ダイエット中の三大栄養素の摂取量調整について、前編・後編に分けて説明して行きたいと思います。
- 前編:ダイエットが進むにつれて食事量の調整が必要になる理由(このページ)
- 後編:実際に食事量を変えるタイミングとそのやり方
後編では実践的な調整法を紹介しますが、まずはこちらを読んで、後編と合わせて全体的に理解するようにしてください。
カロリー計算ツールが使えないワケ
ネットには自動でカロリー計算をしてくれるツールがたくさんあります。
身長・体重・性別など自分のデータを入れると、トレーニング日・休息日に合わせた三大栄養素の摂取量をはじき出してくれます。
手軽にダイエットに取り掛かることができますが、しばらくすると体重が変わらず停滞してしまうこともあります。どうしてでしょう…?
細かな話をする前に断っておきたいのですが、こういう計算ツールを作っている人を批判するつもりはありません。
開発をしている人は、善意で長い時間と労力を掛けて作っています。自分で計算するのが面倒な人がスタートラインに立つには便利でしょう。(公開から2年近くになるウチの三大栄養素計算のページも絶えず人気です。)
ただし、こういうツールを使って最終目標までたどり着くことはできません。
問題は、こういった計算ツールでは、ダイエットの経過を考慮したり反映したりすることができないということです。
「カロリー収支を◯◯kcalマイナスにして1週間に500gずつ体脂肪を落とす」など細かな数字が並びますが、この数字の通りに進まないとストレスを抱えたり、パニックしたりする人が出てきます。
なんでうまくいかないのか?どこかで計算を間違えたのか?
状況設定
ここでは、減量中のよくある問題を考えるのに条件を設定します。
- 減量が停滞してしまい、さらに体脂肪を落とすには何かを変えないといけない。
本当に何かを変える必要があるのかを考えるのに、まず「自分を知るダイエット経過チェック」と「ダイエット成功のカギは我慢強さ」を読んでください。
- カロリー収支がマイナスになる減量中に筋肉は成長せず、除脂肪量は変わらない。
減量中にも条件が揃えば筋肉量が増えることはありますが、ここでは無いものとして考えます。
カロリー消費量を大きく見積もり過ぎた
カンタンな間違いのように見えますが、カロリー収支がマイナスになっていなくてもダイエットの初期には体重が落ちたりします。
理由は体内の水分量が減るからですが、これが起きる原因は二つあります。
炭水化物の摂取量
たいていの場合、リーンゲインズで減量を始めると休息日の炭水化物の量が少なくなり、1週間全体での炭水化物の摂取量が以前より減ることになります。
炭水化物は1gあたり3〜4gの水分を吸収するので、炭水化物が減ることで体内水分量も減るワケです。トレーニング日と休息日で体重に波が出たりするのもこの影響ですが、この数字を見れば結構大きな変化になるのは分かると思います。
塩分の摂取量
炭水化物の量の変化ほど分かりやすくないですが、ダイエットを始めると塩分の摂取量が減る人が多いです。いつも以上に健康的な食べ物選びを心がけるようになり、結果的に塩分の多いものを食べなくなる傾向があります。
1週間前後でだいたい元に戻りますが、この影響で一時的に体内の水分量が下がります。(気になる方はQ&AのダイエットQ23を参照)
ダイエット初心者が減量初期に陥る一番大きな落とし穴が、この体内水分量の変化だと思います。
体重が大きく変わるので、すごいペースで減量を続けられるんじゃないかという期待が膨らんで、そのあと期待通りに体重が落ちて行かないことにイライラする人がいます。
逆に、一気に体重が落ちてしまうのではないかと心配して食事量を増やし、実際のカロリー収支はマイナスにならなくなるような人もいます。
消費カロリーの変化
体重が軽くなるほど消費カロリーは減る
ここでは3つの要素があります。身体を維持するために必要なエネルギーが減るので、基礎代謝(BMR)が落ちます。食事量が減っているので、消化・吸収に必要なカロリー(TEF)も少なくなります。さらに、体重が軽くなるので、トレーニングで燃焼するカロリー(TEE)も少なくなります。
-
- BMR(Basal Metabolic Rate)- 基礎代謝が下がる
- TEF(Thermic Effect of Food)- 消化吸収に使うカロリーが下がる
- TEE(Thermic Effect of Exercise)- 運動時に使うカロリーが下がる
こういった変化が出てくるので、スタート時点の計算一発で良い結果が出続けることはほとんどありません。
トレーニング外での運動量が変わる
トレーニングとは別に普段の生活の中での活動量で、NEAT(Non-Exercise Activity Thermogenesis)と言います。ニートと読みます。
ダイエット中はダルかったり身体が重く感じたりする人も多いと思います。無意識に身体を動かす量が減ったり、階段よりもエレベーターを使う頻度が上がったりします。
NEATはちょっとやっかいで、個人差が非常に大きく出ます。
ある実験で、計算上の体重維持カロリーよりも1000kcal多く摂取した被験者を調べたところ、NEATの変化は -62kcalから+692kcal まで振れ幅がありました。
これは食事量が増えた場合の変化で、食事量を減らした場合の反応にも大きな個人差が出ると考えるべきだと思いますが、このNEATの大きな個人差に対応できる計算式は存在しません。
代謝適応(基礎代謝が下がる)
これは体重が減ることで起きるのとは別の基礎代謝の変化です。
ホルモンの変化によって起こるんですが、要するに身体はカロリー不足を感じると、どうにか必要エネルギー量を減らして、餓死を避けようとします。
現代のダイエットは餓死のリスクがあるような状況ではないですが、残念ながら私たちの身体は長期のカロリー制限と本当の食料危機を区別してくれません。
この基礎代謝の変化は実際に起こりますが、とても大きなものでもありません。
これまでに測定された中で一番大きく基礎代謝が落ちたのは、第二次大戦中にミネソタで行われた飢餓状態に近い実験ですが、体重が落ちたことによる変化を差し引くと、この代謝適応による基礎代謝の落ち込みは15%程度に留まりました。
三大栄養素の配分
たんぱく質、炭水化物、脂肪の比率の話です。
体脂肪の多い人は同じカロリー摂取量でも、脂肪を増やして炭水化物を減らした方が良い傾向があります。体脂肪の少ない人は炭水化物を多めに摂っても大丈夫なことが多いです。さらに、個人差で脂肪多めの方がうまく行く人も居れば、逆の人も居ます。私が計算ツールをオススメせず、オリジナルの計算ページを作ったのは、この部分を個人に合わせてもう少し考えるべきだと思うからです。
十分なたんぱく質を確保して、ウェイトトレーニングを行っているとして、炭水化物と脂肪の比率がダイエットの結果にどこまで影響するかはハッキリ言えません。カロリー不足という意味では同じです。
ただ、私の経験では、個人に合わせた細かな設定をした方が、停滞・空腹感・ストレスが少なかったり、トレーニングが充実したりと良い効果があると感じています。こういう要素が揃うことでダイエットを続けやすくなり、最終的に良い結果につながって行くと思います。
多くの場合、試して経過を見るということになりますが、三大栄養素の設定については後編でもう少し触れたいと思います。
まとめ
ダイエットで体重が落ちるに連れてカロリー消費量が落ちて行きます。ある程度まで推測することはできますが、NEATは個人差が大きく、代謝適応も正確に知ることはできません。
つまり、三大栄養素の計算は程度の差はあれ、どれも推定値だということになってしまいますが、誰しもスタート地点を決める数字が必要です。そこから先は、経過チェックのデータを見て、進み具合に合わせて調整していくのが不可欠です。
ダイエットを進めながら食事量を調整するには、現在の三大栄養素の量を基準にするのが唯一実践的に使える方法です。
では、実際にどうやって調整して行けばいいのか?後編でお話ししたいと思います。
いつも有用な情報をありがとうございます。欠かさずチェックさせてもらっています。減量に関しては私も過去の経験から計算通り行かないことを感じており現状に応じて試行錯誤しながら自分にあったポイントを探る繰り返しです。一度仮説を立てたら3週間は観察期間を置くようにしているので本当に気の長い話です。それも段階が進むに連れ変化していくので「こういう時はこうする」といったネタ探しであらゆる情報を集めるのですがかえって混乱したりして。結局はいつも単純に「増やしてみる」「減らしてみる」から始めています。一定の規則正しい生活が送れるか否かも仮説に対する結果を得るための重要なファクタなのですが一般社会生活をおくっていると何かと難しいこともあり、そのためまた時間がかかります。予告にある「後半」が私にとっては今知りたい情報の核心とも思える事項なのですごく楽しみにしています。
Nakashima さん
いつもありがとうございます。コメントで元気もらっています^^
ちょうど前回の記事の内容に当てはまりますけど、経過を見ながら気長に続けるってホントに大事だと思います。
いくつかチェックポイントがあって、食事量を変えるのは「最後の手段」なんですけど、ずっと更新をフォローしてもらっているNakashimaさんには、次の記事は使える内容になるかも知れません。
今週末か、来週くらいに掲載しようと思っています。しばしお待ちください。
翻訳ガンバリまーす!