コンテストに出場されたクライアントさんの減量過程をご紹介します。(お名前をTHさんとします。)THさんはトレーニングを5年続けられていて、現在はボディビル競技に出場されていますが、以前は肥満体型だったそうです。
THさんはコーチング開始の第1週目に「本格的に食事制限を始める前の思い出づくり」と称して、食事量設定の150%を食べるというスタートを切られました。
減量指導の担当コーチとしてはビックリしましたが、これだけでもTHさんにとって食べることがいかに大きな楽しみになっているかが感じられます。
食べることが大好きなTHさんの減量は空腹感や身体のダルさとの闘いになりました。しかし、コンテストまで減量をやり抜き、ご自身のコンディションに自信を持ってステージに立つことができました。
THさんは以前にもコンテスト出場経験があり、2021年もパーソナルコーチングにお申し込みいただくまで、コンテストに向けてご自身がやり慣れた方法で減量されていました。
しかし、以前の減量では途中でドカ食いをしてしまい、体脂肪をなかなか落とせずに歯がゆい思いをしたことがあったそうです。今回も食欲をコントロールできず、コンテストまでに体脂肪を落としきれなかったらどうしようと不安に感じられていました。
そんなとき、AthleteBodyでボディビル選手の体験談を読み、THさんも自分に合わせた減量プログラムを使ってコンテストに挑みたいと考え、申し込んでくださったとのことでした。
ここからは、THさんのコーチング期間中の取り組みを紹介してみたいと思います。
トレーニングと食事
減量プログラムを作成するにあたり、コンテストに向けた大まかな方針を立てることにしました。
減量ペース
はじめに、どれくらい体重を落とすかを決めました。
コンテストまでの4ヶ月間で8〜10kg、1週間あたり500〜600gくらい体重を落とせばコンテストまでに体脂肪が落ち切るはずだと考えました。
コンテストに向けての減量幅としては大きくなく、減量ペースも一般的な範囲に収まります。
THさんはすでに減量を開始されていたので、コーチングお申し込み時点での食事内容とそれまでの減量ペースをお聞きし、それを参考に具体的なカロリーや三大栄養素の摂取量を設定しました。
トレーニング
コーチング開始とともにトレーニングプログラムも刷新しました。
コーチングにお申し込みいただく前、THさんは次のようにトレーニングされていました。
- トレーニング頻度は週5日
- 各部位を週2日鍛える
- 1日に各部位10〜15セットくらい実施
それを以下のようにプログラムを組み直しました。
- トレーニング頻度は週5日を維持
- 各部位を週2日鍛えるのも維持
- 1日に各部位6〜8セットくらいに減らす
トレーニング量を1週間あたり各部位20〜30セットから15セット程度に減らしたのが主な変更です。
コンテストに向けて筋量を保つにはトレーニング量が重要です。しかし疲労とのバランスも考えなければいけません。
コーチングにお申し込みいただく前、THさんはトレーニングでの疲労は強く感じていなかったものの、体調の良くない日が増えてきていたのが気になっていたそうです。
また、AthleteBodyで指導させていただいたクライアントさんの体験談を読み、自分のトレーニング量が多いのが原因ではないかと感じていたとのことでした。
減量中、食事制限によって回復に支障が出てきやすくなる可能性を考えると、各部位のセット数を少し減らしても良いのではと思いました。
このプログラムで、体調が悪くなったり疲労が問題になったりせずにトレーニングを続けられるか様子を見ていくことにしました。
はじめの1ヶ月
コーチング開始からはじめの1ヶ月では、THさんの身体は次のように変わりました。
開始時 | 1ヶ月後 | |
体重 | 78.1kg | 76.9kg |
お腹まわり | 88.5cm | 82.0cm |
1ヶ月で体脂肪が落ちているのが分かります。
しかし、体重が落ちるペースは1週間あたり300gくらいと、コーチング開始時に目標としていた1週間あたり500〜600gよりもゆっくりでした。
コンテスト出場を目標としていなければ、このままゆっくり減量を続けていくこともできます。しかし、THさんの場合、この減量ペースが続くとコンテストまでに体脂肪を落としきれないリスクがありました。
減量を確実に間に合わせるにはカロリー摂取量を落とさなければいけません。ただ、THさんは開始時点から食欲のコントロールに不安を感じられていました。
空腹感を抑えるため野菜をたくさん摂ったり、食事タイミングを考えたりと工夫されていましたが、コンテストに向けた減量の厳しさがなくなるわけではありません。もともと食欲の強いTHさんにとっては大きなハードルです。
THさんに減量を始めてからの空腹感や体調についてお聞きした上で、カロリー摂取量を減らすことにしました。そして、1週間のうち木曜日だけカロリー摂取量を多めに設定し、それ以外の6日間の食事量を減らす方法を取りました。
1週間全体で見ると平均カロリー摂取量が落ちるものの、1日だけたくさん食べられる日を設けるということです。
この方法はTHさんのご希望を踏まえて決めたものですが、本当にうまくいくかは実際にやってみないと分かりません。
とりあえず、1ヶ月間様子を見ることにしました。
開始1ヶ月から2ヶ月
食事の設定を変えてから1ヶ月間で、THさんの身体は次のように変わりました。
1ヶ月 | 2ヶ月 | |
体重 | 76.9kg | 73.5kg |
お腹まわり | 82.0cm | 78.5cm |
体重の落ち幅は1週間あたり平均800gと、当初の目標500〜600gを上回るペースになりました。写真からも体脂肪が落ちてコンディションが良くなっているのが分かります。
1ヶ月で減量は大きく進みましたが、食事面で少し問題が生じていました。
1週間の中で食事を多く摂る日を設けたものの、THさんはその日に食事をしっかり摂ることができず、毎日同じカロリー摂取量で過ごされていました。結果的に本来の計画以上に減量が進むことになったのでした。
THさんは「たくさん食べる予定の日にドカ食いしてしまったらどうしよう」と不安を感じ、設定通りに食べることができなかったそうです。
この時点でコンテストまで約2ヶ月でした。コンテストの日程が近づくにつれて緊張を感じるようになる選手は多いです。
この1ヶ月は目標よりも速いペースで体重が落ちたわけですが、THさんとしてはコンテストに向けて少しでも減量が進むと気が楽になると感じていたようでした。
もともとはドカ食いへの不安に対処するため1週間に1日は食事量を増やす設定を試したわけですが、実際には厳しい食事制限に耐えて体脂肪が落ちるのを確認すると不安が和らぐという結果になりました。
開始2ヶ月から3ヶ月
その後の1ヶ月間でTHさんの身体は次のように変わりました。
2ヶ月 | 3ヶ月 | |
体重 | 73.5kg | 71.9kg |
お腹まわり | 78.5cm | 78.0cm |
この1ヶ月で体脂肪は大きく落ち、筋肉の輪郭が浮き上がってきているのが分かります。
体重の落ち幅はやや小さくなりましたが、これは体脂肪よりも体水分の影響だと考えられました。(細かな説明は省きますが、データを揃えると判別できる場面があるのです。)
実際にコンディションは着実に良くなっていて、コンテストまでの残り1ヶ月間で体脂肪を落とし切れるはずでした。
ただ、この時点でTHさんは体調に変化があり、身体のダルさに悩まされるようになっていました。
体脂肪が減るほど疲労感や倦怠感が強く出る人は多く、コンテストに向けた減量の終盤になると珍しいことではありません。この時点でTHさんの食事制限はかなり厳しくなっていたので、ある意味自然な反応と言えるものでした。
健康のための減量であれば体調に悪影響が出る前にストップするべきですが、コンテストに向けた減量はやめてしまうことができないのでつらいところです。
ただ、あまりに疲労感や倦怠感がキツいと日常生活やトレーニングにも影響が出てしまうので、少しでも緩和する方法を模索します。
THさんから状況を詳しく聞かせてもらったところ、その日ごとのトレーニングをやり切るのが精一杯で、終わるころには体力的にギリギリな状態になっているとのことでした。
そこで、最後の1ヶ月間は各種目のセット数を減らしてみることにしました。トレーニング量を減らし、体力的に少しでも余裕が出てくれることが狙いです。
減量中に筋肉を保つにはトレーニングによる刺激が重要で、トレーニング量を減らすとマイナスに働く可能性もあります。
しかし、コンテストまでの残り短い期間であれば差し支えないはずだと考えました。
最後の1ヶ月
コンテストまでの最後の1ヶ月で、THさんの身体は次のように変わりました。
3ヶ月 | 4ヶ月 | |
体重 | 71.9kg | 69.0kg |
お腹まわり | 78.0cm | 75.0cm |
体脂肪もしっかり落ち、いつでも胸を張ってステージに立てるコンディションが出来ていると思います。最後の1ヶ月、空腹感と身体のダルさに苦しみながらも、最後まで減量をやり切りました。
コンテスト直前の数日間、食事面では食塩や水の摂取量は変えずに、炭水化物を増やしてもらうことにしました。これは、コンテスト当日に最高のコンディションに持っていくことを狙っています。
また、しっかりカロリーを摂って、身体の疲労を少しでも回復してもらうことも意図しました。
食事内容を変えるとTHさんの身体のダルさはなくなり、「これだけ元気な状態でコンテストに臨むのは初めてかもしれません」とたいへん喜ばれていました。いかに食事制限に苦しまれていたかが分かる変化でしたが、食事調整が狙い通りにうまくいったようで私としてもホッとひと安心です。
こうしてTHさんはステージに立つ準備ができました。
2021年7月18日、THさんは千葉県男子ボディビル選手権に出場され、40歳以上級では3位に、50歳以上級では2位と素晴らしい成績を収められました。
THさん自身、当日はこれまでに出場してきたコンテストと比べ、筋肉の張りが良いと感じられたそうです。コンディションをピークに持っていけたことで、自信を持ってステージに立つことができました。
コンテストに向けての数ヶ月間、空腹と身体のダルさに苦しみながらもコンテストまで減量をやり抜けたのは、THさんの「コンテストまでに体脂肪を落とし切る」という強い気持ちがあったからこそだと思います。
担当コーチ本橋の感想
THさんの減量指導をさせていただいた中で、ボディビルにかける熱意の強さがとても印象に残っています。特に印象に残っているエピソードをお話ししてみたいと思います。
コーチング開始時から食欲のコントロールに不安があると伺っていたので、食事制限による空腹や体調変化について気をつけて様子を見るようにしていました。
通常パーソナルコーチングでは、2〜4週間ごとにトレーニングや食事などについてクライアントさんが感じていることをお聞きし、実践内容に変更が必要かを決めるようにしています。
THさんには空腹感について毎回のようにお聞きしていたのですが、必ずと言って良いほど「空腹はキツいけれども、コンテストに出るため食事制限を続ける」という回答をもらっていました。
THさんの言葉にボディビルにかける想いがにじみ出ていると感じました。私は「この人ならきっと苦しくても最後まで食事制限をやり抜くはずだ」と確信のような気持ちを抱きました。
実際に、コンテストまでの期間、THさんは食欲を抑えられずにドカ食いしてしまうようなことはありませんでした。
旅行のように食事内容をコントロールするのが難しい状況であっても、設定したカロリー摂取量に収まるように食べられていました。
食欲の感じ方には大きな個人差があって、食欲の強い人ほど食事制限が苦しいものになります。一度は肥満体型になるまで食べることができたTHさんにとって、コンテストのレベルまで絞るのは並大抵の精神力ではできないことだと思います。
ボディビルへの情熱があったからこそ、どんなに苦しいときでも最後まで減量をやり抜くことができたのだと思います。
そして私自身も、THさんのその想いをどうにか結果につなげられるようにと、身の引き締まる思いでコンテストまで指導させていただきました。
最後に、THさんの体験談をご紹介します。
THさんご本人の体験談
私は幼少期から肥満体型だった事もあり、食べることが凄い好きで、これまでのコンテストでは減量中にどうしても「チートデイ」と称してドカ食いをしてしまうことが何回もありました。
それが原因で減量の進みが遅くなることが課題でした。この課題を克服しようと、今回のコンテストではコーチングに申し込みました。
ただ、申し込んだものの、不安はありました。
コーチの言ったことを忠実に守れるのか?言われたいことをこなせるのか?挫折してしまうのでは無いか?思うような成果が出せないのではないか?
実際に始まると、食事に関しては、自分がこれまでにしてきたことは大きく的を外していなかったと確認できて安心しました。
また、改めて基本的なことをいろいろと確認出来ました。
例えば、これまで大切だと分かっていても実践してこなかった体重や身体のサイズの記録をつけることなど、減量の進み具合を見ていく上でも役に立ちました。
記録をつけたシートは定期的にコーチに送るため、習慣づけることができたと思います。
また、コーチからアドバイスを受けて、減量期間中は食事内容をほぼ同じもので固定できたのも減量を進めるのに役立ちました。
さらに、食事での優先順位の大切さが分かるようになり、サプリメントも必要以上に摂らなくなりました。
トレーニングについても、コーチにプログラムを組んでいただいてすごく良かったです。
コーチングに申し込みするまでは、ほかのボディビルダーがよくやっているように、全身をいくつにも分割してトレーニングしていました。しかし、最近はその方法がトップ選手には合っているのかもしれないが、私には適してないのでは?と感じていました。
コーチングでは、各部位を週2回トレーニングするプログラムを組んでいただきました。
私の場合、仕事の都合でトレーニングできない日が週2日あるのですが、それも加味してプログラムを組んでいただけたのは助かりました。
プログラムでは苦手な種目でもやらないといけないため、自分自身に甘えがなくなったのも良かったと思います。
コーチング中に分からないことが出てきたとき、私からの質問にも的確に答えていただけたのも良かったです。
そして、何よりもコーチを裏切れない、1人じゃないという気持ちがあったので、減量後半かなり厳しいカロリー制限の中でトレーニングしていても踏ん張れたのだと思います。
今回コーチングしていただいて、これからのトレーニング生活の基礎として役立つことが多かったです。もっと早く受けていればと良かったと思います。
とても満足しています。
パーソナルコーチング
AthleteBody.jpではパーソナルコーチングを提供しています。
各個人の現状や目標に合わせてプログラムをお作りするサービスで、ボディビルコンテストに向けた指導も承っております。
パーソナルコーチングの詳細は申込みページでご確認ください。