体脂肪を落とすにしても、筋肉を増やすにしても、目標達成に向けて前進していくには、経過を見て自分がどこに居るかを知るのが欠かせません。
「もっと体重が落ちて欲しい」とか「筋力が上がっていると思いたい」など、感情に左右されず、客観的に状況を見て、何か変える必要があるかを考えるのが大切です。
4週間ごとの区切りでデータを振り返って目指す方向に進んだかチェックします。要点を押さえればとても難しくはありませんが、体重計と鏡だけでは正確に判断ができません。今回はなぜ経過チェックが大切なのか、何をチェックすれば良いのかを紹介します。
なぜ経過観察が大切か?
経過チェックの必要性をお話するのに、アンディのまわりで実際にあったエピソードを紹介したいと思います。
アンディの通うジムでトレーナーをされているルイさんという方が、自身2回目のボディビルイベントに向けて減量をされていました。イベントが近付いているのに体脂肪12%あたりから思うように進まないと悩まれていました。
アンディがそこまでの経過を聞いたところ、ルイさんの経過チェックの方法は体重計と鏡で腹筋の割れ具合を見ているということでした。
アンディはその日もう一度ジムへ戻り、ルイさんに経過チェックの重要性を話し、手元に1つだけ残っていた予備のテープメジャーをルイさんに渡し、使うよう頼みました。
ルイさんはクライアントではありませんが、彼の懸命な姿にアンディは何かせずにはいられなかったようです。
それから8週間たったある日、アンディが自分のトレーニングを終えようとしていると、ルイさんがペンとメモ帳を片手に「真剣にリーンゲインズについて教えて欲しい」とやって来ました。
彼の服をまくってみると、体脂肪はおよそ9%。イベントはあと1週間後にせまり、いまから取り返せないことはルイさんも分かっていました。どんな食事をしているのか聞いてみると…。
ルイ:毎日鶏ムネ肉を約300グラム。炭水化物を約100グラム。脂肪はゼロかできる限り少なくしている。
アンディ:じゃ、だいたい1日1000kcalくらいだね。脂肪が落ちなくなったのは、基礎代謝が落ち込んでしまったからだよ。それ以上食べる量を減らすこともできないし、おそらくだけど、性欲も感じなくなってるんじゃない?
ルイさんの顔がドンピシャと語っていました。イベントの後、アンディにダイエット指導をして欲しいということになりました。
ルイさんの間違いは、身体の変化が見えなくなったところで、どんどん食べる量を減らしてしまったところにあります。
1.鏡に目に見える変化はないとき、実際のところダイエットは進んでいるか?
2.体重計の数字が変わらないのは、脂肪が減らないからか筋肉が増えたからか?
経過観察をするときは、この2点に答えを出せることが大切です。感情的な動揺に左右されないよう、客観的に分析する必要があります。
アテにならないチェック法
一般的によく使われているけど、実はアテにならない方法が2つあります。少なくとも、どういう欠点があるか頭に入れておきましょう。
鏡に頼らない
まずは鏡。ダイエット中に鏡が気になるのは自然なことです。ただ、リーンゲインズのように食事サイクルをつくるダイエット法では、混乱のもとにもなります。
特に腹筋の割れが見えるくらいに脂肪量の少ない人は注意が必要です。日によってや、同じ日でも時間帯によって、身体が締まって見えたり、太って見えたりするからです。1週間の中でも体重に波が出てきます。
大きな要因は体内水分量です。炭水化物を1グラム摂ると、それにあわせて3〜4グラムの水分が身体に吸収されます。カーボサイクリング(炭水化物の摂取量を変えること)によって体重が上下するワケです。
体組成計を真に受けない
体組成計はいろんなメーカーから出ていて、体脂肪率を測るには安くてお手軽な方法ですが、残念ながら正確な数字を出すことができません。
体脂肪の計算に体内水分量が大きく影響します。上に書いたように身体の水分量は一定しないので、体組成計に出てくる数字も頼りにならなくなります。
「先週16%だったのに、今日は18%だって?!ダイエットなんてやってやれるか!」なんてコトも十分ありえます。
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- 一般に気軽に買える製品は、測るときの条件を揃えても正確性に欠けます。
- 高価な医療用の製品を専門家が使っても、正確な数値が出ないことがあります。そのため十分な研究体制と資金の整った試験では使われていません。
これら2つに共通する問題点はチェック結果がブレるというコトです。体脂肪測定についてまわる誤差については、このシリーズ記事で徹底的に紹介しています。
ブレのないデータを集めて客観的にチェックすることが、ダイエット成功には不可欠です。
オススメのダイエット経過チェック法
実際の体脂肪率が何パーセントかは大切ではありません。では、ブレないデータを採るにはどうすれば良いのか?チェック項目をいくつか紹介します。
メジャーで身体のサイズを測る
週に1回、身体9ヵ所のサイズを測りましょう。
身体のラインに沿う柔らかいメジャーが必要です。
誰かに計測を頼むと、人によって測り方にブレが出ます。いつも同じ人にお願いできる状況でない限り自分で測るようにしましょう。
自分で測るのにメジャーがうまく使えない人には、写真のテープメジャーがオススメです。
ブレないことが大切なので、測る方法や時間を揃えて、毎回同じ条件になるようにしましょう。
体重を測る
体重が測れれば良いので、体組成計でなくて構いません。週に1回、朝起きてトイレの後、何か飲んだり食べたりする前に測りましょう。日によって体重は波が出てくるので、毎日測ってその平均値を記録するとより正確です。
体脂肪が落ちていても、筋肉が増えていれば体重が変わらなかったりするので、体重計だけに頼るのは良くありません。
4週間ごとに写真を撮る
身体の正面と横から撮ると良いでしょう。写真の撮影間隔は毎週、2週間ごとなどもできますが、4週間間隔で比べるのが一番分かりやすいと思います。
メイン種目のトレーニング結果の記録を付ける
BIG3などトレーニングの中心になるコンパウンド種目の記録を採りましょう。
筋力と筋量はほぼ比例するので、筋力が上がれば筋量も上がっている、筋力が維持できていれば筋量も落ちていないという目安になります。
比較できるようにセット間休憩やフォーム(スクワットの深さetc.)などの条件を揃えるようにしましょう。
その他のチェック項目
食事管理の達成度、トレーニングの実践度、睡眠の質・時間、ストレス、空腹感を評価して週ごとに見比べられるようにしておきましょう。
自分で経過チェックするときの注意点
身体の計測サイズ
- 体脂肪率が15%を切るくらいになると、腹筋上部から割れが見え始めます。
- 炭水化物と塩分の摂取量が変わると体内水分量が変わります。この影響に惑わされないよう、3〜4週間分のデータを集めて傾向を見るようにしましょう。
- 女性は身体のサイクルにあわせて体重の波が出ます。4週間ごとに区切ってデータ比較するようにしましょう。
- 4週間経って体重に変化が無い場合は、筋力が上がったか、お腹まわりのサイズが落ちたかをチェックしましょう。
- 腹筋の割れが見えるくらいまで締まってきたら、1週間の内に身体がカッコよく見えるタイミングをつかんでうまく利用しましょう。
モデルやステージに立つ仕事の方、もっとありそうなところではプールに遊びに行くときなど使えます。
トレーニング記録
- トレーニング記録が伸びていれば筋肉量が増えていることが多いです。
- 筋肉が増えると体脂肪が減っていても体重計の数字が変わらないことはよくあります。
- 筋力の高いトレーニング経験者は、減量中に筋肉量を上げることは難しく、トレーニング記録維持が目標になります。
ただし、体脂肪が落ちると、可動域が広くなったりすることで、筋肉が落ちていなくともトレーニング記録の数字が落ちることがあります。トレーニング上級者が大きく減量をするときは、ある程度トレーニング記録が落ちる覚悟が必要でしょう。
毎日くり返したくさんの人のデータを見比べるうちに、ダイエットの進み具合や傾向を見極められるようになりました。サイト上の記事では理屈の話をたくさんしていますが、この経験を基に指導できるのがパーソナルコーチングの大きな強みです。
すべてを文字にして伝えることはできませんが、この記事を読まれる方のモヤモヤが少しでも晴れれば嬉しいです。
減量を止める基準はなんでしょうか?
当初、筋肉がつきやすいと言われる体脂肪率10%と考えていましたが、13%から体組成計の動きと、体重とウエストの減りが比例していません。
gotoさん、コメントありがとうございます。
減量を止めるタイミングに絶対的な決まりごとはなく、状況によって変わってくると思います。
一般的な体形改善を目的に減量をされているのであれば、ご自身が納得できるかどうかを基準とされるのが良いかと思います。
減量のあとに増量に切り替えるおつもりであれば、体脂肪が多い状態から増量を行うのは避けられると良いかとは思います。
体組成計の数字はあまり当てにならないことが多いのですが、ボディビルのコンテストに出場する選手のようにギリギリまで絞り込んでいる必要はないと思います。
ご回答ありがとうございます。
方針を整理できました。当初減量目標値(体脂肪率10%の体重)まで落とします。
ためになる情報ありがとうございます。
一つ質問なのですが
筋トレをする際にパワーベルトを巻いて、トレーニングしております。
以前と比べると、ベルトを止める位置が2.3個多く締めれるようになりました。
これは、お腹の脂肪が減ってきてると考える一つの目安でも良いのでしょうか?
YUKIさん、コメントありがとうございます。
>以前と比べると、ベルトを止める位置が2.3個多く締めれるようになりました。これは、お腹の脂肪が減ってきてると考える一つの目安でも良いのでしょうか?
ザックリとしたひとつの目安にはなるかもしれませんが、必ずしも体脂肪の変化だけが影響しているとは限りません。というのも、ベルトを締めるときの穴の位置は、次のような条件によっても変わってくるからです。
確実に体脂肪の変化を知るためには、この記事でご紹介した方法で身体のサイズを定期的に計測するのが理想的です。
1つ質問し忘れてました^^;
減量時、定期的に身体のサイズ測っていますがゆっくり減量でもお腹周り以外の腕や胸囲、脚も筋力、筋量落ちていなくても少なからずサイズダウンしてしまうのでしょうかー?
RYUさん、コメントありがとうございます。
減量をする時は全身から体脂肪が落ちていきます。筋量を維持したままであっても、体脂肪が減ることでお腹周り以外の部位はサイズダウンしていきます。
参考になると嬉しいです!
やはり全身から体脂肪が落ちていくんですね〜!
身体が小さくなってしまうのは残念ですが、今後も無理なく少しづつ減量頑張りたいと思います。
ありがとうございますm(_ _)m
お世話になります!
GWの連休で少し太ってしまったので2週間前から軽く減量始めました。
炭水化物を増量時より100g減らす程度にしてストレスなく週に0.5kg程度体重が落ちてきています。
ゆっくり減量していて身体はエネルギー不足だと思いますがなぜかBIG3の使用重量が伸びています!
減量時に筋量が増えることは理論的にはありえませんよね!?
使用重量が増えて嬉しいのですがちょっと不思議に思ったのでコメントしました。
減量時でも気合と根性で筋量アップとかあるのでしょうか?(笑)
よろしくお願いしますm(_ _)m
RYUさん、ご無沙汰しています。コメントありがとうございます。
>ゆっくり減量していて身体はエネルギー不足だと思いますがなぜかBIG3の使用重量が伸びています!
素晴らしいですね!
RYUさんが減量を始めたばかりで体脂肪量が多いのであれば、摂取カロリーが不足していてもトレーニングで前進が見られることがあります。そのまま質の高いトレーニングをされてください。
>減量時でも気合と根性で筋量アップとかあるのでしょうか?
減量中は少しずつ筋量が落ちていくのが普通です。しかし、トレーニングレベルや栄養状態などの条件によっては、減量中に筋量が増える場合もあります。
今RYUさんが筋量を増やせているかは判断できないですが、少なくとも筋量を維持できている可能性は高いと思います。
減量ガンバってください!
こんにちは、ダイエット経過で悩んでいます。
2ヶ月経ち、体脂肪は32から26へ落ち、筋肉量は37から40キロに増えました。
体重は変わらず58キロのままです。
扱う重量もそれぞれ10キロ〜15キロ程重くなり、筋肉の増えは感じています。
ただ、自分では見た目の変化がわからず、また、メジャーで測ってもどこも落ちていません。
私の身体には何が起こっているのでしょうか?
1日のタンパク質は150g〜
脂質は30〜50g
炭水化物は50〜150gです。
どこを調べても同じような人は居らず、途方に暮れています。
一番自分が信じているアンディさんや八百さんのこのホームページで解答をいただければ励みになると思い思い切って書き込みしました。
よろしくお願い致します。
ちなみに性別は女です。
すみません、コメントの注意書きを見逃していました。
記事の内容や質問ではなかったので、スルーしてくださって大丈夫です。
まきさん、こんにちは。
気を遣っていただいてありがとうございます。記事以外のことはすべてお断り!ということではないんですが、同じ数字でも個人の状況によって意味合いが変わってきたりするので、一般論としてお話できる範囲にさせていただいていますm(_ _)m
それを踏まえてですが、おそらく筋肉が増えて体脂肪が落ちてきたという状態なのかと思います。
体重や身体のサイズが落ちてきていないのは、筋肉が増えた分が体脂肪が落ちたのを相殺してしまっているのかもしれません。
それから、体内の水分量が一時的に増えているのかもしれません。女性は毎月のサイクルに合わせて水分量が変わる人が多いので、むくみが無いかもポイントです。
できるだけ体重と身体のサイズの測定条件を揃えるようにして、続けてみてください。4週間前の同じ日と比べるようにすると、変化が分かりやすくなるかもしれません。
ガンバってください^^
八百さん、お答えありがとうございます!
脂肪が減った分、筋肉が増えてサイズすら相殺する可能性もあると聞いて安心しました。
(確実にマイナスカロリーで減量している筈なのですが)メキメキ重量が上がっていて、トレーニング自体楽しくてしょうがないので、このまま続けてみます。
今日はついにチェストプレス40kg10RMをクリアしました!
またこのサイトの記事を読み返しながら出来ることを頑張ります!
そういえば生理前などで水分量が変わることを忘れていました…
筋トレ後に測るのも良くないのかも知れませんね。
また測定条件を考え直して測ってみます。
写真はとっているのですが小さすぎてイマイチ分かりづらく…これもいい方法がないか考え直してみます。
それでは、筋肉が凄いスピードで肥大してると信じて今日も頑張ります!
ありがとうございました(*^^*)
八百さんこんにちは
堀切謙樹と申します。
栄養摂取について教えてください。
私は身長168センチで55キロ48歳です。
十分に痩せているので筋肉をつけたいと思っています。
リーンゲインズでは8時間で食事を終わるようにご指導されていますので、
これを朝の四時とお昼の11時にしても筋肉は増えるでしょうか。
筋トレは夕方6時から約1時間です。
基礎代謝から計算すると1日2500kcalほどとるようになりますので、
これを守りたいと思います。
誠に勝手ながら、ご回答いただければ幸甚です。
堀切
堀切さん、こんにちは。
食事の時間帯による影響は限られているので、十分な食事量を確保できていれば筋肉は増やせます。
以前にお話を伺ったころから大きく体重が増えていないようですが、ずっと大きな変化なく来られているなら、食事量が足りていないのかもしれません。
もし、1日2食で必要量を食べきるのが苦しければ、8時間にこだわらず食事回数を増やしていただくのも良いと思います。
メジャーで身体のサイズを測る際は力を入れた状態で測るのでしょうか?
どちらでも良いですが、測定条件を変えないことが大切です。
お腹は無理にヘコませず、腹筋を引き締めた状態、他の部位も力を入れた状態の方が安定するかと思いますが、ブレなく計測できることを大切にしてください。
初めまして
いくつかの記事を読んだのですが以下の項目のつながり?が自分の頭で整理できなかったので質問させていただきます
・食事量1000kcal/日の生活を続け、ルイ氏の基礎代謝は下がった
・代謝適応とは、カロリー低下によるホルモンの変化で起こり、戦時中の実験では
基礎代謝が15%落ち込んだ
・ダイエット休みは長期ダイエットによって落ちた基礎代謝をある程度回復させる
ルイ氏に起きたのは代謝適応による基礎代謝の低下ですか?
もしそうなら…
極端とも思える戦時中の実験での基礎代謝の落ち込みが15%であるのに、ルイ氏はそれを超える基礎代謝低下が起きてしまったのでしょうか?
違うなら…
ルイ氏のように(ダイエット前の)基礎代謝の半分程度のカロリーしか摂取しないような無理なダイエットでは、数週間で基礎代謝は何割も落ちてしまうのでしょうか?
リーンゲインズの「+10%/-35%減量」を実践しているのですが大体どの程度基礎代謝が落ちるのか気になってしまって困っています
(経過チェックによる観察が重要なのは百も承知なのですが…)
もし解答の説明が専門的過ぎるなら簡単にでも構わないのでよろしくお願いします
長文失礼いたしました
ヒガシさん、初めまして。
ルイさんに関しては、このときクライアントさんとしてダイエット指導をしていたのではなく、アンディが本人から聞いた話をまとめただけなので、細かい数字をすべて把握していたワケではありません。
基礎代謝の落ち込みに関しては、15%〜20%程度までで、ダイエット休みで完全ではなくとも回復できる効果は大きいと考えるコーチが多いです。
ただ、体脂肪が落ちていても身体の水分が抜けずに変化が見えなくなることや、ストレスで脂肪燃焼が進まなくなることも考えられます。
この記事でも似た話を取り上げていますが、趣旨としては、細かい数字の計算よりも(計算通りに進まないことはいくらでもあるので)、経過を見るにはいろんな要素を考え合わせる必要がありますよということですね。
解答を頂いてスッキリしました
理想の体型を目指してこれからも精進していきます!