トレーニングを続けていると身体の変化を感じられなくなる時期があるものです。そのときにやりがいを感じられなくなってトレーニングをやめてしまいたくなる人もいれば、限界まで自分を追い込もうとする人もいます。
今回ご紹介するのは後者に当てはまる方です。2021年にAthleteBodyで減量指導をさせていただいたクライアントさんで、お名前を比嘉さんといいます。ボディビル競技をされていますが、最近は行き詰まりを感じられていました。
比嘉さんは、トレーニングを続けているものの筋肉が成長している実感が得られず、コンテスト時の身体にも十分に手応えを感じられずにいました。
ご自身でもなんとか状況を改善しようと、キツいトレーニングで追い込むようなことをしばらく続けてみたものの、身体を痛めただけで成果は見られませんでした。
こんな経緯があって、「自分には才能がないのかもしれない」と、かえって自信をなくしてしまったそうです。
それでもボディビルへの思いを捨てることができず、もう一度コンテストに挑戦したいという思いから、AthleteBodyのパーソナルコーチングにお申し込みいただきました。
ここからは、比嘉さんのコンテストへ向けての減量過程をご紹介してみたいと思います。
比嘉さんという人
コンテストに向けた準備は計画を立てることから始まります。最初のステップとして比嘉さんについてお聞きしていると、ボディビルに夢中になられているのが伝わってきました。
比嘉さんは子供の頃から小柄な体格で、それにコンプレックスを感じられていたそうです。比嘉さんにとって、ボディビルにはそんな自分を変えることができる可能性があって、とても挑戦のしがいがあると感じられているのだと思いました。
コーチング開始前の比嘉さんのトレーニング内容をお聞きすると、非常に大きなボリュームをこなされていました。ここにも比嘉さんのモチベーションの高さが表れていましたが、比嘉さんご自身はうまく成果が見えず、やり方に疑問を感じられていました。
比嘉さんの情熱を結果につなげる案内役になるべく、コーチングをお受けすることにしました。
疲労に悩む日々
比嘉さんに減量プログラムを始めてもらってしばらく、体脂肪を順調に落としていくことができました。
減量生活も快適にスタートしてもらえたのですが、途中から比嘉さんのお仕事が忙しくなり、疲労に悩まれる場面が出てくるようになりました。
比嘉さんはフィットネス施設のスタッフをされており、身体を動かすことが多かったので、それが負担になっていたのでした。
トレーニングに集中できなくなったり、身体に痛みが出たりするようになり、お仕事とのバランスを考える必要がありました。
お仕事の忙しさが落ち着けば疲労は和らぐはずですが、いつ状況が良くなるか見通すことができませんでした。そこで、少しトレーニング内容をゆるめてもらうことにしました。
この時点まで、比嘉さんは次のようなトレーニングをされていました。
- 全身を上半身と下半身に分けてトレーニングする
- それぞれ週2回ずつ鍛える
- 1日に上半身は8種目、下半身は6種目を行う
これを以下のように変えました。
- 全身を上半身と下半身に分けてトレーニングする
- それぞれ週2回ずつ鍛える
- 1日に上半身は6種目、下半身は5種目を行う
トレーニング種目を減らしたのが主な変更点です。トレーニング量を落とし、回復が間に合うようにするのを狙っています。
比嘉さんの競技人生の中で、トレーニング量をここまで減らしたのは初めてのことだったそうです。私がこのプログラムを提案したとき、比嘉さんは「こんなに減らすと筋肉が落ちてしまうのでは」と不安を口にされていました。
これまで比嘉さんはトレーニングを限界までやり込むスタイルを取られていたので、トレーニング量を減らすのは逆方向の提案です。
「ボディビルのためにできることはすべてやる」という意気込みで取り組んでこられたからこそ、心配になったのだと思います。
たしかに減量中に筋肉を維持するためには、筋肉に刺激を与える必要があり、トレーニング量を減らして刺激が弱まると、悪影響が出る可能性はあります。
ただ、このときの比嘉さんにとって重要だったのは、コンテストまで過度の疲労を溜めずに減量をやり抜くことでした。私としては、疲労を抑えることのメリットは大きく、筋量が落ちるリスクは小さいはずだと考えていました。
プログラム変更の狙いをお伝えし、しばらくはこのトレーニングを続けてもらうことになりました。この頃、比嘉さんの身体は次のように変わりました。
写真はコーチング開始から4ヶ月目までの変化です。体脂肪が落ちて筋肉の形が確実に見えるようになってきました。筋肉が目立って落ちている様子はありません。
この期間、疲労は問題にならずにトレーニングを続けることができました。このままコンテストまで同じトレーニングを続けてもらえば大丈夫そうです。
減量の停滞期
トレーニングやお仕事による疲労の問題はあったものの、減量に関しては開始当初から順調で、着実に体脂肪を落とすことができていました。
しかし、コンテストまで残り1ヶ月のところでペースが落ち、コンディションに目立った改善が見られなくなってしまいました。
コンテストの日が迫る中、どうにかして仕上げなくてはというプレッシャーから、比嘉さんは焦りを感じていました。
これまでの比嘉さんは、減量が停滞するとトレーニングや有酸素運動の量を増やしていたそうです。そういうスタイルで乗り切ることはできていたものの、ボディビルに生活のすべてを捧げるような状態になってしまうのが課題になっていました。
比嘉さんは結婚されており、奥さまとの時間を作ることや仕事とのバランスを考えると限界を感じていたそうです。
なんとかして、生活に負担をかけずに停滞を打破する方法を模索します。
コンテストの減量では体脂肪をギリギリまで落とし切ることが求められます。この時点で比嘉さんは体脂肪をあと少しだけ落とせばそこに到達する状態でした。
私としては「ここまで来れば無理に運動量を増やさなくても、食事を少し減らしさえすればコンテストまでに身体を仕上げられる」と考えていました。
カロリー摂取量を少し落としてもらったところ、比嘉さんの身体は次のように変わりました。
写真左の時点で、すでに体脂肪はかなり落ちていますが、写真右では身体の各部の輪郭がさらに明確に出てきています。こういった違いがコンテストでは重要になります。
結果的に、奥さまとの時間や生活に悪影響を出さずに停滞を乗り越えることができました。これでステージに上がる準備は整いました。
2021年6月、比嘉さんは「大阪クラス別ボディビル選手権」というコンテストに出場し、優勝することができました。体重ごとの階級に分かれて競うコンテストですが、大阪は競技レベルが高く簡単に勝てる大会ではありません。
筋肉ひとつひとつが削り出されたかのように見えるほど、素晴らしい状態に仕上げてもらうことができました。比嘉さんご自身もコンディションに手応えを感じ、自信を持ってステージに上がっていただけたようでした。
このコンテストで優勝したことで、2ヶ月後に行われる「関西クラス別ボディビル選手権」という、ひとつレベルが高いコンテストへの出場権を得ることができました。比嘉さんにとって充実した競技シーズンになります。
最後のひと絞り
次のコンテストに向けて、さらに上のコンディションを目指すべく、わずかに残った体脂肪を落とすことに挑戦します。
ここまでは一定のペースを守って体重を落としてきましたが、次のコンテストに向けては食事制限を少しゆるめ、減量ペースを和らげることにしました。これはトレーニングで力を出しやすくしたり、エネルギー不足から筋肉が失われるリスクを小さくするのが狙いです。
コンディションは確実に良くなっていき、わずかに残った体脂肪が落ちているのを感じられました。体重の変化はゆっくりでしたが、これも計画通りでした。
ただ、比嘉さんは「体重が落ちていないと減量は成功しないのでは」と不安を感じられていました。
この時点の比嘉さんは体脂肪がほとんど残っていませんでした。こういう状態になると、体重がわずかに落ちるだけで見た目に大きな違いとなって表れます。減量が進んでいるかを判断するためには、体重の数字は参考程度にしかならず、ボディビル的に見た目が良くなっているかが重要でした。
体重を落とすことを追い求めると、必要以上にエネルギー不足の状態になり、かえって筋肉を失ってしまうリスクもありました。
ただ、ボディビル的な見た目の変化というのは、選手が自分で判断するのは難しいものなのです。毎日鏡で自分の身体を見ても、細かな変化に気づけないこともあります。逆に、とても細かな部分に意識が向いて、全体として良くなっているのか判断できなくなる場合もあります。
そういう状況では体重のような客観的な数字が頼りになることもあるので、比嘉さんが体重の変化が小さいことを心配に思う気持ちも理解できるものでした。
この時点での食事は、確実に体脂肪を落とせる設定になっていました。ゆっくりとした変化ではあるものの、この食事でコンディションが悪化してしまう心配はありませんでした。
そこで比嘉さんには体重を気にせず、見た目の判断も私に任せて、とにかく同じ食生活を続けることに集中していただくようにお願いしました。
減量を続けた結果、2ヶ月で比嘉さんの身体は次のように変わりました。
筋肉の走行方向が透けて見えるようなレベルまで体脂肪を削ぎ落とすことができました。根気よく食事のコントロールを続けていただいたことで、体脂肪がまったく残っていないと言えるレベルまで仕上げてもらうことができました。
これでコンテストの準備が整いました。
2021年8月、比嘉さんは関西クラス別ボディビル選手権に出場し、見事優勝することができました。カッコいい!
2ヶ月前のコンテストと比べて他の選手のレベルも上がっていましたが、そんな中でも比嘉さんの仕上がりの良さは目立っていました。
このあと「関西ボディビル選手権」という、関西No.1を決めるさらにレベルの高いコンテストにも出場されました。このコンテストでは、残念ながら目立った結果を残すことができませんでした。
比嘉さんは最後のコンテストの結果に悔しさを見せていたものの、「人生で最も良いコンディションを作ることができた」とのことで、とても満足してもらえたようでした。
今回、比嘉さんが成功したのは、コンテストまでに十分な期間を取り、減量ペースを決めて計画的に体脂肪を落としたことにあると思います。そして、時間や体力の限界まで自分を追い込む方法を取らなくても、身体を変えていくことはできるのだと感じてもらうことができました。
このことは2021年の競技成績だけでなく、これからも長く続く比嘉さんのトレーニング人生にとって意味のある学びとしていただけるかもしれません。
比嘉さんは「小柄な体格に生まれた自分にはボディビルは向いていないのか」と自信をなくされた時期がありましたが、これからも身体を変えることはできるはずだと前向きになっていただくことができました。比嘉さんが手応えを得てくれたのは私としても本当に嬉しいです。
最後に、比嘉さんご本人の体験談をご紹介します。
比嘉さんご本人の体験談
今まで様々な方のトレーニング指導を受けてきました。どれもとても有益なものでしたが、一昨年結婚したこともあり、ライフスタイルに合わなくなり、継続するのが難しくなってしまいました。
そんなとき、2020年のAthleteBodyさんの大林さんと竹内さんの記事を見て、AthleteBodyのコーチングであれば、ライフスタイルに合わせ、自分の求めている結果が出るのではないかと思い、コーチングを依頼しました。
ただ、仕事がシフト制ということもあり、「どこにトレーニングを組み込むか」、「どう時間を抽出するか」が心配でした。また、食事に関しても、「奥さんにストレスをかけず、継続的に食事をコントロールできるか」を心配していました。
このコーチングでは、「場面に応じた、トレーニングプラン」と「停滞を迎えた時の解決策」の2点を財産として得ることができました。
これまでの減量で停滞がきた時、今まであれば、種目を増やしたり、有酸素を導入、カロリーを減らしたりしていたのですが、本橋さんには、そこを今回コントロールして頂いたのが大きかったと思います。
私は性格上ストレスを溜め込みやすく、仕事での業務でストレスを溜め込んだ時期がありました。その際に、先の疲労やストレスを見据え、今後のために種目を減らし、一部種目変更の指示をいただき、疲労が抜け、仕上がりが加速しました。
その1ヶ月後に、カロリーを減らすよう指示を受けた際も、トレーニングのボリュームをコントロールしていただいたので、特にストレスや疲労を感じることなく、大会を迎えることができ、結果として大阪クラス別で優勝することができました。
更に8月の関西クラス別では、これまでのトレーニングをベースに疲労を溜めないようなプランに変更していただき、目標だった「お尻まで絞り切る」ということができ、過去最高の身体で大会を迎えることができ、優勝することができました。
最後の関西選手権は、目標だった決勝進出まではいけなかったですが、充実した8ヶ月間でした。
今回は奥さんと同居して初めての減量だったのですが、食材の作り置きなどで協力いただき、私が作った食事にも文句を言わず、作ってくれた際には、味付け等工夫してもらったことも減量を通して大きかったです。
そして何より本橋さんには、都度的確な指示をいただき、私自身、勉強になりましたし、目標だった「お尻まで絞りきる」ことができ、心より感謝しております。
自分の目指している身体に近づきたい、ライフスタイルに合わせて、減量や増量をしたい方は是非受講してほしいです。効果を実感していただけると思います。
パーソナルコーチング
AthleteBody.jpではパーソナルコーチングを提供しています。
各個人の現状や目標に合わせてプログラムをお作りするサービスで、ボディビルコンテストに向けた指導も承っております。
パーソナルコーチングの詳細は申込みページでご確認ください。
表記ミス
今まであれば→今までであれば
牽牛星さん、コメントありがとうございます。
ご本人の文章をそのまま掲載することとしたため、誤字についてはご容赦ください。