今回は新しいゲスト投稿者をご紹介します。「ドクターオブカイロプラクティック」の河合智則先生です。
今回は、河合先生から「筋力トレーニング中に起きる腰痛」についてお話を伺う機会を頂きました。AthleteBody.jpの読者さんにも、スクワットやデッドリフトなどのトレーニングで、腰痛に苦しんだ経験のある人は少なくないと思います。
以前から読者さんからリクエストがありましたが、トレーニングで起こる痛みや怪我はスポーツ障害の一種で、専門的な教育を受けていなければ、無責任に情報発信すべきでないトピックです。
河合智則という人
科学的エビデンスに基づく治療家
「ドクターオブカイロプラクティック」という言葉を初めて耳にする人もいると思います。
これは、アメリカ合衆国のカイロプラクティック専門の大学で学び、国家試験に合格した者だけに与えられるアメリカの国家資格です。日本にはない資格制度ですが、スポーツ障害に関しては、アメリカでは医師と同じようにドクターとして診断や治療を行う専門職です。
河合先生はアメリカでスポーツドクターとして治療活動をされた後、日本に帰国、現在はK-Mapカイロプラクティック&スポーツセラピーという施設を開設し、スポーツで起こる怪我や、腰痛や肩こりなどの一般的な症状の治療に携わっています。
また、河合先生の治療はカイロプラクティックだけにとどまりません。スポーツ医科学をはじめとした最新の科学的知見に精通されており、エビデンスに基づいた治療法を幅広く取り入れられています。
河合智則 × AthleteBody.jp
河合先生とAthleteBody.jpは、「科学的エビデンスに基づく」という共通項から、以前から親しくさせていただいていました。
今回は「少しでもアスリートやトレーニーの役に立つならやりましょう。お金は要りません」と、心意気ひとつでゲスト投稿を快諾してくれました。AthleteBody.jpからはビタ一文お支払いしていません。本橋がSkypeで2時間かけてインタビューさせていただいた内容を2回に分けてシリーズでご紹介していきます。
=== ここから本編 ===
基礎筋力をつけたり筋肥大を目標とするときに、筋力トレーニングはとても役に立ちます。一般的には、筋力トレーニングにおける怪我のリスクは、サッカーやラグビーのようなコンタクトの激しいスポーツと比べると低いとされます。しかし、スクワットやデッドリフトといった一部の種目は、フォームが難しく、さらに高重量を扱うことが多いため、怪我のリスクが大きくなりがちです。筋力トレーニングによって腰を痛めるといった話は、多くのトレーニーから聞きます。
筋力トレーニングで腰を痛めると、多くのトレーニーはその後の対処法に迷います。
- しばらく筋力トレーニングを休めば良いのか?
- 痛みが出ないフォームで行えば良いのか?
- 別のトレーニング種目を選べば良いのか?
- そもそも医師に診てもらわず、自己判断でトレーニングを継続して良いのか?
このような自問自答をした経験が、皆さんにもあるかもしれません。
こうした疑問にお答えすべく、今回から二回にわたって、筋力トレーニングで起こる腰痛のメカニズムとその対処法についてお話ししていきます。
今回は腰痛が起こるメカニズムについて見ていきましょう。
腰痛を知ろう
腰痛は、痛みの原因がはっきりとわかる腰痛と、レントゲンなどの検査をしても痛みの原因がはっきりとわからない腰痛との、大きくふたつに分けられます。
痛みの原因がはっきりとわかる腰痛には、「骨折など骨に由来するもの」「神経のダメージに由来するもの」「内臓の病気に由来するもの」などが挙げられます。
このような腰痛は、全体数から見ると発生の割合は高くはありませんが、医師や専門家の適切な処置が必要なものもあります。
次のような症状が出ている場合は、そういった腰痛の危険信号です。すみやかに医師に詳しく検査してもらうことをオススメします。
- 動きや時間帯に関係なく痛む
- 脚の痺れがある
- 脚に電気が走るような痛みがある
- 明らかな筋力低下がある
- 他動での可動域の低下がある
(自分の力ではなく、壁やレジスタンスバンドなどを使って関節を動かすことのできる可動域の低下。)
非特異性腰痛というもの
痛みの原因がはっきりと特定できない腰痛は「非特異性腰痛」と呼ばれ、その発生の割合は腰痛全体の85%にも上ります。
筋力トレーニング中に発生した腰痛でも、病院の検査などで原因がはっきりとわからない場合は、非特異性腰痛に分類されます。
非特異性腰痛は、怪我が起きてから痛みが続く期間によって、以下のように分類されます。
- 急性(直後〜6週間)
- 亜急性(6〜12週間)
- 慢性(12週間以上)
大多数のケースでは数週間以内に痛みがなくなり、少数が慢性的な痛みとして残ることが見られています。
非特異性腰痛に分類される腰痛が起きたとき、その原因をはっきり特定することができないわけですが、メカニズムは少しずつ分かってきています。メカニズムを知ることで、腰痛を緩和したり予防したりするヒントが得られます。
なぜ痛みを感じる?
腰痛に限らず、ヒトが痛みを感じる時には、複雑な仕組みとさまざまな要素が関連します。「身体に損傷を負った=痛い」と簡単な図式が成り立てばいいのですが、実際にはそうとは限りません。
ヒトが痛みを感じる仕組みを理解することで、腰痛が起こったり続いたりするわけを理解できるようになります。
腰痛の話題に入る前に、ここでは身体が痛みを感じるメカニズムを簡単に見ていきましょう。
痛みを起こす刺激を感知する
ヒトの身体には、自分や身の回りで起きているコトを把握するため、さまざまなセンサーが備わっています。身体の位置や運動の状態を把握するセンサー、何かが皮膚に触れていることや身体に掛かる圧を感知するセンサーなど、例を挙げればキリがありません。
その中に、痛みを起こす刺激を感知するセンサーがあります。これは、皮膚・筋肉・骨など、身体のいたるところで見つかります。
痛みを起こす刺激を感知するセンサーにはいくつか種類があります。その中でも非特異性腰痛に関連するセンサーは、以下のような刺激を感知しています。
- 機械的な刺激
どこかの組織が伸ばされる・圧迫される・刺される・切られるといった刺激
- 化学物質
腰のどこかの組織が損傷を受けた直後に、細胞や周りの血管から化学物質が漏れ出ることがあります。また、組織を修復していく過程では炎症が起こりますが、この炎症に関係する化学物質もあり、こういった物質が痛みを起こす刺激となります。他には、直接痛みを起こさないけれども、痛みを増幅する化学物質も存在します。
- 温度による刺激
極端に冷たいものや熱いものに痛みを感じるのは直感的にも分かりやすいと思います。
次は、こうした痛みを起こす刺激が感知された後、痛みとして感じるまでの過程を見ていきましょう。
感知された刺激は電気信号へと変わり、脳へ向かう
痛みを起こす刺激が受容器によって感知されると、「感覚を伝える神経」で電気信号に変えられ、脊髄へと向かいます。
「感覚を伝える神経」は脊髄で、電気信号を「神経伝達物質」という物質に変え、脳までつながる別の神経に手渡します。この神経は神経伝達物質を受け取ると、再び電気信号を発生させます。言ってみれば、脊髄は神経の中継点というと分かりやすいかもしれません。
この中継点は、ただ神経同士をつないでいるだけではなく、痛みの強さの調整も行なっています。痛みを起こす刺激を、些細なものも含め全て脳へ送ると、脳がパニックに陥ります。それを防ぐために、中継点で本当に脳へ送るべき情報なのかを選り分けているのです。
中継点から発生した電気信号は、脊髄の神経を通って脳へと向かいます。脳の中でもいくつかの中継点を経て、最終的には脳の「痛みを感じる領域」へとたどり着きます。こうして、痛みを起こす刺激が実際の痛みとして認識されるのです。
痛みを複雑にする要素
痛みのメカニズムは、実際にはここまで単純ではありません。さらに多くの要素が関わります。いくつか例を見ていきましょう。
脊髄の中継点は、単なる神経のつなぎ目ではなく、痛みの調整を行なっていることをご紹介しました。例えば、強い痛みが長く続くと、脊髄の中継点でトラブルが生じます。
すると、痛みを起こす刺激が少なくても、脊髄から必要以上の電気信号を脳に送るようになることがあります。
何ヶ月・何年と十分な時間が経ち、損傷を受けた部分は修復されたはずなのに、いつまでも同じところに痛みが続く場合は、この現象が原因のひとつだと考えられています。
また、電気信号を脳へと伝える神経には、終点にたどり着く前に、脳の「感情や情動に関連する領域」を寄り道するものがあります。このことから、痛みが心の状態に影響すると言われています。
反対に、緊張やイライラといった精神的な状態が、痛みの強さに影響するとも考えられています。
さらに、実際に痛みを感じるかや、どの程度の痛みを感じるかは脳が決定していますが、その決定には以下のような要素も絡んでくると考えられています。
- 怪我をした時の状況
- 過去の経験
- 痛みに対する考え方
- 体質や生活環境
このように、さまざまな要素が、痛みを感じるメカニズムに関わることがお分りいただけたと思います。
腰痛も「痛み」ですので、多数の要素が影響することは容易に想像できます。
ここまで前置きが長くなりましたが、痛みは複雑であることを頭の隅に置いて、この先を読みすすめてください。
腰の痛みはどこからやってくる?
非特異性腰痛の原因についてはさまざまな可能性があり、未だ明確な答えは出ていません。しかし、機械的な刺激や組織の損傷のような、痛みを起こす刺激が関与しているだろうと考えられています。
腰痛が起こる組織については、腰まわりにある「コラーゲン繊維で構成された組織」が注目されています。コラーゲン繊維を含む組織の代表的な例としては、骨と骨をつなぐ靭帯や、骨と筋肉をつなぐ腱などがあります。そこに負荷が掛かったり損傷が起きることが非特異性腰痛の原因ではないかと言われています。
そして、特に注目したいのが、「胸腰筋膜」という下の図中の青い線で囲まれた部分です。
胸腰筋膜とは?
胸腰筋膜の構造と機能について少し詳しく見ていきましょう。
この図は胸腰筋膜を背中側から見た様子を示しています。胸腰筋膜が、脊柱起立筋群・広背筋・大臀筋(お尻の筋肉)・骨盤にある靭帯を伝ってハムストリングなど、周辺の筋肉とつながっていることが分かると思います。
また、胸腰筋膜は前葉・中葉・後葉という3つの層に分かれて脊柱起立筋群や背中の筋肉を包む構造をしています。下の図は、身体を輪切りにして上から見た胸腰筋膜の様子です。
胸腰筋膜の層は、背骨の突起部分や、背骨同士をつなぐ靭帯に付いています。
また、腹筋群とつながっていることにも注目してください。
このように、胸腰筋膜は周りの筋肉とのつながりがあることがお分かりいただけると思います。
また、胸腰筋膜は単なる筋肉の付着部というわけではありません。ここには、以下のような感覚を伝える神経とセンサーがたくさん存在します。
- 痛みを起こす刺激を感知するセンサー
- ストレスによって興奮する交感神経
- 身体の各部分の位置や運動の状態を把握するセンサー
こうした神経とセンサーは、いずれも腰痛の発生と関連があるかもしれないと言われています。
筋肉の構造
胸腰筋膜には多くの筋肉とつながりがあることを見てきました。このことから筋肉が正常に機能することも、腰痛の発生に重要な意味を持つと考えられます。ここでは、筋肉の構造をサッと見てみましょう。
筋肉は、筋線維が何本もまとまった束がたくさん集まって構成されています。
筋線維、筋肉の束、そして筋肉の周りは、胸腰筋膜で見られるような「コラーゲン繊維を含む膜」に覆われています。
この膜は、末端部分に行くにしたがってコラーゲン繊維の密度が高くなり、胸腰筋膜や腱へと、途切れることなくつながっています。
ひとつひとつの膜は、完全に独立して筋肉や筋線維を覆っているわけではなく、隣り合う膜同士でつながりがあり、筋線維が発揮した力を腱や胸腰筋膜へと伝える働きを持っています。
胸腰筋膜と筋肉は協調する
胸腰筋膜と筋肉がつながっている構造から、脊柱起立筋群のような胸腰筋膜とつながりを持つ筋肉が力を発揮すると、以下のことが起きると考えられます。
- 筋肉が収縮し力を発揮する。
- 発揮された力は筋肉を覆う膜を介して、胸腰筋膜へと伝わる。
- 胸腰筋膜に伝わった力は、運動の内容に合わせて姿勢の安定に関与したり、周辺の筋肉へ力を伝えたり、背骨を動かしたりする。
このように、胸腰筋膜と筋肉は協調していることがわかると思います。さらに腰だけではなく全身の動きに目を向けてみれば、各部位の筋肉が適切なタイミングで収縮と弛緩をすることで、調和のとれたスムーズな運動が起こることが想像できると思います。
腰痛が起こるメカニズム
では結局のところ、なぜ非特異性腰痛は起きるのでしょう?
この問いには、必ずしも明確な答えがあるとは言えません。ここでは、現時点で腰痛を引き起こす可能性があると考えられているメカニズムをいくつか見ていきましょう。
メカニズム例1:筋肉を覆う膜にできる「癒着」
筋肉を覆う膜と膜はつながっているわけですが、何らかの理由によって膜と膜の連携がうまくいかなくなったり、力の伝わりが悪くなったりすることがあります。この状態は、「癒着」と呼ばれます。
癒着は、いろんな筋肉をつなぐ胸腰筋膜だけでなく、図6で紹介した個別の筋肉にある膜でも起こります。癒着は、筋肉をおおう膜と膜のつながりが一部に偏って強くなりすぎたり、膜と膜の間の動きが悪くなったりすることで起こりますが、以下のような原因が考えられています。
- 機械的な負荷
- 炎症
- ストレス
癒着があると、筋肉が収縮するときにとなり合う筋肉が動きを邪魔しあい、筋肉が収縮・弛緩するタイミングがズレると考えられています。
筋肉の収縮するタイミングがズレると、発揮した力がいつもとは違う場所へ伝わり、胸腰筋膜の一部に負荷が集中して掛かります。場合によっては、この負荷によって微細な損傷を受ける部位が出るかもしれません。このような結果、腰痛が起こると考えられています。
メカニズム例2:胸腰筋膜内にできる癒着
また、胸腰筋膜の内部にできる癒着も腰痛の元になるかもしれないと考えられています。このメカニズムを詳しく見ていきましょう。
図5では、胸腰筋膜が周りの筋肉を取り囲むように前葉・中葉・後葉という3層の構造になっていることを紹介しました。この3つの層をさらに拡大して見ると、場所によってはいくつかの薄い膜で構成されています。
この薄い膜は、腰を曲げたり伸ばしたりして動かす時に、お互いがスライドするように動きます。
ところが、慢性的に腰痛に悩まされる人は、膜同士がスライドするときの滑りがよくないことが見られます。この滑りの悪さは、膜の間に作られる癒着が原因だと考えられています。
膜同士の滑りが悪いと、「膜と膜の間が引っ張られる」といった機械的な刺激を起こします。胸腰筋膜には、痛みを起こす刺激を感知するセンサーが多く備わっているので、膜が引っ張られることで生まれる刺激が腰痛につながると考えられています。
また、この滑りの悪さは膜が動く方向によって変わることがあります。このことから、身体の動かし方によっては膜の滑りに問題がなく、ほとんど痛みが出なかったり、逆に痛みが出たり悪化したりするということが考えられます。
慢性的な腰痛に悩まされる人では、実際に膜の滑りが悪いことが見られています。この場合、膜の滑りの悪さが腰痛の原因になっている可能性が考えられます。しかし、場合によっては、腰痛は他の原因で起きていて、痛みを避けるために身体を動かさなくなっているという状況も考えられます。この場合には、運動不足の結果として、膜の滑りが悪くなっているだけという可能性も考えられます。
メカニズム例3:睡眠不足や疲労
睡眠不足の時は、頭ではいつもと同じように身体を動かそうとしていても、なかなか思うようにはいかないようです。睡眠不足により、外部から受ける刺激への反応が遅れたり、疲労感や眠気などの悪影響を受けたりすることが見られます。
筋力トレーニングでは、このことが原因で筋肉の力を発揮するタイミングがズレたり、予期せぬバランスの崩れに対応できなかったりすることで、組織が損傷を受けることが考えられます。
また、疲労時のトレーニングにも注意が必要かもしれません。例えば、筋肉に疲労のない時とある時とでは、同じ動作を行っても身体の動かし方が変わることがあります。
このような睡眠不足や疲労の結果、身体を動かす時のタイミングがズレやすくなることで、腰痛につながりやすいと考えられます。
メカニズム例4:ストレスからくる血行不良
胸腰筋膜には、ストレスによって興奮する交感神経が多く確認されています。これが、腰痛に関わっているかもしれません。
精神的・肉体的に掛かるストレスによって興奮した交感神経は、次のような働きをします。
- 筋肉へ向かう血管を拡げ、血流を増やす。
- 胃などの内臓へ向かう血管を細く縮め、血流を減らす。
胸腰筋膜周辺に見られる交感神経は、ストレスによって興奮すると、血管を細く縮めて血流を減らすと考えられています。この状態が長く続くと、以下のようにして腰痛が起こるかもしれないと言われています。
- 血行不良によって、胸腰筋膜の組織へ酸素が十分に行き届かなくなる。
- 酸素を必要とする代謝が滞り、代謝物質が溜まる。
- 代謝物質が痛みを起こす刺激として感知される。
- 腰痛となる。
精神的なストレスを受けると腰痛が悪化するという話をときどき聞きますが、このメカニズムが影響しているのではないかと考えられています。
メカニズム例5:身体の位置や運動状態を把握するセンサーが鈍る
「身体の位置や運動状態を把握するセンサー」の機能低下は、痛みの強さと関連性が見られています。
運動不足などによって身体を動かさないと、このセンサーの機能が低下し、腰痛が起こりやすくなるかもしれないと考えられています。
ここまでにご紹介してきたのは、現在考えられているメカニズムであり、今後の研究でちがった事実が明らかになる可能性はあります。また、腰痛の発生には、ここにご紹介した以外にも多くの要因があることは十分考えられます。
しかし、ここまでにご紹介したメカニズムから、筋力トレーニングによる腰痛のリスクを減らすために普段から心掛けることが見えてきそうです。
腰痛のリスクを抑えるために普段から心掛けること
身体をよく動かす
運動が腰痛のリスクを低くすることが見られています。
胸腰筋膜には、身体の位置や運動状態を把握するセンサーがあります。このセンサーの機能が鈍ると、痛みにつながるかもしれないと考えられています。身体を動かすことでセンサーの機能を維持し、腰痛予防につながるかもしれないと言われています。
さまざまな運動を取り入れることは、センサーへの刺激のバリエーションを増やすことにつながるかもしれません。ひとつの運動だけにこだわらず、自分が楽しいと思うことをイロイロ行うようにしてみてください。
筋力トレーニングに限定して言うと、「スクワット系」「ヒップヒンジ系」「プッシュ&プレス系」「プル&ロウ系」のトレーニング種目を偏りなく行うことは、悪い考えではないと思います。
運動以外の調整方法を取り入れる
身体の位置や運動状態を把握するセンサーは、運動以外の調整方法でも機能を維持できるかもしれません。
例えば、筋肉を圧したり揉んだりすることで、このセンサーの機能維持につながる可能性が考えられています。このことから、フォームローラーを使って筋肉を圧したりマッサージしたりするのが役に立つかもしれません。
よく眠り、よく休む
質の高い十分な睡眠や、疲労を残さないことも重要です。
睡眠不足の場合や、筋肉に疲労が残っている状態では、身体が思うように動いてくれない可能性があり、それが怪我のリスクを高めることにつながります。
ストレスを溜めない
ストレスを和らげることがどれだけ腰痛予防に効果があるのか、まだハッキリとは解明されていません。しかし、長い目で見てストレスを低く保つことができれば、ストレスによる血行不良を防いだり、胸腰筋膜やその周辺組織に癒着が作られるのを抑えられるかもしれません。それが、結果として腰痛予防につながるという可能性が考えられます。
ストレスを和らげることと睡眠は、筋力トレーニングの効果を上げるためにも重要ですが、この2つの要素は、腰痛が起きるリスクを低く抑えるためにも大切だと思います。普段から身体を動かすことも含めて身体の調子を整えることは、どれも時間や労力をあまり掛けずに実施できます。ぜひ普段の生活に取り入れてみてください。
次回予告
今回ご紹介した腰痛のメカニズムの中には、筋膜が原因であると考えられているものがありました。
筋膜といえば、フォームローラーを用いたセルフ筋膜リリースというコンディショニング法が流行っています。この方法は、認知度が上がってきている一方で、間違った情報から危険なやり方で行われるのを目にします。
次回の記事では、本橋がセルフ筋膜リリースにまつわる誤解を解き、効果的な使い方に迫ります。河合先生の記事の続編はその次になります。
どうぞ、ご期待ください!
文責:本橋
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AthleteBody.jpは医学的な情報を取り扱うサイトではありません。記事冒頭でも触れたように、多くのトレーニーが悩むトピックなので、今回は特別に河合先生にご協力をお願いしました。各個人の腰痛の症状や対策について、コメント欄でお答えすることはできませんのでご理解ください。
この記事もしっかりと作られてますね。
ただ日本人にはなじみが薄いですが
ストレスは本来”刺激”の意味なので
すべて人間に受ける刺激を指してしまいますからね。
また、とある国営放送の番組実験によると
単純作業を繰り返すとそれほど腰に負担はかからないものの
時間に追われて同じ単純作業を行う場合や
単純作業を行っている最中に違う事を考えながら行う場合など
では
腰にかかる圧力が心理的に膨大に変化するという結果が出ていますね。
ついでに、スピリチュアルの世界では腰痛の心理的原因は
金欠だそうです、、、
確かに、これならどんな筋トレも筋欠に追い込まれそうですね
永野さん、コメントありがとうございます。
>ストレスは本来”刺激”の意味なので
すべて人間に受ける刺激を指してしまいますからね。
おっしゃる通りですね。
その意味合いになじみがない方も多いと思いましたので、今回の記事に関しては、あえて皆さんにとって分かりやすい表現にしました。
>腰にかかる圧力が心理的に膨大に変化するという結果が出ていますね。ついでに、スピリチュアルの世界では腰痛の心理的原因は金欠だそうです、、、
心理的な要因やそのほかの要因は、腰痛の程度に大きく影響しているようですね。腰痛をよくするために、これら要因をどう理解すればいいのかは、専門家でなければとても難しいように感じました。
本当に奥が深いトピックですね。
私事ですが、半年ほど前にスクワットやデッドリフト等の刺激が繰り返し加わった膝の滑膜が肥厚し脚のトレーニングが一切出来なくなり、脊柱起立筋が弱くならないようにとバーベルロウの頻度を増やしたところ今度は腰痛が発症し、去年は踏んだり蹴ったりの年でした。
今回の記事はそんな私が最も知りたかった内容が網羅されており大変助かりました。
今年も「科学的なエビデンスに基づいた」記事づくり頑張って下さい!!
(個人的には積極的な休養をとる年にしたいと思います。笑)
冴木さん、コメントありがとうございます。
>去年は踏んだり蹴ったりの年でした。
昨年はいろいろと大変だったのですね。どうぞお大事になさってください。
筋力トレーニング中に起こる腰痛について、ここまで語り尽くした記事はなかなか見当たらないと思います。
この記事で、冴木さんの知りたかった内容をお届けすることができて嬉しいです。
今後も中身の濃い、エビデンスに基づいた記事づくりを頑張っていきますので、どうぞよろしくお願いします。
今回はSkypeを使った国際電話でインタビューをさせていただき、電話で伺ったお話を文章にして記事にまとめる作業は私が担当しました。
インタビュー中に河合先生からお話しいただいた専門的な内容を、ひとつひとつ確認しながら作業を進めてきました。
この専門的な内容は、「痛みのメカニズム」「腰の構造」「腰痛について」など多岐にわたります。それぞれにおいて深い理解が必要とされました。
インタビュー中に先生が使われていた言葉の背景には、こうした膨大な知見と深い理解があったのだと感銘を受けました。また、私自身にとって大変勉強になりました。
非常に高いレベルの専門性をお持ちの河合先生に心意気ひとつでご協力いただけたことに本当に感謝です。
はじめまして。
脊椎専門病院の理学療法士をしております。
いつも楽しみに記事を拝見しています。
痛みの生理学は非常に奥深い学問で、医療従事者でも正しく理解している人間が多くない中、非常に勉強されている内容であると感じ、思わずコメント致しました。
小職も痛み学を学び、日々腰痛と相対する中で俗に言う「筋膜」の治療を行うこともあります。
ご如才ないことと思いますが、世間的に認知されている筋膜リリースは非常にキャッチ―なテクニックと紹介されますが、現実はそんなに単純な話ではないことが多く、膜組織の組織学的な変容は、メディアで紹介されるようなセルフリリースなどではなかなか改善されません。
本来正しく専門的であった内容を曲解して理解し、発信する人も多く、残念ながら、我々理学療法士にもそういった表面的な知識を盲信してしまう者が少なからず存在します。
筋膜リリースがメディア等でもてはやされるようになり、運動器の健康への関心が高まっていることは素直に喜ばしいことと思いますが、誤った情報が氾濫している現状を危惧もしています。
貴サイトの発信により、正しい知識が広く周知されることを期待しております。
第2弾も楽しみにしております。
ASIさん、はじめまして。コメントありがとうございます。
>痛みの生理学は非常に奥深い学問で、医療従事者でも正しく理解している人間が多くない中、非常に勉強されている内容であると感じ、思わずコメント致しました。
そう言って頂けるととても嬉しいです。
私もこの記事をまとめるのにあたり、痛みの科学について一から徹底的に勉強しました。とても奥が深く複雑な内容で、無責任に発信できないことだと再確認しました。
>貴サイトの発信により、正しい知識が広く周知されることを期待しております。
第2弾も楽しみにしております。
セルフ筋膜リリースは、とても誤解が多いトピックですね。次に公開するセルフ筋膜リリースの記事では、現時点で「科学的に言えること」と「そうでないこと」を切り分けて、しっかりとした情報を発信していきたいと思います。
また、腰痛の記事第2弾もどうぞご期待ください。