THE BIG3 BASICS
開発の舞台裏

なにが基本と呼べるのか?なにが多くの人に有益なのか?

情報を集めて取捨選択し、順序立てて整理するという作業を2ヵ月ほど続けました。そして、動画に含める「基本」をまとめた台本がようやく形になってきました。

3段階の専門家のチェック

ここまでに「BIG3の基本を解説する」というコンテンツの方向性が決まり、まだ荒削りではあるものの具体的にどういう内容にしたいかが台本にまとまりました。

ここで初めて、リフター3人にこの企画に参加していただくようお願いしました。幸いにも全員に快諾してもらうことができ、いよいよ本格的にプロジェクトとして動き始めます。

まずは、ここまでに八百と本橋で制作してきた台本をチェックしてもらいます。最終的には全員の名前を載せた作品になるので、リフター3人を加えた5人全員が台本の内容を「BIG3の基本」と呼ぶにふさわしいと納得していることが重要です。

信田さんからは「もうこれをこのまま商品化できるレベルですよ」とコメントをもらいました。木下さんと伊勢崎さんからは細かな追加提案をもらい、それをまた吟味して台本に反映しました。

次は5人が納得した台本を英語に翻訳します。アンディが親交のあるアメリカ人のコーチやリフターたちに内容をチェックしてもらうためです。

△ 白い縦線を右にスライドさせると英語版に切り替わります。

英語版の台本はアンディに加えて、Mike Tuchscherer、Bryce Lewis、Greg Nuckols、Eric Helmsという4人のチェックを受けました。細かな提案をもらい、また取捨選択し、台本に反映します。(この4人は英語圏では一流の研究者、コーチ、リフターとして名の通った人ばかりです。)

△ 左からMike、Bryce、Greg、Eric

英語圏でのチェックを経た台本をさらに久保孝史さんがチェックしてくれることになりました。スクワットに関して細かなコメントをもらったものの、ほぼそのままの形でOKをいただきました。

ちなみに、この一連の確認作業を通して専門家からなんらかの指摘や疑問があった場合には、問題点が解決するまで八百が聞き取りを行いました。伊勢崎さんとは喫茶店で詳細を確認し、Mikeにはメールで話を聞き、GregとEricのディスカッションに加わってアドバイスを受け、久保さんには参考文献を紹介していただきました。お金を支払って名前だけ貸してもらうような形骸化したものではありません。

こうして最終的な台本が固まりました。ここからは撮影の準備です。

完成までのステップ2/3 撮影

撮影前の準備

台本ができ上がり、どういう情報を盛り込むかが決まりました。次は、それを映像として撮影するために必要な準備を始めます。

撮影場所は複数箇所を候補として検討した結果、Human Performance CenterというNSCAジャパンの運動施設を2日間貸切で使わせていただくことになりました。撮影機材としてスクワットラック、ベンチ、カメラを5台、三脚、照明器具などを手配しました。

5台のカメラを動かすために撮影スタッフも必要です。まず、フィットネスYouTuberとして活動しているヤスくんに参加してもらうことになりました。さらに、撮影当日にはプロカメラマン2名にご協力いただくことになりました。これに八百と本橋とアンディ、実演リフター3人を加えて9人での撮影です。

△ 写真の6人(敬称略)に木下さんとカメラマン2人の9人体制での撮影

撮影に協力してくれるカメラマンはカメラのプロですが、BIG3のフォーム解説に関しては素人です。プロジェクト全体として成功させるためには多くの人の多くのスキルをひとつにまとめることが必要です。撮影当日にできる限り全員が的確に行動し、ひとつのチームとして効率的に撮影を進めることができるよう段取りを進めました。

台本に書き出した情報を映像として表現するには、どういう動作をどういう角度から撮影すれば良いのか?バーベル、ラックといった機材を使った動作の撮影はどの程度あるのか?高重量での撮影はどの程度あるのか?撮影項目は3種目合計で200を超えます。2日間ですべてを撮影するにはどういう順序で進めれば良いのか?

こういったことをチーム全員に共有できるようにまとめました。

△ 撮影順序やカメラ配置を示した工程表

台本づくりの段階では多くの専門家の意見を聞き取り、整理する作業に時間がかかりました。そして、撮影にあたっても多くのスタッフの協力を得ることになりました。関わってもらう人が増えるごとに大きなプロジェクトであることをひしひしと感じます。

撮影当日

撮影は2018年10月27日と10月28日の2日間でした。AthleteBody.jpのスタッフは前日にHuman Performance Centerに集まり、スクワットラックやプラットフォームの設営、カメラ位置の確認などの準備を行いました。

△ 撮影前日の準備

そして、撮影本番。3種目合計で200以上ある項目を3人に実演してもらい撮影します。2日間でどこまでできるか時間との戦いになります。

八百と本橋は撮影項目ごとにリフターに撮りたい動作を説明し、カメラ位置を決めます。カメラマンはカメラの設定や照明の調整を行い、リフターが動作を実演します。そして、撮れた映像データはアンディがバックアップを取っていきました。

全員がそれぞれの役割に集中し、独特の張り詰めた空気の中、チーム作業で撮影は進みました。

△ 独特の静寂と緊張感の中、撮影は進みました。

あらかじめ綿密な準備をしていた甲斐あって効率的に撮影を進めることができました。それでも、200を超える項目を撮影するには2日間はギリギリの時間でした。

なんとか予定していた項目をすべて撮り切ることができたのは、絶えず集中を切らさず確実に役割を果たしてくれたリフターとカメラマン、そして撮影という特殊な状況に柔軟に対応してくださったHuman Performace Centerのスタッフの方々のおかげでした。

2日間の撮影を終えて撤収作業をしているときには、参加者全員が充実した達成感を感じていたと思います。

完成までのステップ3/3 編集

生映像を作品に

撮影してきた映像を編集して動画作品に仕上げていきます。

現場での撮影時にはリフターが無言で動作を実演し、それを撮影スタッフが淡々と録画していきました。

THE BIG3 BASICSのスクワット編には18本の動画があります。作品として成立させるには、各動画の趣旨に合った映像を選び、動作の意図や注意点に関する解説を加える必要がありました。

本橋が解説音声を録音し、ヤスくんが音声と映像を合わせて動画として組み上げる編集作業を行いました。

△ アンディと秋葉原で買った動画編集専用マシン

THE BIG3 BASICSは動画教材なので、動画の内容は「正しいこと」と同時に「直感的に理解しやすいこと」を目指しました。

終わらない編集作業

作業を始めて気付いたことですが、一度の編集で狙い通りの動画に仕上がることはありませんでした。

ヤスくんが編集したサンプル動画を八百と本橋を含めた3人で毎週1回チェックしました。そして、修正点を話し合い、新しいサンプルを作ってまたチェックするという作業を繰り返すことになりました。

△ 各自の気付いた問題点を提案して話し合う。緑色の点はすべて修正対象。

上の画像は、各自の気付いた問題点を書き出して、チームで修正案を話し合うために使用したソフトの画面です。

ここでは、スクワット編の「6.11」という動画の初回サンプルに関して、29箇所が修正対象として挙がっています。この次の週には修正案を反映した2回目のサンプルができ上がり、再度チェックして修正するという流れで作業を進めました。

最終的に、「6.11」は20回目のサンプルを完成品として採用しました。つまり、動画1本の完成まで20週間ほど時間をかけたということになります。スクワット編は18本の動画すべてを完成させるまでに500本ほどのサンプルを作りました。

直感的に伝える

500本ものサンプルを作って修正を繰り返したのは、「動画の意図を誤解なく直感的に受け取ってもらう」という目標を達成するためでした。

「直感的に受け取れる」というのは、「あまり意識して考えなくても自然と感じ取れる」ということです。しかし、これを形にするにはいくつかハードルがありました。

まずは、「知識」がハードルになりました。チェック作業に参加した3人はBIG3のフォームを理解していますし、THE BIG3 BASICSで伝えたい内容もすでに把握しています。サンプル動画のデキが悪くて不備があっても自分の知識で補って理解することができてしまいます。

しかし、同じだけの知識を持っていない人や違った見方をする人を想定すると、説明が不十分ではいけません。チェック作業を行った3人は自分の頭で内容を補わないように注意しながら、誰が見ても誤解なく伝わる編集を模索しました。

さらに、知識の問題とは別に3人体制でチェック作業をしていて気付いたのが、人によって注意を向けている部分が違うということでした。

人物を中心に見ている人、字幕を中心に見ている人、音声を中心に聞いている人というように情報の受け取り方にタイプの違いがあって、人によって何を直感的に「分かりやすい」と感じるかに違いがあるということです。

また、動画編集ソフトを使って映像効果を追加すると、どういうタイプの人でも映像効果に意識を引き付けられる傾向が強いことが分かりました。

こういったことを踏まえて、チェック作業に関わった3人全員が直感的に同じ内容を受け取れると感じるまで調整を続けました。音声解説と字幕はできる限りシンプルな日本語になるように修正を重ねました。そして、映像効果は動画内で見るべき部分に視線を誘導するために必要な最低限度にとどめるようにしました。

△ ヒジを見てもらうための映像効果。主役はリフター、映像は虚飾を排してシンプルに。

動画をカッコよく彩るような演出は使っていないので、見る人によっては地味で退屈に感じられるかもしれません。編集に時間をかけたと言うわりにできあがった映像はさっぱりしたものです。

特にリフターに被るような映像効果はできる限り避けるようにしました。それは、「THE BIG3 BASICSはフォームを解説する教材であり、リフターの実演動作をじっくり見て学びとして欲しい」という思いからです。

THE BIG3 BASICSで動作の実演をしてくれた3人は、日本代表として日の丸を背負って国際大会に出場するパワーリフターです。世界で戦うレベルに到達するまでには気の遠くなるような練習量があり、その非常に安定した挙上動作から学べることは多くあるはずです。

△ 2019年 世界大会出場時

揺るがぬ基本

THE BIG3 BASICSの制作舞台裏をご紹介しました。長い文章に最後までお付き合いいただきありがとうございます。

THE BIG3 BASICSはパワーリフティングに限らず、ボディビル、一般的な体力向上など、さまざまなスタイルのトレーニングに当てはまる「基本」を形にするべく、その収録内容を決めるまでに3段階で専門家のチェックを受けました。

専門家のチェックを経た内容は、おそらく日本で誰よりもBIG3をやりこんできたパワーリフターが実演してくれています。

そして、さまざまなタイプの人に誤解なく、直感的に理解してもらえるように編集段階でもできる限りを尽くして動画教材として仕上げました。

これから初めてBIG3に取り組む人の入り口として、経験を積んだトレーニーやアスリートが立ち返る場所として、「揺るがぬ基本」を届けます。

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