筋力トレーニングに関して情報集めを始めると、必ず出てくるキーワードのひとつに「超回復」があります。
ネットを見ても、本を読んでもあちこちで目にする言葉ですが、実は出どころがハッキリしなかったり、デタラメだと言う人もいたり、ワリと議論のあるテーマでもあります。
トレーニング歴の長い方には「何をいまさら…」という話かも知れませんが、トレーニングを初めて間もない人には役立つこともあるので、トレーニングの入り口に立ったときに実践面で知っておくと良いことをご紹介します。
超回復理論とは?
筋肉を鍛えて強く大きく成長させるには、トレーニング・栄養・休息と3つの要素を満たしてあげる必要があります。
「超回復」というのは土台になる理論が別にあるのですが、日本語で筋力トレーニングに関して調べたときに読めるのは、「休息」の部分に関連する要素を大まかにまとめた便利なコンセプトでしかありません。だれが初めに言い出したのかもハッキリしないので、その信憑性に疑問を訴える人がいるのも自然なことかも知れません。
まずは一般的に言われていることをサッと見てみましょう。
超回復のイメージと概要
- 筋力トレーニングをすると、筋線維が破壊され一時的に筋力が落ちる。
- トレーニング後48〜72時間ほどで筋肉は修復されていく。
- 回復が終わると筋肉は以前より少し強くなり、この状態を「超回復」と呼ぶ。
- この段階でトレーニングをすると、次の超回復でさらに筋力は上がる。
- 48時間〜72時間の間隔でこのサイクルを繰り返すと筋肉を効率的に鍛えられる。
これは、関連する要素をテキトーにくっ付けて、雑にまとめてしまっているところがあるので、細かなことを言うと穴のある理屈なのですが、便利に使えるコンセプトではあります。このページでは、細かな問題点を洗い出すのではなく、筋力トレーニングの効果を得るために実践面で役立つところを見ていきます。
超回復理論の良いところ
初心者にはドンピシャ
超回復理論の良いところは、何より筋力トレーニングを初めてする人が「休息が必要なんだ」と気付くきっかけになることでしょう。
「毎日ジムに通っているけど効果が出ない」と困っているような人には、直感的に分かりやすくて役立つ情報です。48時間〜72時間という時間設定もトレーニングを始めて間もない時期には良い目安になります。
しっかりトレーニングしたら、しっかり休ませてあげましょう。
筋力や筋肉量アップを目指すときの注意点
漸進性過負荷の原則
身体を鍛えて、筋肉を強く大きくすることを目的にする場合、筋肉は掛かった負荷に対応できる分だけ強くなろうとするので、毎回少しずつトレーニングで扱う重量を上げたり回数を増やしたり、負荷を上げるようにガンバリましょう。これを「漸進性過負荷の原則」と言いますが、トレーニング記録が伸びていれば必ず良い方向に進んでいるので、ここを大切にしてください。
挙上回数・重量の設定
では、どうすれば挙上重量や回数を伸ばしていくことができるかですが、どのくらいの重量でどのくらいの回数を行うかが重要になってきます。
「10回×3セットがギリギリできるくらい」と聞いたことのある人は多いかと思います。他にも、8回×3セット、5回×5セットなど、いろんな設定が勧められます。ギリギリまで頑張るとすると、10回よりも5回の方が大きな重量を扱えるのは難しく考えなくても分かると思います。そこで、「どれが一番イイの?」というご質問をいただきます。
どれかの回数設定が特に効果が高かったり、低かったりするわけではなく、回数設定ごとに特徴があり、得られる効果が少しずつ違ってきます。自分の目的に合わせて回数設定を調整するのがポイントです。1セットあたりの挙上回数による効果の違いは以下のように言われることが多いです。
1セットあたりの回数 | 扱える重量 | トレーニング効果 |
1〜3回 | 超高重量 | 最大筋力アップがメイン |
4〜7回 | やや高重量 | 筋力・筋肉量ともにアップ |
8〜12回 | 中重量 | 筋肉量アップがメイン |
13回以上 | 低重量 | 筋持久力・筋肉量ともにアップ |
- 筋力を上げたい場合
筋力を上げて大きな重量を扱えるようになるには、大きな重量を扱ったトレーニングが効果的です。
「1〜3回」というような、特に大きな重量を扱う設定では筋力を伸ばす効果も大きいですが、十分にトレーニングに慣れていないとフォームを維持できなくなる可能性が高くなります。フォームが崩れて意図しないところに負荷が掛かると、痛みやケガにつながることもあるので注意が必要です。
「4〜7回」や「8〜12回」でも筋力を伸ばすことは可能で、トレーニングで扱える重量が伸びていれば筋力は確実に伸びています。 - 筋肉量を増やしたい場合
筋肉を付けてカッコいい身体を目指す場合には、筋肉量を増やすのが目標になります。
「4〜7回」というような比較的回数を抑えて高重量を扱う設定や、「13回以上」のように比較的軽い重量で高回数を行う設定など、かなり幅広い重量設定で筋肉を増やすことができます。
筋肉量を増やすには、細かな回数設定よりも全体でのトレーニング量が重要になります。全体のトレーニング量は、「重量×回数×セット数」で大まかに把握することができます。 - AthleteBody.jpのオススメ設定
それぞれの回数設定の特徴と、実際に自分が行うトレーニング種目の特徴を組み合わせて使い分けるのがオススメです。
トレーニングを初めて間もない人の場合、例えば、BIG3のように大きな重量を扱える種目では、5回×5セットのように比較的高重量の設定をオススメすることが多いです。全身の筋力を高めるのに効果的です。重量が伸びていけば全体でのトレーニング量も増えるので、筋肉も増えてくれます。
ダンベルカールのような大きな重量を扱いにくい種目では、10回×3セットのように回数を増やして、全体のトレーニング量を確保するのがオススメです。 - 軽い負荷でも筋肉は増える…けど
上の表には入れませんでしたが、1セットあたり30回というような回数をこなせる軽い負荷でも筋肉は増やせます。「自重トレーニングでは負荷が軽すぎて効果がない」と言われることもありますが、決してそんなことはありません。
ただ、こういう軽い負荷で筋肉を増やすには「もうこれ以上挙げられない」というところまで持っていくことが重要になります。軽い負荷でもギリギリまで続けると非常にキツいトレーニングになり時間も掛かります。
筋力や筋肉量アップが目的の場合、バーベルでも、ダンベルでも、自重でも、ある程度の負荷を掛けられた方が効率的になります。
トレーニング記録=筋力
重量や回数といった自分の筋力トレーニングの記録は、ほぼそのまま自分の筋力を表しています。トレーニングを始めて間もない内は、おもしろいほど筋力が伸びて行きます。
これは、筋肉の成長以上に神経の発達が効いていると考えられています。筋肉量は大きく変わっていなくても、トレーニングを重ねることで、いまある筋肉の全力が使えるようになっていくということです。
筋肉が成長するよりも神経の発達の方が短期間で進むので、初心者が48〜72時間間隔でトレーニングをしてどんどん記録を伸ばせるのは、これが大きな要素になっています。
筋力=筋量
残念ながら、神経の発達は永遠に続いてくれるわけではありません。自分の筋肉が持っている力を100%出せるようになれば、そこから筋力を上げていくには筋肉自体が成長するしかなくなります。
「筋力は筋肉の断面積に比例する」と言います。つまり、長いスパンで見ると、トレーニングで扱える重量や、こなせる回数が伸びていれば筋肉のサイズもついてきます。
筋肉が成長して大きくなることを筋肥大と言います。筋肥大が起きることで、胸板が厚くなったり、肩幅が広くなったり、腹筋の割れがハッキリ見えるようになったりと、目に見えて体形が変わるようになって行きます。カッコいい身体づくりのキーポイントです。
筋肥大はだんだんペースダウン
筋肥大は神経の発達よりも時間が掛かります。実際にどのくらいのペースで筋肉が成長するかには個人差がありますが、筋肉量が増えて行くほど筋肥大のペースはゆっくりになっていきます。そして、48時間〜72時間休んだからと言って必ずトレーニングで扱える重量を伸ばせるわけではなくなっていきます。
そこからさらに筋力や筋肉量を伸ばしたいと思ったら、もう少し長いスパンでトレーニングを考える必要が出てくるので、超回復理論の「48時間〜72時間で回復して強くなる」という枠組みは使えなくなっていきます。
いつまで超回復理論でイケる?
いつ超回復理論が使えなくなるかにも個人差があります。
超回復理論が使えなくなるのは、ある程度筋力や筋肉量が伸びてきて伸び悩み始めたときなので、まずは、そこに到達するだけ良いトレーニングができていることが必要です。超回復理論は「身体の休め方」を考えるための枠組みなので、十分なトレーニングができていない場合、そこから前進するためには、休み方を考えるよりも、しっかりトレーニングできることの方が先決です。
良いトレーニングができて筋力や筋肉量が伸ばせてきた場合、「48〜72時間の休みを入れてトレーニングを続けていても重量や回数を伸ばせなくなってきたとき」が超回復理論から離れるタイミングと考えられます。
これには個人差があって、本格的にトレーニングを始めてから3ヶ月程度でこの段階に到達する人もいれば、「48〜72時間の休み」で、半年や1年くらい伸び続けるような人も考えられます。
まとめ
今回は超回復理論を初心者のトレーニングに活かすという視点でまとめてみました。要点は以下のとおり。
- 日本語で一般的に読める超回復理論は、大まかなコンセプトで理屈に穴もある。
- 初心者のトレーニングの入り口には、シンプルさが便利で役立つ。
- 休み方を考えるのは、しっかりトレーニングできていることが前提。
- 48〜72時間の休みを取れば、ずっと筋肉が強く大きくなってくれるわけではない。
最近トレーニングを始めたという人は、あれこれ読み漁って頭でっかちになるよりも、しっかりトレーニングをして、「48〜72時間の休みを入れても伸び悩む」ようになってきたところでその先を考えてみるのも良いかもしれません。
[…] ↓参照先↓ATHLETEBODY|超回復ってウソ?ホント? […]
八百さん、
ご無沙汰しております。ただいま人生初の増量期間中のkiharaです。こんなに食べることが苦しいとは思ってませんでした(-_-;)。。。お相撲さんってスゴイですね(笑)。
自宅トレを始めた時は、バーベルのプレートが合計100kgもあれば大丈夫だろう、と思ってたんですが、体重が増えるにつれ、挙上げ重量もアップしていき、プレートの買い足しを検討中です。
さて、質問というか、確認なんですが、挙上げ重量が上がるにつれてフォームや集中力の維持がツラくなってきました。ですので、今は、BIG3を1セットあたり3レップを限界までやってます。だいたい10セット前後で限界が来る感じです。
やはり、これだと筋肥大を求めるメニューになってしまうのでしょうか。私としましては、それほどゴリゴリの体型を求めてるわけではないのですが、挙上げ重量が上がっていくと嬉しくなってしまい、今の3reps/1set に行きついてしまいました(^_^;)。
筋肥大を求めないのであれば、プレートを買い足す前に5回×5セットに戻した方が良いような気もします。
ただ、勝手な個人的な見解なのですが、私のような初級に毛が生えた程度のトレイニ―であれば、それほどレップ数やセット数にこだわらなくても、楽しくトレーニングができれば良いのではないかなーとも思ってます。それに体重の1.2倍~1.5倍くらいの重さなら、強度、ボリュームにこだわらなくても、そんなに体型に影響がないような気もしますし。。。
またお時間があるときにでも、ご意見よろしくお願いします。
追記
以前、フェイスブックで拝見させていただいたバスマットプラットフォーム、私も鋭意制作中です(笑)。
kiharaさん、こんにちは!
「最近消息不明だな。捜索願いを出そうかな」と思っていたんですが、自宅でのトレーニング続けられているんですね。
少し広い視野を持って、現状と長期的な目標を明確にされると自ずと答えが出てくるところかなと思いました。
増量期間中は、トレーニングのボリュームを増やせます。それは筋肥大にも筋力アップにも効果的です。
最終的な目標が筋力アップだとしても、筋量を伸ばすことが大切なタイミングもありますし、筋量を伸ばすにはカロリー収支がプラスになることが効きます。
いまkiharaさんには筋量アップが重要なのか、筋力アップが重要なのか、どちらかに特化して考えるのが良いのかということに答えを出せると良いのかなと思います。
「即席プラットフォーム」は、下の方に丈夫な木の板を入れるのがポイントだと思います。
八百さん、
ご無沙汰してしまってすみません。指名手配じゃなくて捜索願いで良かったです(笑)。
ちょうど、e-bookの該当ページを読みなおして復習していたところでした。確かに、増量期はボリュームを増やせる重要なタイミングですよね。減量期のことを考えるとアドバンテージを作っておくことも大事だな、とも思います。
ご存知かと思いますが、特に私の場合は「あれもこれも、それもこれも」とスィーツバイキングで取り皿を山盛りにしてしまう女の子のように、トレーニングメニューを追ってしまうので、求めるべき結果だけは明確にしてトレーニングするようにしないと。あとは、しっかり食べます。
では、また筋トレの旅に出ます。捜索願いが出る前にまたお便り出します(笑)。
はじめまして。偶然、こちらのサイトを見つけました。興味深く読ませて頂いています。私は、長年ギリシャに住む日本人女性です。3年ほど前から地元のジムで、ストレスコントロールのためにウエイトリフティングを始めたのですが、はまってしまいました.、主にBodybuilding.comをフォローしているのですが、日本語の良いサイトはないものかと探していたところでしたので、とても嬉しいです。
リアラさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
ウェイトリフティングをされているんですね。ウチのサイトでは積極的に扱っていませんが、正しくやり方を学んで実践できる環境があれば、とてもやりがいがある趣味になるでしょうね。
英語が大丈夫であれば、良い情報に触れる場所はもっと幅が広がります。ウチで紹介している翻訳記事で気に入ったものがあれば、オリジナル著者の発信している情報をチェックしてみるのも良いかもしれません。
ガンバってください^^
初めまして。つい先週からリーンゲインズを始めました、長谷と申します。
気になることがあるので、こちらで質問させていただきます。
今週の月曜日から初めてジムに通い始め、トレーナーの方に5×5のBIG3をやりたいと伝えました。
すると、そのトレーナーの方が「5回5セットでは筋肥大は起こらず、筋力ゲインが起こる。筋肥大ならば10回3セットがよい」とおっしゃっていました。
個人的には5回5セットの方が好きなのですが、私は筋肥大と筋力ゲインを目標としているので、トレーナーの方の言う様に10回3セットにした方がよいのでしょうか。
長谷さん、初めまして。コメントありがとうございます。
他で指導されているトレーナーさんを批判するのは本意ではないんですが、「5回5セットでは〜10回3セットがよい」とそのまま言われたとしたら、それはちょっと違いますね。
5回5セットで筋力も筋肉量も伸ばせます。
また、1セットあたりの回数が減ると1回1回フォームに集中しやすくなるので、初めて間もない方のフォーム習得にも有利です。特にデッドリフトで10回集中し続けるのは大変です。
心配せず5回5セットを継続されてください^^
初めまして。こちらのサイトを見て、3bigを始めたものです。
バーベルがないので、7キロのダンベルでしています。
質問なのですが、こちらでは筋トレは週4回とされていますが、毎日しても効果は表れるんでしょうか?
(そんなに重くないけど、一応きついなってくらいしてます。)
くたくたになるまでやって、間をあけたほうがいいんでしょうか?
(3bigを始めて筋肉は育ってる気がします。けど効果がこのまま進むのか不安です。)
八谷さん
初めまして、コメントありがとうございます。
BIG3をやるには7kgのダンベルでは負荷不足ですね。スタート時点で実際に何kg必要かは体格にもよりますが、追加のウェイトプレートなど自宅で使えるトレーニング用品を充実させるか、ジムに通うことを考えるのが良いと思います。
返信ありがとうございます。
負荷不足だと筋肉はもうつかないんでしょうか?
あと続けるにしても、毎日やっても問題は何でしょうか?
教えてください。
負荷不足といっても程度問題です。
7kgのダンベルでは辛いですが、この記事の回数設定の部分を見てください。
この記事をしっかり読んで理解してもらったら、いま八谷さんが疑問に感じることはほとんど答えを出せると思います。
変な質問だと思いますが質問です
リーンゲインズを始めてから、前腕の血管が午前中(絶食中)は全く出てなく、
ご飯を食べたあと、とくに夕方以降になるとバリバリに出てきます。
(バリバリに出てる状態が正常なんだと思います)
16時間絶食と関係性はありますか?
You’ll find that your vascularity fluctuates with your eating pattern. Training days you may find this more because of the extra carb intake, or the opposite. Everyone is different in this regard. For clients that have a photo-shoot/competition we’ll monitor the changes and try and time things.
アンディのコメント訳しておきます。
食事サイクルに合わせて血管の出方が変わることはあります。炭水化物の量が多いトレーニング日ハッキリ出たり、その逆だったり、個人差があるので、写真撮影やコンテストのあるクライアントさんには、自分のパターンを掴んでタイミングを合わせるように話しています。
ありがとうございました!!