AthleteBody.jpではボディビルやフィジークの減量指導を行っており、実際にコンテストに出場されたクライアントさん6名の体験談を先日紹介しました。
- 体験談第1弾「マッスルゲート三冠への歩み」
- 体験談第2弾「停滞を乗り越えてステージへ」
- 体験談第3弾「ギリギリまで絞る秘訣」
- 体験談第4弾「40歳で挑む初ステージ」
- 体験談第5弾「医師のベストボディ挑戦」
- 体験談第6弾「本格派ボディビルダーの減量」
2020年は複数の選手が好成績をおさめ、体験談も好評をいただきました。コンテストに出場するわけではなくとも、選手の絞り込まれた身体にあこがれてトレーニングを頑張っている人も多いと思います。
コンテストは特殊な世界で、一般人がカッコいい身体を目指して行う減量とは違う部分がいくつかあります。その中でも、今回は「目指す体脂肪レベル」と「減量ペース」の違いを紹介してみたいと思います。
目指す体脂肪レベルの違い
まず、一般的な減量とコンテストの減量では、目標とする体脂肪レベルに大きな違いが出てきます。
一般トレーニーの減量では、体脂肪をどこまで落とすかを決めるにあたって「本人が何を求めているか」が最も重要になります。ひと口に減量と言っても、体形に限らず、健康、運動パフォーマンスなど人によって重視したいことには違いがあります。
一般的な体形改善が目的であれば、腹筋が見えるところまでを目標にすることが多いです。そこまで体脂肪が落ちると、他の部位でも筋肉の形が分かるようになり全身のシルエットが整ってくるものです。
この写真はAthleteBody.jpで以前に減量指導をさせていただいたクライアントさんです。減量後の状態は、一般的な感覚で体脂肪が多いと言われることはまずないでしょう。トレーニングで確実に筋肉もついていて「良い身体」になっていると思います。
そして、一般的な減量では周囲からどういう評価を受けるかは別にして、ご本人が自信や達成感を得られれば減量成功と言えるでしょう。
一方、コンテストに向けて減量する場合、身体のシルエットが出てきたり腹筋が見えるようになったりした段階からさらに体脂肪が少ない状態を目指していきます。
腹筋が見えるようになって身体の輪郭が出てきても、まだ体脂肪は残っています。コンテストに向けた減量では、ひとつひとつの筋肉の形を明確に浮かび上がらせるため、筋肉の線維が透けて見えるようなところまで体脂肪を削り落としていくことが多いです。
このように、身体のどこにも体脂肪が残らないレベルまで絞り込んでいきます。
ここまで体脂肪を落とすと、強烈な空腹感や疲労感に悩まされることが多くなります。健康という意味でも決して良い状態とは言えないので、コンテストを終えたあとは絞り切った身体を保つことはせず、ほとんどの場合で体脂肪を増やしていくことが避けられません。
つまり、体脂肪をギリギリまで落とした身体は、コンテストで少しでも好成績を狙うための一時的な状態だと言えます。
こういうことを踏まえると、一般トレーニーが体形改善を目的に減量をする場合、コンテストに出場する競技者レベルまで体脂肪を落とすというのは良い目標にならない可能性が高いです。
どちらが優れているというわけではなく、減量に求めるものが変われば体脂肪をどこまで落とせばいいかが大きく変わるということです。
減量ペースの違い
目指す体脂肪レベルが違うので、一般的な減量とコンテストの減量では体重を落とすペースに違いが出てきます。大まかにイメージを描くと下のグラフのようになります。
ここからはそれぞれの目標ごとに減量ペースの違いを紹介したいと思います。
一般的な減量
一般的な減量で特に重要になるのが、減量生活を無理なく続けられることです。そのためには、減量ペースをゆっくりに抑えるのが効果的なことがあります。ゆっくりでも一定のペースで体脂肪を落とすことができていれば、それがベストということも少なくありません。
ゆっくり減量を進めていくと食事制限が厳しくならず、精神的にも肉体的にも大きな負担を感じずに減量を長く続けやすくなることが多いです。
AthleteBody.jpで一般的な減量を指導させていただくときは、1週間あたり体重の0.5〜0.7%くらいのペースで体重が落ちていくように食事量を設定することが多いです。例えば、体重70kgの人なら1週間に350〜500gくらいずつ体重を減らしていくことになります。
ただ、人によっては1週間に体重の1%、もしくはそれ以上の減量ペースを狙うこともあります。こういう方法は、特に減量開始時に体重が落ちているのが明確に目に見えるとモチベーションを得られる人には有効なことが多いです。
しかし、長期的なスパンで考えると、0.5〜0.7%くらいの減量ペースに落ち着くようにすると無理なく続けられることが多いです。
減量をゆっくり進めると、腹筋が見えるところまで体脂肪を落とすのに数ヶ月単位の時間がかかることがあります。
腹筋がはっきりと見えるところまで体脂肪が落ちる前に自分自身で納得できれば、何ヶ月もかけずに減量を終えても構いません。ただ、一般的な減量において期間を長く取るのは必ずしも悪いことではありません。
長い時間をかけて減量すると、新しい食生活が定着しやすくなるというメリットがあります。
減量中には、たんぱく質、野菜、果物などをたくさん摂る食生活になる人が多いものです。このような食生活を当たり前に続けられるようになると、減量後もカロリー過多な食生活にならずに済む可能性を高められます。
この習慣づくりは、リバウンドを避けて体形を長く維持するのに重要になることが多いです。
一般的な減量では、どこまで体重・体脂肪を落とすかだけでなく、健康的な生活習慣が身つくような減量期間の過ごし方をすることが重要だったりします。
コンテストを目指して減量する場合
コンテストに向けた減量では限界ギリギリまで体脂肪を落とすことが目標になるので、一般的な減量と比べると減量期間は長くなることが多いです。
また、ステージに上がる当日までに身体を仕上げないといけないので、あまり減量ペースをゆっくりにすることもできません。ただ、減量ペースが速ければ筋肉が落ちてしまうリスクが高くなります。
筋肉を維持しつつコンテストに間に合わせるため、減量の進捗に合わせて以下のように減量ペースを変えていくことが多いです。
- 減量序盤
減量序盤では筋肉が落ちないギリギリのところを狙って、速めのペースで減量を進めていきます。AthleteBody.jpで指導をさせていただくときには、1週間あたり体重の0.7〜1%くらいのペースで体重を減らしていくことが多いです。
減量序盤のように体脂肪量が多い状態では、速めのペースで体重を減らしても筋肉が落ちるリスクは小さくて済むことが多いです。また、減量序盤で体重をしっかり落としておくことで、減量終盤になって時間に追われる事態を避けやすくなります。
- 減量中盤
減量が進み体脂肪が少なくなってくると筋肉がエネルギーとして消費されやすくなります。体脂肪がある程度のところまで落ちてきたら、筋肉が落ちるのを防ぐため減量ペースをユルめていくことが多いです。
この段階になると、減量指導では1週間あたり体重の0.5〜0.7%くらいのペースで体重を落とすことを狙うことが多いです。
- 減量終盤
腹筋がすでに見えている状態から絞り込んでいくときには減量ペースをさらに落とします。こうすることで、減量終盤のギリギリのコンディションでも筋肉を少しでも維持できるようにします。
AthleteBody.jpでコンテスト向け減量指導をさせていただくときには、1週間あたり体重の0.5%以下に抑えることもあります。人によっては、1ヶ月かけて体重が数百グラムしか減らないことも少なくありません。
さらに、コンテスト直前には体脂肪を落とす減量とは別に、ステージでの見栄えを少しでも良くすることを狙った調整を行うこともあります。
このように、コンテストに向けて減量していくときには、一般的な減量よりも細かく計画を立てて臨む必要が出てきます。
そして、出来るだけ計画通りに進められるように食事管理を正確に行うことが重要になってきます。例えば、ドレッシングやソースなどの調味料に含まれるカロリーまで計算しないといけなくなるようなこともあります。
競技のために減量するからこそ、減量の計画性や食事管理の正確さが求められていると言えると思います。
一般トレーニーが体形改善を目的に減量をする場合、細かく食事管理を行ってみることで、栄養に関する理解が深まったり、自分が何をどれだけ摂取しているのか把握できるようになったりするメリットがあります。
ただ、コンテストに出る競技者ほど細かなところまで徹底的に管理しなくても目標を達成できることが少なくありません。
減量のゴールが違えば減量ペース、期間、計画性、食事管理の正確さも大きく違ってくるということです。
まとめ
ここまで、コンテストに向けた減量と一般的な減量の違いについて紹介しました。減量のゴールが違えばそこにたどり着くまでの過程に大きな違いが出てきます。
コンテストに向けて減量していく場合には、競技カテゴリーによって若干の違いはありますが、基本的に体脂肪をギリギリまで落とすのを目指すことになります。
そして、コンテスト当日までに身体を仕上げられるよう、綿密に計画を立てて減量を進めることが重要になります。また、計画通りに減量を進めるには、食事管理に正確さが求められるような場面も多くなります。
一方で、一般的な減量ではコンテスト競技者ほど体脂肪をギリギリまで落としたり、減量ペースを厳しく管理して進めたりする必要はほとんどありません。
コンテストに出場する選手を見てあこがれる気持ちは減量を頑張るモチベーションになることはあるでしょう。ただ、実際にコンテスト競技者のレベルまで体脂肪を落とした状態を目指すのは良い目標ではないことが多いです。
減量の期限を決めたり、限界ギリギリまで絞り込むことよりも、生活スタイルを作っていくことに意識を向けましょう。減量を終えたあとも健康的な食生活を続けることができるようになれば、それは体形が改善したこと以上に価値を持つ場合が多いと思います。
この記事が少しでもご自身に合った減量を考える参考になれば幸いです。
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この記事で取り上げた減量ペースに関することはもちろん、カロリー摂取量や三大栄養素の配分、トレーニング経験による違い、経過チェック、減量後のリバウンドなど考えるべきことは他にもたくさんあります。
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