え幅が4.3kgにとどまり、お腹まわりの体脂肪もまったく増えなかった人もいたのです。

遺伝的な体質の違いがあっても、体重の変化はカロリー収支で決まるということは変わりません。体重の変化に個人差があったのは、おそらく運動以外で消費するエネルギー量に人によって大きな違いが出たからだと考えられます。

他の研究では、カロリー収支が釣り合うように食事を摂って、そこにサイクリングを加えることでカロリー消費量を増やしたところ、お腹まわりの体脂肪の落ち方には5倍の違いが出たという報告もあります。

トレーニング内容が自分に合っているか

ここまでに紹介した研究1〜4では、すべての被験者が同じトレーニングを行いました。この4つの研究の結果からなにを学べるかを考えるにあたって、このことは大きな弱点になります。

これらの研究では、研究で使われた個別のトレーニングプログラムに対する被験者の反応にどの程度の個人差があったかを知ることはできます。しかし、これらの研究の被験者がトレーニング全般に対してどの程度の反応を示すかということまで答えを出すことはできません。

これらの研究では、筋肉量、筋力、持久力が伸びなかった被験者がいました。この人たちが必ずしも体質的に筋肉量、筋力、持久力を伸ばすことができないというわけではありません。これらの研究から言えるのは、それぞれの研究で使われたトレーニングプログラムでは、この人たちに変化が見られなかったということまでです。

長くジム通いを続けていると分かることですが、どういうスタイルのトレーニングで良い結果が出るかには、人によって違いがあります。これまでのトレーニング経験、生活の中でのストレス、睡眠時間、カロリー収支がプラスかマイナスか、十分なたんぱく質を摂れているかといった要素が影響してきます。これらはすべての人に重要で、どういうトレーニングをすべきかや、どういう結果が得られるかに影響するものです。しかし、こういった要素だけで個人差のすべてに説明が付くものではなく、もっと根本的なレベルで、人によってトレーニングへの反応の仕方に違いがあり、どういうトレーニングで結果が出るかにも個人差があるものです。

多くの人にとって効果の高いトレーニングや、効果の低いトレーニングというのは確実に存在します。トレーニングに関する科学的知見にあたると、こういうものを学ぶことができます。また、トレーニング指導者は、基本となるトレーニングの枠組みを持っていて、自分の指導するクライアントの多くがどういう反応をするかを見ながら微調整を加えるものです。つまり、多くの人や多くの状況にとってベストであったり、少なくともベターになるものがあって、このサイトでも基本的にそういうトレーニングに関する情報を掲載しています。

しかし、多くの人にとって効果的なトレーニングがあっても、すべての人がそれで良い結果を出せるわけではありません。人によって高回数が合う場合もあれば、低回数が合う場合もあります。いろんなトレーニング種目を取り入れてうまくいく人もいれば、種目数を限定する方がうまくいく人もいます。高頻度のトレーニングがうまくいく人もいれば、そうでない人もいます。こういう個人差については、まだ十分に研究が行われていませんが、いくつか紹介します。

研究5:ホルモン分泌に見る個人差

この研究では、少なくとも2年以上のトレーニング経験のある被験者に、次の4種類のトレーニングプログラムを行なってもらいました。

  • プログラム1:1RMの85%の重量で5回×3セット(セット間休憩は3分)
  • プログラム2:1RMの70%の重量で10回×4セット(セット間休憩は2分)
  • プログラム3:1RMの55%の重量で15回×5セット(セット間休憩は1分)
  • プログラム4:1RMの40%の重量で5回×4セット(セット間休憩は3分)

それぞれのプログラムを実施した後、被験者のコルチゾルとテストステロンの分泌量が調べられ、コルチゾルとテストステロンの分泌量の比率が求められました。トレーニングに対するホルモン分泌の変化は被験者によって異なり、それぞれのプログラムで、テストステロンの比率が最も高くなった人も最も低くなった人もいました。

この研究では、まず、各被験者にとってコルチゾルに対するテストステロンの比率が最も高くなったプログラムを3週間実施してもらいました。次に、コルチゾルに対するテストステロンの比率が最も低くなったプログラムを3週間実施してもらいました。

研究期間全体を通して見ると、テストステロンの比率の高かったプログラムでハッキリと良い結果が見られました。

この研究では、テストステロンの分泌量がプログラム4で最も大きくなり、プログラム2で最も小さくなった被験者が2名いました。そして、この2人は実際にプログラム2では筋力が伸びなかったのに対して、プログラム4では筋力が伸びるという結果になりました。(これは研究者に直接連絡を取って確認しました。)

基本的にトレーニング量が多くなるとトレーニング効果も伸びるものです。プログラム2とプログラム4を比べて、多くの人にとって大きな効果が期待できるかというと、まちがいなくプログラム2です。プログラム4の「1RMの40%の重量で5回×4セット」というのはトレーニングした内に入るかどうか微妙なくらいの内容です。

ただ、この研究は期間が短く、この結果だけを見てなにかハッキリした結論を出すことはできません。

研究6:遺伝子の型に見る個人差

この研究では、ACEという遺伝子の特殊な型を持つ人は、筋力トレーニングを1セットだけ行う場合と、複数セット行う場合で同じように筋力を伸ばせることが見られました。対して、一般的な型のACE遺伝子を持つ人は、複数セットを実施した方が良い結果につながる傾向が見られています。

さらに最近では、遺伝に関する情報に合わせてトレーニングプログラムを変える研究も行われています。これを研究6とします。

この研究では、被験者を2つのグループに分けて8週間の筋力トレーニングが行われました。ひとつの被験者グループにはサッカー選手、もうひとつのグループには、その他いろいろなスポーツの選手が集められました。そして、これまでにパワー系パフォーマンスと持久系パフォーマンスに関連があると認められた15の遺伝子に注目し、被験者がそれら遺伝子のどの型を持っていて、遺伝的にパワー系であるか、持久系であるかが調べられました。

8週間のトレーニングの開始前と終了後に、どれだけのパワーを発揮できているかを調べるジャンプテストと、持久力を調べる3分間のサイクリングテストが行われました。

この研究で行われたトレーニングでは、1RMの30%で高回数か、1RMの70%で低回数という2種類のプログラムが使われました。

両グループの被験者の半分が高回数のトレーニングを行い、もう半分が低回数のトレーニングを行いました。こういう設定の背景には、遺伝的体質に合ったトレーニング内容を選ぶことでより良い結果につなげられるのではないかという考えがありました。つまり、遺伝的にパワー系のアスリートは低回数のトレーニングが良い結果につながり、遺伝的に持久系のアスリートは高回数のトレーニングが良い結果につながるのではないかということです。

そして、8週間のトレーニングで研究者の予想に合った結果が見られました。自分の遺伝的傾向に合ったトレーニングを行ったアスリートは、合わないトレーニングを行ったアスリートと比べて平均3倍近い伸びを示しました。

図7 8週間でのパフォーマンスの伸び幅 AthleteBody

ジャンプテストとサイクリングテストのパフォーマンスの伸びが大きかった被験者、中程度だった被験者、小さかった被験者に分け、その内訳が調べられました。その結果、ジャンプテストとサイクリングテスト両方において、自分の遺伝的傾向に合ったトレーニングを行なった被験者が占める割合は、伸びの小さかった被験者の20%以下、中程度の伸びを示した被験者の半数程度、大きな伸びを示した被験者では80%以上にもなりました。

この研究については、注意をしておくべきことがあります。この研究では、被験者の遺伝的特徴を調べるために一般の営利企業が特許を持つアルゴリズムが使われており、このアルゴリズムの妥当性を調べることもこの研究の目的のひとつでした。また、この研究論文の筆頭著者は、この企業のスポーツパフォーマンス部門に所属しています。つまり、このアルゴリズムの有効性が研究によって示されれば、この企業のビジネスに大きなプラスになるということであり、今回の研究結果はその筋書きどおりになっているという見方もできます。加えて、この研究は期間中に多くの被験者が離脱しており、これも不自然だと見ることもできます。

こういった注意点がある一方で、この研究では異なる被験者を用いて実験を2回行い、よく似た結果が得られています。さらに、この研究論文の著者の一人であるJohn Kielyはコーチとしても研究者としても広く信頼されている人物です。もし、この研究の裏側に怪しいビジネスの影響があるとすれば、彼が論文の執筆に協力するとは考えにくいです。

ここまでの話で重要なポイントは、トレーニングでどれだけの効果を得られるかは人によって違うということはもちろん、どういうトレーニングで効果を得られるかも人によって違うということです。これは、もうずっと前からコーチやアスリートが現場で目にしてきたことですが、研究の場でも徐々に確認されつつあります。少なくとも、ここに紹介したような研究が出はじめていることは事実で、おそらくこれからもこういう報告が増えてくるでしょう。

短期の研究と長期の現実

ここまでに紹介したのは、すべて短期間の研究で得られた結果であることに注意してください。長いものでは16~20週間程度の期間を掛けた研究もありますが、トレーニングを続けることで起こる身体の適応は何十年というスパンで考えるものです。

ここまでに紹介した研究結果から、短期間のトレーニングへの身体の適応にどのくらいの個人差があるかを知ることはできます。しかし、長く続くトレーニング人生全体でどのくらいの筋肥大を期待できるのかを知るにはあまり参考になりません。

長いスパンで見た筋肥大には特に重要な要因が4つあり、ここでも遺伝的要因が強く影響していると考えられます。

  • 骨格のサイズ
    骨格の横幅や厚みが身長と同じくらい遺伝的要因の影響を受けると仮定すると、骨格のサイズの個人差の70~95%程度が遺伝的要因で説明が付くということになります。
  • 生まれ持った筋線維の数
    筋線維の数は、遺伝的要因と妊娠中の胎内環境によって決まり、生まれた後は基本的に変わりません。筋線維の数が増えるというエビデンスもあるにはありますが、実質的には生まれたときから、高齢になって徐々に筋線維の数が減り始めるときまで、筋線維の数は変わりません。生まれ持った筋線維の少ない人は、それだけ最終的に増やせる筋肉量が抑えられることになります。
  • トレーニングに対する適応
    トレーニングで起こる筋肥大の個人差はすでに紹介したとおりです。現在までの研究から確実に言えることは、特定のトレーニング方法でどれだけの効果が得られるかには個人差があるということまでですが、具体的な方法を問わず、トレーニング全般で良い反応を示す人とそうでもない人がいるのは否定しがたい事実です。
  • ステロイド使用
    ホルモン摂取に対する身体の反応も遺伝的な個人差があるようです。また、当然ながら摂取量を増やすとその効果も大きくなります。トレーニングキャリア全体で見ると、筋肉量の増え幅を概ね2倍程度に増やせるようです。

長い期間を掛けて最終的に到達できる筋肉量に遺伝的要因がどれだけ影響するのかを本当に突き止めるには、各個人に最適なトレーニングと栄養管理プログラムを設定し、20年間プログラムを確実に実践し続けるランダム化比較試験(研究手法の一種)が必要になります。そんな研究は現実に起こり得ません。

自分の遺伝的体質(才能)を知る術は?

ここまで読み進めて、筋肉量や筋力を増やすという意味で自分自身の遺伝的体質がどうなのか気になる人もいると思います。少なくとも、手軽にかつ正確にその答えを知る術はありません。

遺伝子検査でハッキリ答えは出ない

遺伝子検査を行うのはひとつの選択肢ではあります。しかし、これまでにパフォーマンスに影響を与えると確認されている遺伝子のほとんどは、持久力とパワー発揮に関連したもので、必ずしも筋肉量や筋力に関連しているものではありません。たしかに、パワー発揮には筋肉量と筋力も関連しますが、これまでに確認されている遺伝子の多くが関連するたんぱく質は、筋肉量と力発揮のキャパシティに関係なく、パワー発揮に影響を与えるものです。

これらの遺伝子の多くは、ランニングやサイクリングといった持久系競技で高いレベルにいるアスリートや、スプリント、ジャンプ、投てきといったパワー系競技で高いレベルにいるアスリートの遺伝子プロファイルを調べることで特定されてきました。それと比較して、筋肉量と筋力に直接影響する遺伝子に関しては、現時点で分かっていることは限られています。

現時点で、筋肉量と筋力に影響すると分かっている遺伝子はあるものの、個々の遺伝子の影響の程度は、ほとんどの場合で2~3%以下と非常に小さいものです。また、現在までにパワーと筋力に影響すると分かっている遺伝子は22ありますが、それらの遺伝子にはパフォーマンスに良い影響を与える型や悪い影響を与える型があります。遺伝子検査を受けると、ほぼ間違いなくそれぞれの遺伝子のいろいろな型が入り混じっているという結果が出ます。

これらの22の遺伝子の発現頻度について現在確認されているところでは、ほぼすべての人が、8~14の遺伝子でパフォーマンスに良い影響を与える型を持っているようです。これはハッキリと良いとも悪いとも言えないところです。

ちなみに、ちょっとした豆知識ですが、22の遺伝子すべてで良い型を持つ確率はおよそ2000兆分の1になります。言い換えると、筋力とパワー系パワーフォマンスに完璧な遺伝的体質を持った人というのは、ほぼ間違いなく人類の歴史上で存在したことがないというレベルになります。筋力とパワー系パフォーマンスに影響する遺伝子は、今後も発見されていくはずなので、この確率はさらに小さくなっていくということです。

遺伝子の中には単独で大きな影響を持つものもあります。しかし、影響の強い遺伝子においてパフォーマンスに良い型を持っている場合でも、それだけで良いアスリートになれるとは言い切れませんし、良い型を持っていないから良いアスリートになれないと言い切ることもできません。

例えば、先に紹介したACTN3という遺伝子は、速筋線維が素早く収縮するのに非常に重要なたんぱく質を作るのにかかわっています。パフォーマンスに影響する遺伝子は他にもあるわけですが、それらの遺伝子は個別のシグナル伝達経路に少し影響するといった働きをするのに対して、ACTN3という遺伝子は、筋肉をどれだけ爆発的に収縮させることができるかに直接影響するたんぱく質を作る働きをします。つまり、ACTN3はパワー系パフォーマンスに非常に重要な遺伝子です。現在までにパワー系パフォーマンスに影響すると分かっている遺伝子の中で、最も重要なものだと言えるでしょう。

そして、レベルの高いパワー系アスリートの多くは、実際にこの遺伝子を2個持っています。しかし、この研究では、国を代表して国際大会に出場するレベルのスプリンターのを調べたところ、8%がACTN3の遺伝子を持っておらず、39%は1個しか持っていなかったという結果が出ています。この研究の被験者の中で、オリンピック出場者は全員、ACTN3を少なくとも1個持っていました。このことから、ACTN3を持っていないと、オリンピックレベルのスプリンターになるのは難しいとは言えるかもしれません。しかし、パワー系パフォーマンスに最も重要なはずの遺伝子を持っていなくても、8%は国際大会レベルのスプリンターにはなれたわけです。同じように、ACTN3を2個持っていれば、少し望みは大きくなるかもしれませんが、それだけでスプリンターとして成功できるとは言えません。

次に、この研究では、高レベルのボート競技選手とスポーツをしていない人の遺伝子プロファイルを比較しました。高い成績を残しているボート選手はスポーツをしていない人と比較して、パフォーマンスに良い影響のある遺伝子の型を高い頻度で持ってはいました。その差は、決して大きなものではなく、すべての遺伝子で良い型を持っているような場合でもなければ、ハッキリした違いにならない程度でした。

全体として見ると、数万円のお金を掛けるのが惜しくなければ、遺伝子検査はカンタンな方法ではありますが、おそらく検査結果が、自分の持つ可能性についてハッキリした答えをくれるとは期待しない方が良いでしょう。

筋肉を切り取って調べる筋生検は非現実的

他の選択肢として、生体組織検査があります。トレーニングの前後で筋肉の組織を採取し、遺伝子の発現衛生細胞の活動や増殖microRNAのレベルなどの変化を調べるという方法です。これらの要因は筋肉の成長を中程度から高いレベルで予測することができるとされています。

ちなみに、このビデオで筋生検がどういうものか見られます。もちろん、大多数の人はここまでやろうと思わないでしょう。しかし、なにがなんでも答えが欲しいと思うのであれば、トレーニング後48時間の筋たんぱく質の合成率を測って、平常時の合成率と比べるという選択肢もあるかもしれません。研究施設に何度か通うことが必要になり、トレーニングを少なくとも3週間以上継続している状態というのが条件になりますが、どの程度のペースで筋肉を増やしていけるか、それなりに正確な目安を知ることはできるかもしれません。

ほとんどの場合、筋生検から得られるデータと筋たんぱく質合成率は、少なくとも遺伝子検査よりも正確だと言えますが、遺伝試検査よりもずっと大変です。必要な時間や費用を考えると、大多数の人にとって現実的な選択肢とは言えないでしょう。

生まれつき華奢かガタイが良いか

トレーニングを始める前にどのくらいの筋肉量があったかや、トレーニングを始めて数ヶ月のあいだにどのくらい挙上重量が伸びるかを見て、どのくらい筋肉量や筋力を伸ばせる「才能」があるかを推し量ろうとする方法があります。「方法」と呼べるようなものでもありませんが、遺伝子検査や生体組織検査よりもはるかに一般的ではあります。

しかし、トレーニングを始める前の筋肉量や、トレーニングを始めて数ヶ月の挙上重量の伸びを見ても分かることはほとんどありません。

  • 先に紹介した研究1では、開始時点での筋肉量と、筋肉の増え幅に関連は見られませんでした。
  • 研究2では、筋肉量の増え幅の大きかった上位グループの被験者と、増え幅の小さかった下位グループの被験者を比べて、開始時点の筋線維の大きさと筋力に違いはありませんでした。
  • 研究3でも、筋肉量の増え幅の大きかった上位グループの被験者と、増え幅の小さかった下位グループの被験者は平均して、開始時点のBMI、体脂肪量、速筋と遅筋の量、レッグプレスとレッグエクステンションの1RMといった項目すべてで違いがなかったのです。つまり開始時点で、身体的な違いはまったく見られていませんでした。

さらに、もうひとつ別の研究を紹介します。分子と遺伝子のネットワークが筋肉の成長に与える影響に関する研究で、被験者は除脂肪体重の増え幅によって4グループに分けられました。トレーニング開始前の除脂肪体重、年齢、速筋、遅筋の測定値などの平均値は上位25%に入った被験者と下位25%に入った被験者の間に違いはありませんでした。さらに、上位25%グループと下位25%グループは男性と女性の比率まで同じという結果になりました。

筋力の伸びについてもよく似た傾向が見られます。研究3では、12週間で上位グループと下位グループの間で筋力の伸びに違いはありませんでした。研究2では、はじめの8週間の筋力の伸びは、上位グループ、中間グループ、下位グループすべてで違いがありませんでした。16週間の期間全体でも、上位グループと中間グループには筋力の伸びに違いは出ませんでした。

研究1では、トレーニング開始前の筋肉の大きさと12週間のトレーニングでの筋肉の増え幅に目立った関連は見られませんでした。さらに、トレーニング開始前の筋力とトレーニング後の筋力の伸び幅には、負の相関関係がありました。トレーニング開始前に筋力の弱かった人の方が大きな伸びを示したということです。これは、筋肥大しやすい体質かどうかと、筋力の伸びには強い関連がなかったと見ることもできます。

全体として、トレーニングを始める前の筋肉量や筋力と、トレーニングでどれだけ伸びるかは完全に別物だと言えるでしょう。本当に高いレベルに到達できるのは、おそらくトレーニングを始める前から筋肉量や筋力が高く、さらにトレーニングで得られる伸び代の大きい人でしょう。しかし、トレーニングを始める前の筋肉量や筋力を見て、トレーニングでどれだけの伸びを得られるかを知ることはできないと言えるでしょう

「自分はトレーニングを始める前はガリガリで、明らかに遺伝的に恵まれていなかったけど、こんなにデカくなった!だれでも頑張ればできる!」という類のストーリーを目にすることがあると思います。ここまでに見てきたデータを踏まえると、これは残念ながら的外れということになります。トレーニングを始める前にガリガリの人も、遺伝的体質という意味では大きな伸び代を持っている可能性は十分にあるわけです。

また、全体を平均して見ると、筋肥大しやすい人も筋肥大しにくい人も、トレーニングを始めてから8〜12週間程度は、よく似たペースで筋力が伸び、その後伸び方の違いが表面化してくるようです。

トレーニングを始めてすぐの数ヶ月で、思うほど挙上重量が伸びなかったとしても、必ずしも伸び代がないとは限らないと言うこともできます。実際には筋肥大しやすい体質なのが、目に見える結果として表れていないだけで、長く続けていくと筋肉量が増えて、大きな重量を挙げられるようになるかもしれません。「ウサギとカメ」の話に例えると、カメのような経過をたどるケースです。言い換えると、ウサギにあたる人もいるわけです。そういうケースでは、トレーニングを始めてすぐの時期に大きく挙上重量が伸びるものの、その後なかなか筋肉量が増えず、挙上重量も伸び悩んでしまうという経過が考えられます。

努力 VS 才能

努力か才能かという議論の答えは、ほとんどの場合で明らかに「両方」なのですが、そうは考えない人もいます。「生まれ持った遺伝的要因なんて、ただの言い訳だ。必死の努力がすべてだ。徹底的にやり込んで頂点に立ってやる」という考え方です。

残念ながら、それが実現する可能性は大きくありません。

練習とパフォーマンスの関係について、さまざまな分野の研究をまとめたメタ解析が最近発表されています。「努力」と「結果」の関係と言うこともできますが、全般的に言ってあらゆる分野で、パフォーマンスの個人差に練習量が与える影響は1/4にも及ばないという結果が出ています。練習や努力はまちがいなく必要ですが、才能に恵まれなければ努力でひっくり返すことはできません。

図8 パフォーマンスの個人差が-練習量で説明できる割合 AthleteBody

繰り返しますが、努力に意味がないということではありません。知識を身につけて効果的な練習やトレーニングに全力で打ち込めば、1段階上に行けると考えると良いと思います。

  • 普通の練習をしていて四流のパフォーマンスであれば、努力次第で三流になれるかもしれません。
  • 普通の練習をしていて三流のパフォーマンスであれば、努力次第で二流になれるかもしれません。
  • 普通の練習をしていて二流のパフォーマンスであれば、努力次第で一流になれるかもしれません。
  • 普通の練習をしていて一流のパフォーマンスであれば、努力次第で超一流になれるかもしれません。

本当の頂点に立つような人は、もちろん努力をしているでしょうが、その前に生まれ持った才能に恵まれていたということです。

さらに言うと、私たちが、どれだけ一貫性を持って練習を続けるかというのも、一定程度遺伝的要因に影響されます。

この記事の情報の活かし方

自分自身のトレーニングと目標の決め方

ここまでに分かっていることをまとめます。まず、同じトレーニングを行っても、どれだけの効果を得られるかには非常に大きな個人差があります。そして、どういうトレーニングで最も効果を得られるかにもおそらく違いがあります。

トレーニングを始めてすぐの段階では、そのプログラムで自分がどれだけの成果をあげられるかを推し量るのに、少なくとも4ヶ月は一貫性を持って続ける必要があります。(トレーニング経験がある人の場合は、もう少し短い期間でそのプログラムが自分に合っているか見当が付くでしょう。)

あるプログラムで良い結果が出なくても、トレーニングのスタイルが変わるとうまくいく可能性は十分にあります。他のスタイルで組まれたプログラムを少なくとも2〜3種類は試してみるべきです。これは、遺伝的に恵まれている人にも当てはまります。どんなスタイルのトレーニングが合うかは人それぞれ違うので、自分に合ったスタイルを見つけるまでいろいろと試してみるのは決して悪いことではありません。

それとは別に、気持ちの持ち方も結果に大きく影響します。

自分には良い結果を出せるという前向きな気持ちで実際にトレーニングを打ち込んでみるまで、自分にどれだけ才能があるかは分からないものです。自分は遺伝的に恵まれていると信じて、少なくとも1年間は一貫性を持って自分にとってキツいトレーニングを続けるまでは、自分が遺伝的に筋力トレーニングに向いているかどうか答えを出すことはできないでしょう。

うまくトレーニングの成果が出ないとき、遺伝的体質の問題だということはたしかにあります。しかし、十分に試してみる前にそう決め付けてしまうと、自分自身の可能性にフタをしてしまうことになります。

自分の限界を感じたら

この記事を読む人の中には、もう何年かトレーニングを続けてきて、「自分は目立って強くデカくなれる体質ではない」と明確に感じている人もいるかもしれません。

そういう人には、とにかくトレーニングを楽しむ方法を探すのが良いのではないかと思います。自分が楽しいと思えるトレーニングのスタイルを見つけて、どんな結果が得られるかよりも、トレーニングの過程を楽しむということです。

筋力トレーニングには、数え切れないほどの効果があります。例えば、認知機能や自己肯定感の向上、死亡リスクの低減などがあげられます。こういった効果は必ずしも筋肥大や筋力向上を前提とせず、トレーニングを行うことそのもので得られるものです。

トレーニングを続けることで得られる効果で最も重要なのは、加齢に伴う体力低下を抑えられることかもしれません。年齢と共に、筋肉量よりも筋力と機能の方が速いペースで落ちていく傾向があります。これには神経系の変化による影響が少しありますが、大部分は筋肉を使わないことによるものです。(そして、使わないことが神経系の変化にもつながっていきます。)トレーニングを続けることで、筋肉量や筋力を大きく伸ばすことにはつながらなくても、いまある筋肉、筋力、機能を維持することには必ず役立ちます。

また、人の遺伝的体質は時間と共に変化することも無視できません。生まれ持った遺伝子の中で、どの遺伝子が働くか、もしくは働かないかというのは環境や生活習慣の影響を受けて変化します。そして、この遺伝的体質の変化に影響を与える要因は、運動をすると良い方向に変化する傾向があります。加えて、遺伝子発現パターン、全身の炎症状態、ホルモン分泌などもトレーニングをすることで良くなることが多いです。

こういった体質の変化が、トレーニングで得られる効果を伸ばしてくれる可能性はあります。これは、まったくの効果を得られない状態からチャンピオンに押し上げてくれるというようなものではないので、過度の期待は禁物です。しかし、短中期的にはほとんど目に見える変化が得られなかった人でも、地道な努力を5年10年と積み重ねることで、十分に胸を張れる結果を得ているケースは多くあります。

遺伝的体質に恵まれた人は、モチベーションを上げるための話なんて必要ないでしょう。存分にデカくなってください。

他の人の成果の見方

まず、トレーニングでなかなか目に見える成果が出ない人を下に見たり、いびったりしないことです。自分の勝手な基準で「強い」や「デカい」と思うレベルに、自分の勝手な基準で決めた期間内に到達していないからと言って、その人は怠けているのだと考えてはいけません。トレーニングは、生まれ持った体質によって結果の出方がまるで違うのです。不公平ではありますが、そういうものです。

また、強くてデカい人の言うことはなんでも正しくて、弱くて小さい人の言うことは聞く価値がないと考えることもできません。

全体として見ると、強くてデカい人は知識も豊富な傾向はあるでしょう。しかし、個人レベルで見ると、それがすべての人に当てはまるとは言えません。目に見えて強かったりデカかったりするわけでない人は、ただ遺伝的体質に恵まれていないだけかもしれないのです。自分より強くないから、デカくないからという理由で、人を判断しないことです。

筋肥大に関わる遺伝的体質のまとめ

生まれ持った遺伝的特徴に加えて、妊娠中の胎内環境や、幼児期の生活環境といった大人になってからどうにもできない要因が、トレーニングを始めたときにどれだけ効果を得られるかに強く影響します。さらに、こういった要因は、どういうスタイルのトレーニングで効果が得られるかにも影響を与えると考えられます。

しかし、自分がどれだけ筋肥大しやすい体質なのかを、手軽にかつ正確に知る術はありません。トレーニングを始める前には筋肉量も筋力も同じレベルの人たちが、同じトレーニングを行なっても、筋肉量と筋力の伸び幅には大きな違いが出てきます。さらに、トレーニングを始めてすぐの時期に挙上重量が伸びるのは、筋肥大よりも、神経系の適応が主に影響しているので、筋肥大の違いが挙上重量の違いになって表れるには3ヶ月以上の時間が掛かります。

自分の体質がどうなのかは、長い期間、真剣にトレーニングに取り組んでみて初めて分かります。

トレーニングをしてどれだけ筋肥大が起きるかは非常に大きな個人差があるので、トレーニングに関してデカい人の言うことはすべて正しいと考えるべきではありませんし、すごい身体をしていない人は怠けているだけだとか、トレーニングについてなにも知らないと考えるべきでもありません。

結局のところ、筋肉を増やしたいと思ったら、いろんなスタイルを試しながらハードなトレーニングを長く続ける以外にできることはありません。最終的にどんな結果になるかは別にして、それが自分の生まれ持った可能性を引き出す唯一の道だということになります。

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