今日のテーマは、上腕三頭筋アイソレーション種目のフォーム比較です。上腕三頭筋に特化した種目はいくつもありますが、やり方によって効果に違いがあるかを考えます。
今回紹介する研究では、ケーブルを使って頭の上で動作を行うタイプと、腕を身体の側面に下ろした状態で行うタイプを比較しました。
△ ヒジの位置で効果は変わるのか?
上の図のように、ふたつの種目の違いはヒジの位置だけです。どちらも動作は80度で、その他の条件も揃えられました。
12週間のトレーニングの結果、上腕筋の筋量は以下のように変化しました。
△ 頭上で動作した方が効果アップ!
この研究では上腕三頭筋の部位ごとの筋量を測定しており、すべての部位において頭上で動作を行った方が筋量の伸びが大きいという結果になりました。
グラフでは部位ごとの変化を示しましたが、上腕三頭筋全体で見ると、筋肥大効果が1.4倍になったということです。これだけハッキリ違いが出ると、まぐれとは考えにくいです。
この研究では、参加者全員が両方の種目を片腕ずつ行いました。つまり、体質や生活習慣の個人差で結果がブレにくいということです。
他の条件も統一されていて、重量設定のルール、トレーニングの頻度や期間、ヒジの動作角度まで同じだったので、動作を行った位置だけでこの違いが出たことになります。
では、なぜなのか?
いくつか理由は考えられるのですが、有力と思われるものを2つ紹介します。
ひとつ目は、ヒジを頭上にあげると上腕三頭筋の長頭が伸ばされるということです。これまでの研究で、筋肉が伸ばされた状態で負荷をかけると筋肥大効果が高くなりやすそうだという報告がいくつか出ています。
これがすべての種目や筋群に当てはまるかは分からない部分が残るのですが、今回に関しては上腕三頭筋長頭で同じことが起きていた可能性が考えられます。
ただ、それだけでは説明できない疑問が残ります。今回の研究では内側頭と外側頭の筋肥大効果にもハッキリと違いがありました。
内側頭と外側頭という部位はヒジを上げても長さが変わらないので、筋肉が伸びた状態で負荷がかかったから効果が高くなったとは考えにくいです。
この論文の研究者はもうひとつの理由として、ヒジを上げると上腕三頭筋への血流が悪くなり、それが筋肥大刺激を大きくしたのではないかと説明しています。
頭の上にあげた腕に血液を送るには、重力に逆らう必要があります。それに対して腕を下ろした状態では重力の助けを借りて血液を送ることができます。
運動中は酸素やその他の代謝物質を運ぶため筋肉への血流が重要になります。血液を送りにくくなると筋肉にとってキツい状態になり、それが効果を高めたのではないかと考えられるのです。
この説明が本当に正しいと証明されているわけではありませんが、可能性は十分にあります。
筋トレは単純に考えると「筋肉に負荷をかけて追い込めばデカくなる」と言えてしまいます。今回の2種目はまったく同じに見える人も少なくないでしょう。実際、この研究を行った人たちにとっても、この結果は予想外だったようでした。
しかし、実際に試してみると効果に明確な違いが出たわけですね。ひとつずつ丁寧に試したり学んだりすることが大切だと気づかせてくれる知見です。
上腕三頭筋のアイソレーション種目を迷っている人は、頭上で行うタイプを試してみると良いかもしれません。
2025/7/18 文責:八百 健吾