体脂肪を落とすためにはカロリー摂取量が消費量よりも小さい状態を作らなければいけません。このとき、カロリー計算をして食事量を数字で把握すると、カロリー収支がマイナスになっているかを判断しやすくなります。
ただ、カロリー計算を行ってカロリー収支をマイナスにしているつもりでも体重が思うように落ちていかない人がいます。
これはカロリー計算をするときに計算ミスが起きてしまっているのが原因かもしれません。減量時にカロリー計算がズレるときには、カロリー摂取量を過小評価してしまっていることが多いものです。つまり、自分が思っているよりも多く食べてしまっている人が多いということです。
カロリー計算のズレを減らして減量をスムーズに進めるにはどうしたら良いのでしょうか?
今回はカロリー計算で起こる計算ミスについてお話しします。減量時に思うように体重が落ちていかないときにどうすれば良いかヒントが得られるかもしれません。
カロリー計算ミスはよく起こる
カロリー計算で出された数値が実際の食事量からズレてしまうことは、男性、女性、スポーツ競技者など、さまざまな人を対象とした多くの研究で報告されています。
例えば、この研究では、被験者が自分のカロリー摂取量を計算した数値と実際のカロリー摂取量を比べると次のグラフのようになりました。
被験者が自分で計算した数値よりも実際のカロリー摂取量は約500kcal多くなっていました。減量をする上では、このズレはかなり大きな数字です。
例えば、体重70kgの男性なら1週間に500g落とすくらいの減量ペースが一般的になります。これは1日あたりカロリー収支を500kcalほどマイナスにするということになります。こうして数字にすると、カロリー計算のズレが原因で減量がうまくいかなくなることが分かるかと思います。
AthleteBody.jpで減量指導をさせていただく中でもカロリー計算のズレが問題になることはあり、クライアントさんから「プログラム通りにカロリーを摂っているのに体重が減らない」とご相談を受けることがあります。
実際にはシンプルな計算ミスであることが多いのですが、「減量を続けたことで筋肉が落ちたり代謝が落ちたりしていて、ヤセられない体質になってしまったのではないか」と心配される人もいます。こんな風に悩んだことのある人は少なくないのではないでしょうか。
例えば、2020年にコンテストに向けて減量指導をさせていただいたクライアントさんは、減量が停滞してしまう時期がありました。詳しく状況をお聞きすると、外食が多い生活で脂質の摂取量をうまく把握できていないことが見えてきました。
このケースでは、食事をできるだけ自炊に切り替えて、スマホアプリを使って一定期間いつもよりも厳密に計算を行っていただきました。それからはカロリー摂取量をうまくコントロールできるようになり、狙った通りのペースで減量を進められるようになりました。
計算ミスを減らすヒント
こうしたカロリー計算のミスを少しでも減らすにはどうしたら良いのでしょうか。その答えを知るのにヒントになりそうな研究があります。
この研究では、被験者を「栄養士」と「そうでない一般人」にグループ分けし、被験者に自分自身が摂っているカロリー摂取量を計算してもらいました。ここで「栄養士」とはアメリカでプロの栄養士として働いている人です。
カロリー計算のズレを見てみたところ、それぞれのグループで以下のグラフのようになりました。
カロリー計算のズレは栄養士が約200kcal、一般人は約400kcalとなりました。
まず、プロの栄養士ですら自分自身のカロリー摂取量を完璧に把握することはできていなかったようです。カロリー摂取量を正確に把握するのはそれだけ難しいということで、栄養の専門家でない一般人ならカロリー計算にズレが生まれるのは自然なことでしょう。恥ずかしく思うようなことではありません。
ただ、栄養士はズレ幅が約半分で済んでいます。栄養の知識が多い人ほど自分自身の食事をうまく把握することができていて、計算ミスを減らすのにつながっていたと考えることができると思います。
減量時に食事量を把握するためには
ここまでの内容をまとめると、カロリー計算には自然とズレが出てしまうもので、カロリー摂取量を完璧に把握するのは難しいものの、栄養の知識を身につけると計算ミスを減らせる可能性があるということがポイントになります。
こういうことを踏まえて、減量時にカロリー計算をして食事量を減らしているつもりなのに思うように体重が落ちていかない人が実践してみると良いことをお話ししていきます。
食事量を減らしているはずなのに体重が落ちていかないようなら、自分が食べているものを食品ごとにしっかりと書き出してカロリー計算してみることをオススメします。例えば、カレーライスなら以下のような数字になるかもしれません。肉、米、にんじん、たまねぎ、じゃがいも、カレールウなどの食材をひとつずつ書き出すということになります。
食品 | 量 | カロリー |
---|---|---|
白米(炊飯前) | 100g | 350kcal |
鶏もも肉(皮なし) | 200g | 270kcal |
にんじん | 50g | 20kcal |
たまねぎ | 100g | 35kcal |
じゃがいも | 100g | 80kcal |
バーモントカレー中辛 | 1カケ | 100kcal |
サラダ油 | 小さじ1杯 | 35kcal |
合計 | 890kcal |
例えば、鶏の水炊きなら以下のような数字になるかもしれません。
食品 | 量 | カロリー |
---|---|---|
白米(炊飯前) | 100g | 350kcal |
鶏もも肉(皮なし) | 200g | 270kcal |
にんじん | 30g | 11kcal |
白菜 | 80g | 11kcal |
えのき | 30g | 7kcal |
糸こんにゃく | 50g | 3kcal |
大根 | 30g | 5kcal |
ポン酢 | 20ml | 8kcal |
キムチ | 50g | 25kcal |
合計 | 690kcal |
食事内容をしっかり書き出していくと、これまでにカロリー計算に含めていなかった食品や意識せずに多く摂りすぎていた食品の存在に気づくことあるものです。反対に、これまでに十分に食べていなかった食品に気付くこともあるでしょう。
筋力トレーニングをしている人にありがちなこととして、肉と米の量は意識していても、その他の部分は把握できていないことがあります。ここに挙げたカレーライスと水炊きの例では、同じ量の肉と米でも全体でのカロリー摂取量は200kcalの差があるのが分かります。
特定の食べ物が意外と高カロリーだったと気付くこともあります。例えば、こんにゃくは減量中に使いやすい低カロリー食品です。しかし、糸こんにゃくなら100gあたり6kcalなのに対して、はるさめは80kcalあります。こういう違いを把握できていないことが原因で、思った以上にカロリーを摂ってしまうことがあります。
実際に、AthleteBody.jpのコーチングにおいてもクライアントさんに食事内容をしっかり書き出してカロリー計算を始めてもらうと、次のような感想をいただくことがあります。
- 肉に含まれる脂質を計算に含めていなかった。
- 調理をするとき油を多く使いすぎていた。
- マヨネーズやドレッシングを計算に含めていなかった。
- 清涼飲料水のカロリーを計算に含めていなかった。
- 野菜をほとんど摂っていなかった。
こうした気付きは食事を改善するためのヒントになることが多いです。多く摂りすぎていたり無自覚に摂っていた食品があれば、その食品の量をコントロールすることでカロリー摂取量を減らすことができるはずです。
こうした気付きを積み重ねていくと、カロリー摂取量をある程度正確に把握して、自分の目標に合った食事を摂れるようになります。
1日だけ計算をしたら劇的に変わるものではないので、自分の食事管理の正確性に課題を感じたら、しっかりカロリー計算を行う生活をしばらく続けてみると良いでしょう。
カロリー計算を行う期間は人によって数週間で十分なこともあれば、数ヶ月続けるのが良い場合もあると思います。ただ、必ずしも生涯に渡って続けていかなければいけないものではありません。
食事の記録を細かく取ってカロリー計算する生活を続けていくと、食品の重さを量ったり書き出したりしなくてもカロリー摂取量にだいたいの見当をつけられるようになる場面が増えていくものです。こうなってきたら、カロリー計算する生活を少しずつ緩めていっても自分の目標に合った食事を摂りやすくなります。
細かくカロリー計算をしても減量が進まないなら
減量が思うように進まない場合、ここまでに紹介したようにカロリー計算をしてみると改善することは少なくありません。自分の食事量を十分に把握できている自信のない人は試してみてください。
ただ、食事内容をしっかり書き出して数値化してみて、計算に目立った間違いがないにもかかわらず体重が減っていかない場合もあります。
一般的なトレーニーが少し引き締めを図る場合には、目標としているカロリー摂取量の設定が高すぎるということが少なくありません。正確に計算できているものの、やはり摂りすぎているという状態です。
ただ、一定期間減量を続けてきて体脂肪が大きく落ちている場合には、代謝が落ちてヤセにくくなっているという可能性も考えられます。
このあたりについて理解を深めるのに、AthleteBody.jpから出版した『肉体改造のピラミッド』がお役に立てるかもしれません。
この本は減量や増量といった目的に合わせたカロリー摂取量や三大栄養素の配分の決め方、減量中の食事量調整など、体形改善のための栄養に関する情報を網羅しています。栄養の知識を増やし、食事に対する理解を深めるのにも役立つはずです。
[…] 摂取カロリーの誤差ついてはAthleteBody.jp様のこちらの記事が詳しいのでぜひご覧ください。(参考文献もこちらから発見しました) […]
今回の記事では、カロリー計算のミスを少しでも減らすヒントになりそうなものとして、「栄養士」と「そうでない一般人」で、カロリー計算のズレ幅を比較した研究をご紹介しました。
「栄養士」の方が「一般人」よりもカロリー計算のズレ幅は小さいことが示されています。栄養の知識を増やしていくと、計算ミスを減らせる可能性が期待できるということです。
この研究では、カロリー計算のズレ幅を導き出すのに、「実際のカロリー摂取量」の代わりに「1日あたりのカロリー消費量」を用いています。「1日あたりのカロリー消費量」と「計算で出したカロリー摂取量」を比較して、ズレ幅を計算しているということです。
「1日あたりのカロリー消費量」は必ずしも「実際のカロリー摂取量」とドンピシャで同じとは限りません。ただ、カロリー計算のズレを調べる研究では、慣例としてこのような計算方法を用いているようです。
詳しい研究手法にご興味があれば論文を読んでみてください。