ピリオダイゼーションと超回復

1ページ目は一般的に言われる超回復というコンセプトと、筋力アップの基礎的な知識を書きました。わざわざ当サイトを選んで読んでくださっているベテラン選手の方々には、お付き合い頂いてありがとうございますm(_ _)m

ウェイトトレーニングをしばらく続けると、トレーニング記録(筋力)が伸び悩む時期がやって来ます。始めて間もない頃のように、トレーニング日ごとに右肩上がりで記録が伸びて行くというのは期待できなくなります。これが中級者・上級者のゾーンに入った証とも捉えることができると思いますが、ここから先への筋力アップ・筋肥大に向けたプログラムとして、マーク・リプトーはピリオダイゼーションを勧めています。

筋力の伸び方と遺伝的限界

絶対的な筋力という意味では個人差が大きくありますが、誰しも永遠に強くなり続けられるワケではありません。各自、遺伝的な筋力の限界があり、そこに近付くほど筋力は伸びにくくなります。

超回復 筋力の伸び方

上のグラフはリプトーの著書に掲載されている物を簡潔に再現した物です。初心者〜上級者へとトレーニングを続けるごとに、生まれ持った限界に近付き、筋力の伸びが緩やかになって行くのが分かります。それに合わせて、さらに筋力を伸ばすには複雑なプログラム作りが必要になるということです。

レベル分けの考え方

本人の遺伝的な限界にどれだけ近付いているかがポイントですが、例えば「ベンチプレスが何キロ挙げられれば中級者」というような目安の数字は当てはまらず、「漸進性過負荷の法則に応じてトレーニング負荷を上げる(筋力を上げる)のに必要な時間」を基準に考えます。

初心者

ウェイトトレーニング開始から数ヶ月間、週3回のトレーニング日ごとに重量を上げていくことで筋力を上げることができる。トレーニング間隔は48時間を基本とし、筋肉痛や疲労度合いによっては72時間の休息を取ることもある。1ページ目の内容にほぼ該当。

中級者

48時間〜72時間のサイクルで筋力を伸ばせなくなって来た段階。週3回でトレーニングをしつつ、1週間単位で筋力を伸ばすプログラムが効果的。

上級者

1週間単位のサイクルで筋力を伸ばせなくなってきた段階。週3回でトレーニングをしつつ、数ヶ月単位で筋力を伸ばすプログラムが必要になる。

中級者のピリオダイゼーション(The Texas Method)

週3回のトレーニング日ごとに、ボリューム(セット数)と強度(重量)を調節。1週間単位で超回復を起こし、筋力アップを図るプログラムです。
ピリオダイゼーションとしてはかなりシンプルな構成ですが、リプトーは「初心者の域を出たトレーニーには非常に効果的で、数ヶ月にわたって筋力の伸びを期待できる」と語っています。
下記のイメージグラフでは、月・水・金のスケジュールを使っていますが、月曜日と金曜日で扱うウェイトが毎週少しずつ上がっていく状態を目指します。

中級者 超回復 ピリオダイゼーション

月曜日:高ボリューム・中強度

5回x5セットがギリギリこなせる重量設定。トレーニング全体で身体に掛かるストレスはこの日が最大になる。ボリューム・強度の設定は種目を問わず応用可能。

水曜日:中ボリューム・低強度

月曜日の80%程度を目安に強度を落として5回x2セット。この日は月曜日のトレーニングからの回復を妨げない程度に負担を抑えつつ、神経系の伝達効率を落とさない程度に筋肉に刺激を与えることがポイント。
身体を動かすことで筋肉への血流が良くなり回復を促す効果も期待できる。

金曜日:低ボリューム・高強度

5回x1セットの記録更新にのぞむ。月曜日のトレーニングの疲労から回復し、筋力アップを確認するためのトレーニング日。次週の月曜日に疲労を残さないようボリュームは抑えつつ、1週間で最大の重量を扱う。

上級者のピリオダイゼーション(The Pyramid Model)

1週間単位のプログラムで筋力が伸びなくなってきたら、いよいよ上級者ゾーン。2ヵ月を1サイクルとして、さらに前期4週間・後期4週間に分けてプログラムを組み立て、8週目の金曜日に最大筋力アップを狙います。
リプトーいわく「使用重量以外はそのままの構成でこのプログラムを繰り返し、何ヶ月にもわたって筋力を上げていくことも期待できる」ということ。

上級者 超回復 ピリオダイゼーション

前期4週間:ローディング期

上級者 超回復 ピリオダイゼーション 前期
5回5セットを4週間にわたって重量を変えながら行う。強度を下げるのは週に1回だけとなり、中級者のプログラムと比べると1週間のボリュームはかなり大きくなる。
この前期4週間全体で中級者の月曜日と同じ役割を果たすと考えることもできる。
トレーニングで身体に掛かるストレスも大きく、4週目には予定通りのメニューをこなすのが難しくなる可能性もあるが、4週目終了時に余力のある場合には、このサイクルをもう1週間延長し、5回5セットの新記録を狙うことも可能。

後期4週間:ピーキング期

上級者 超回復 ピリオダイゼーション 後期

全体でのボリュームを落として身体に掛かるストレスを小さくすることで、前期4週間で蓄積した疲労が徐々に回復し、パフォーマンスが上がっていく。
この後期4週間が中級者プログラムの水曜日・金曜日にあたると考えることもできる。
8週目の金曜日には、これまでの100%(1RM)の重量で3回挙上に成功、筋力アップを狙う。この後期4週間でも疲労の蓄積が大きければ、期間を1週間長く取り回復を促すことも可能。

ピリオダイゼーションの留意点

今回のピリオダイゼーションのプログラムはマーク・リプトーの著書で多数紹介されている中から最もスタンダードとされている物を抜粋して紹介しています。
もともと200ページある本の内容をこの1ページに凝縮していますので、かなり簡略化されていることはご了承ください。

重量・回数設定は臨機応変に

回数設定は5回5セットを標準として紹介していますが、これは絶対のルールではなく状況に応じて変更可能です。ローディングに10回3セットや、ピーキングに5回1セットといった設定も考えられます。

十分な食事量が前提

このピリオダイゼーションはカロリー収支がプラスになっていることが前提になっています。減量中など、食事制限をしていると身体の回復力が落ちるので、プログラム通りに進められない可能性は十分考えられます。
ベテラン選手の減量中には筋力を落とさないことを優先し、リバースピラミッドトレーニングなどを使ったシンプルな高負荷・低ボリュームのプログラムの方が良い結果につながる可能性も高いでしょう。

超回復のおまけトリビア

超回復に関して否定的な意見を散見しますので、サラッと紹介しておこうと思います。

超回復って言葉がインチキ

英語にSupercompensationという言葉があります。日本語で使われる「超回復」とはこれの訳語にあたり、何かの量やレベルがある基準の値より下がったあと、基準よりも高い値まで回復することを言います。
筋力の他にも、身体のエネルギー源となるグリコーゲンの貯蔵量に関して「グリコーゲン超回復」という用語もありますが、語源は同じです。
今回参照したリプトーの本や、Wikipediaの英語ページでも「トレーニング後の筋力の回復・向上」に同じ言葉が使われています。
そういう意味では真っ当な言葉と言えると思いますが、日本語での超回復は「ちょっとあいまいなトレーニング理論」として定着している感がありますので、当サイトでは、できる限り使用を避けています。

48時間〜72時間の休息はずっとうまく行かない

このページでピリオダイゼーションの有効性を説明したように、トレーニング後、48時間〜72時間の休息ですべての人が永遠に強くなれるワケではありません。
言葉としての有効性は上記の通りですが、トレーニング理論としては、もう少し慎重に捉えた方が良いでしょう。

「筋肉を破壊」は大げさ

「トレーニングで筋肉を破壊して、その後休息を取ることで強くなる」という言い回しを見かけることがありますが、それは少し大げさです。
東京大学大学院教授の石井直方氏の著書によると、「基本的には筋繊維の構造がポチポチと乱れる程度です。ブチブチと筋繊維が切れたり鍛えた部分の筋繊維がボロボロになったりするわけではありません」とされています。
筋繊維が切れるというところまで行くと、筋肉断裂などケガという部類に入るでしょう。

 

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コメント

  1. アンディ 八百さん
    コーチングを受けた山口です。

    ここで紹介されている中級者のピリオダイゼーション(テキサスメソッド)は、1種類のメニューを続ける場合ですよね。

    ABスプリットと、このピリオダイゼーションテクニックのテキサスメソッドを組み合わせるにはどうしたらよいのでしょうか?

    A 5×5、B 5×5、A 5×2、B 5×2、A 5×1、B 5×1 のようにすればよいのでしょうか?

    1. 八百 健吾

      山口さん、ご無沙汰しています!お返事がおそくなってすみませんm(_ _)m

      テキサスメソッドは、重量と回数設定のテンプレート的なもので、いろんな組み替え方が考えられますが、各トレーニング日が次のように区別されるのがポイントです。
      1. 高ボリュームで大きなストレスを掛ける
      2. 中ボリュームかつ低強度で回復を促す
      3. 低いボリュームかつ高強度で記録更新を目指す。
      高ボリュームの日のセット数や種目数をさらに増やしたり、低ボリュームの日の回数設定をさらに下げたりという調整をする人もいるようです。結果的に高ボリュームの日のトレーニングがものすごく長くなるようなケースも出てきます。
      このページのA/Bスプリットでは補助種目が入りますが、ボリュームがおよそ均一なので、そのまま当てはめるのは少しやりにくくなると思います。1日ごとのボリュームが大きく変わらない方がやりやすければ、eBookで紹介したリニアピリオダイゼーションなんかが使えるかもしれません。

  2. アンディさん、八百さん 初めまして!

    いつも参考にさせて頂いております。少し疑問に思ったので質問致します。

    中級者のピリオダイゼーションの項目で
    月曜日 高ボリューム、中強度 5回5セットがギリギリこなせる重量設定。

    とありますが、1セット目で5回ギリギリの重量設定だと、2セット目3セット目と回数が落ち
    5セット目は1回上がるか上がらないかになってしまいます。
    5セット目に5回ギリギリ上がる重量設定だと、1セット目は10回は上げれます。

    これは5セット目5回ギリギリに焦点を当てて、初めのセットは5回で止めて余裕を持たせて良いと言う事でしょうか?
    それとも1セット目から5回ギリギリに重量設定して、セット毎の回数の落ち込みは気にしないと言う事でしょうか?

    ちなみにセット間のインターバルは60~90秒で行っております。

    1. 八百 健吾

      初めまして、コメントありがとうございます。

      >5セット目5回ギリギリに焦点を当てて、初めのセットは5回で止めて余裕を持たせて良いと言う事でしょうか?
      こういうコトですね。
      セットごとに重量を変えず、5回5セットできれば、次のトレーニングで重量を上げます。トレーニング効果の違い以上に、筋力の変化をチェックしやすいのがメリットです。
      ウチのサイトでは、8回3セットなんかの設定を勧めることもありますが、その場合も考え方は同じです。
      唯一例外になるのがRPTですね。この場合は、1セットごとに独立して考えるので、重量・回数ともに設定がバラバラになります。

  3. 八百 健吾

    この記事に「幻想」というハンドルネームの方からコメントを頂いていましたが、最近新しいサーバーに切り替えた際に保存されず消えてしまいました。

    「ピリオダイゼーションのプログラムを実際に行った結果などが見れると良い」という内容でした。
    ワリと長いやりとりになりましたが、要点をまとめると、ある程度経験を積んでからの筋力アップには、ピリオダーゼーションはひとつの方法で、万人に効く答えとは限らないということです。
    ボクは、ベンチプレスで中級者向けの内容を試しましたが、食事量が足りていなくて、伸び悩んだ時期がありました。もう少ししっかり食べれば他のトレーニング内容でも伸びた可能性は感じます。
    他には、外国人体験談ページに載せているブラッドという人が、同じ中級者の設定でBIG3を週3回おこなっていました。トレーニング記録の変化も載せています。

  4. ばっきぃびーん (@buckybean)

    似た内容の記事を書きたかったんですが、これ以上の物は書けないので素直に諦めますw パート1も含め、色々網羅されてて素晴らしい!

    わっちも現在週単位のRPTから離れ、デッド、ベンチ、スクワットでアレンジした5/3/1に移行してちょうど2サイクル終えました。デッドのトリプルズで385lbsをプルして数ヶ月停滞して居た所、5/3/1を2サイクル終わってトリプルズで405lbsをプルしました。わっちが使っていたRPTに比べ、ボリュームは少ないのに・・・。(参考までにカロリーは+20/-20) 当分はこの月単位プログラミングで頑張ります。

    1. 八百 健吾

      ばっきーさん、こんちゃ^^

      >パート1も含め、色々網羅されてて素晴らしい!
      どうまとめようか結構時間掛けて悩んだんですよー。そう言ってもらえるとホント嬉しいです。

      >似た内容の記事を書きたかった…
      >デッド、ベンチ、スクワットでアレンジした5/3/1に移行して…

      面倒じゃ無かったら詳細聞きたいです。実践内容を記事にしてくれたりしませんかー?
      ばっきーさんのブログコメントで、「プラトー脱出のちょいデローディング作戦」の話見ました。これも書こうかと思ったんですけど、すでにボリュームが多かったんで削ったんですよねェ。
      というワケで更新楽しみにしてますw

      1. ばっきぃびーん (@buckybean)

        了解です。3サイクル終了した時点でBastard 5/3/1に挑戦した体験を記事にしようと思います。実際にはgzcl氏の懸垂プログラムも導入してるのでそこら辺も含めたいとおもっちょります。

  5. ご質問が有り、コメント残させて頂きました。

    自分は現在、トレーニング中級者程度なのですが
    頻度として、週2回が何とか言った感じです。
    その場合上記のプログラムは、どの様に考えれば良いのでしょうか?
    お手すきの時で結構ですので、返答頂けますと助かります。

    1. 八百 健吾

      わっふるさん、初めまして。名前好きです(笑)

      週2回のトレーニングならこっちの記事が参考になるんじゃないかと思います。負荷の設定を細かく変えるような話はありませんが、頻度を落とす(3回→2回)ことで回復を促すという考え方ですね。

      こんなマニアックな内容までチェックしてもらってありがとうございます。参考になれば^^

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イギリス出身のダイエットコーチ兼パーソナルトレーナーです。日本に住んで9年。日本が大好きになりました。 欧米のダイエット情報と数百人の英語圏のクライアント指導で得た経験を日本に広めるためノウハウを公開しています。
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